運の悪い男
視界が開けた
それに向こうに建造物も見える
あれは城壁…か?
気付いたら遭難していた
薄暗い森の中
場所が場所なら御神木と呼ばれそうな程に太い幹の樹木が乱立している
頭上高くに茂る枝葉の隙間から差す陽の光は、太陽の位置が変わればすぐに届かなくなりそうだ
暗くなる前に同じ境遇であろう女性達に出会う
お互い同じように助けを求め、同じような顔で落胆する
どうにかこの森を脱出したいがどの方向を見てもまるで見当が付かない
…のだが、行ってはいけない方向だけは分かった
そちらを指差し
怖い…絶対行きたくない…
そう震えながら言う人がいた
だから逃げるように反対方向を目指した
なぜその言葉を信じたのか
複数人がそう言うのなら信じるしかなかった
状況も相まってもう発狂寸前だったのかもしれない
怖くない方向は正に森の出口だった
なら怖い方向は森の深部だったんだろうか
彼女達の恐怖はそんな勘のようなものだったんだろうか
城壁?を目指し歩くと左右に田畑を望む道に出る
いくつかの小屋を見つけ巡ると人を見つけた
どう見ても日本人ではなかったが案の定言葉が分からない
多少の英語の聞き取りくらいはできるがどう聞いてもそれではない
なんだったらテレビや動画で聞いた覚えのある各国の言語のどのニュアンスも感じ取れなかった
出会ったその人も最初は困惑し明らかにいぶしがっていたが、突然ハッと何かに気付いた素振りを見せると慌てて小屋に戻る
やがて持ってきた水や食料を僕らに押し付けると…これは…ここで待っていろというジェスチャーだろうか?
施しのお礼を言う隙もなく彼は城壁へと走っていく
これからどうなってしまうのだろうか
彼がこれ以上、不幸を連れてこないように祈った




