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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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6ー8

「・・・速いなぁ。流石男の子だ」


 渡会君の背中は私・・・宇佐美茜の元からぐんぐんと遠ざかっていく。


 その身のこなしは、喩えるとするなら、ネコ科の肉食獣のようだ。


 走る速度は一切落とさず、それでいて、前方左右からランダムに現れる歩行者や自転車・・・果ては自動車などをスルリスルリと躱して行く。


 ほら、また1人躱した。

 

 ・・・すると。その躱された他校の女生徒が、颯爽と脇を駆け抜けていった彼の背中に、視線を吸い寄せられているのが見える。


「そうだよね・・・格好良いよね。走ってる男の子って」


 あの子の気持ちはよく分かる。


 だって、まさに今、私も全く同じ事を思っているから。


「渡会君、本当はきっと、モテるんだろうな・・・」


 もし、彼がこの学校ではない、違う高校に進学していて、私や飛田なんかと出会わず、良好な人間関係を築けていたとしたら、きっと今のように特異な目で見られる学校生活を送るようなことは無かっただろう。


 そして私のように、彼の良いところを見つけることが出来た女子の中から、きっとアプローチを掛けようとするものも現れていたに違いない・・・。


(「いや、もしかして、その可能性はまだあるのかも・・・!」)


 現に今、私と同様に彼の背中を見つめる他校の女子・・・。


 遠目だし、そもそも背中しか見えていないが故に、彼女の表情を伺い知ることは当然出来ない・・・。


 だけど、もしかしたらあの女の子も・・・頬に熱をもたせ、瞳を潤ませながら彼のことを見ているのかもしれない!


 そして、あわよくばお近づきになろうと、後日なにがしかの行動を起こしてくるかも・・・!


(「もし・・・そんなことになったら・・・!」)


 そう思うと、私は今からでも彼の背中を追いかけたくなる衝動に駆られた。


 だが・・・心の底から想っている相手の邪魔をする・・・それだけは自重しないといけない!


 自身の中に辛うじて残っていたその冷静な思考が、動こうとしていた脚をその場に縫い付ける。


 そして・・・曲がり角を左折した彼の姿は、ようやく私の視界から消えた。






「恋・・・って辛いのね」






 これから私は一体、どれだけの我慢を強いられることになるのだろう・・・?


 どれだけのものと戦わなければならないのだろう?


 楽しいことばかりでは無い・・・それは母を見ていて十分分かったつもりではいた。


 だが・・・やはり何も分かっていなかったのだと・・・そう気付かされる。


「でも・・・仕様が無いよね!好きになっちゃったんだから!」


 もう私の未来に、彼の存在は必要不可欠・・・そう言い切れるほどには、私は彼にゾッコンなのだ!


 ならば後は突き進むのみである!


「とは言っても、まだ付き合えても無いんだけどね・・・よし!」


 明日はお弁当でも作っていってあげよう!


 そう考えた私は、決して多いとはいえない、自らの料理のレパートリーを脳内に並べて試行錯誤し始める。


 決して腕に自身があるわけでは無い・・・そんな私のお弁当を、彼は喜んでくれるだろうか?


 彼は優しい・・・だからマズいとは言わないだろう。


 だが、だからといって、そんなモノを出すわけにはいかない!


「・・・料理の本でも買って帰りますか!」


 近場の本屋はこの角を右に曲がったところにあったはず・・・。


 付け焼き刃な手料理を出すのは、正直気が引ける。


 しかし、私の腕が上達するのを、他の女子達が待っていてくれるなどと、脳天気に構えてはいられない!


 恋愛は、ひたすら攻めあるのみなのだ!


「よし!」


 私は自らに喝を入れると、進路を自宅から本屋に変更すべく、交差点を右に曲がった。


 




「あ、うさみちゃん・・・みーっけ!」






 何処かで聞き覚えのある声に呼び止められたのはそんなときだった。


「?」


 私は振り向き・・・声の主の姿を捉えた。






「・・・あなたは!!!」






 黄金色に輝く頭髪を視界に収めたその直後・・・私の視界は暗く染まった・・・。






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