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運ばれる男
馬車に揺られ夕陽に照らされた城壁の門をくぐる
手足に縄が縛れることもなく恐る恐るといった感じで僕らを気遣う素振りを見せる彼らの、見張りというよりは護衛といった様子で僕達は少し安心した
剣を携え鎧に身を包む彼らはコスプレというわけでもなさそうで、馬車の後ろからのぞく街の様子もセットと呼ぶにはあまりにも生活感を感じられるリアルさがあった
中世か
異世界か
どちらにせよ帰るという選択肢の自由はなさそうだ
前を見ると建物の陰から城が顔を出した
観光という気分ではないが夕陽に照らされて美しく佇む光景に感動を覚える
ただこの馬車がその城を目指していると気付くと、王様や貴族に無理難題を迫られるというありそうな展開を想像して憂鬱になる
彼女達の顔を覗くと同じ思いなのか、それとも考える気力もないのか無表情に城を眺めている
恐らく僕達はこの世界に一度も笑顔なんて見せていないだろう
馬車が城の入り口に付き丁寧に降ろされると白衣やメイド服の人達に毛布をかけられ背中をさすられる
相変わらず言葉は分からないが、優しさと気遣いに思わず愛想笑いを浮かべる僕は日本人だなと思った




