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愛沢・・・飛田がそう呼んだ瞬間、俺は全てを悟った。
どうしてかは知らない・・・。
だが、ヤツは俺の正体に気付いたのだ!
俺・・・渡会優が、かつての同級生・・・愛沢優であることを!
互いに因縁のある相手であるということを!!!
となると、先程飛田が言っていた・・・俺が「そういうヤツ」だった時というのは、忘れもしない・・・あの授業参観の日のことだろう・・・。
只、俺の為を思い、急ぎ学校に駆けつけてくれた祖父母。
その2人に「老けてんなぁ」と言いやがった飛田に対し、俺は「くたばっちまえ!」と言い返して、ボコボコにしてやったのだ。
俺の中では、自身と祖父母こそ『被害者』であり、飛田に対して自らが行った行為は、いわば一種の正当防衛となっていた。
故に、記憶に残りにくい『加害者側』であるアチラが、遙か昔にあった諍いを忘れている可能性は十分にあると考えていたのだが、ヤツはキッチリ覚えていたようだ。
「・・・・・・・・・」
「なんだぁ?ダンマリ決め込みやがって・・・もしかして今更、謝罪の言葉でも考えてんのかぁ?」
謝罪・・・そんなもの、したいわけが無い!
かつて、授業参観に駆けつけてくれた祖父母に対し、下らない暴言を吐いてきたのは、どこのどいつだ!?
俺に植え付けられた『金色』に対する極度のトラウマ・・・その切っ掛けを作ったのは、どこのどいつだ!?
お前が、俺や祖父母に対し言った罵詈雑言の数々を・・・俺は片時たりとも忘れたことは無かったぞ!
そんなヤツに頭を下げて許しを請うなんて真似・・・絶対にやりたくは無い!
(「やりたくは無い・・・でも・・・」)
自身のプライドを投げ出すことで、祖父母が傷つけられる可能性を少しでも減らすことが出来るのなら・・・!
(「やるしか・・・ないっ!」)
俺は歯を食いしばりながら、じっと自らの心が静まるのを待つ。
憎い相手に、形の上だけでも謝罪を行うことが、存外難しいということを、俺は始めて知った。
そしてようやく、精神を落ち着かせることに成功し、心が凪いだ状態になる。
(「さあ・・・言うぞ・・・言うんだ!」)
俺は謝意を示す言葉を・・・「ごめんなさい」のひと言を発すべく口を動かそうとした・・・その時!
ギュッ
いつの間にか背後に回っていた宇佐美。
その彼女から、俺は唐突に抱きつかれたのであった!
以前にも経験した、2つの柔らかい感触・・・。
それが、自身の背中にバッチリと当たり、そして形を変える程、密着していた!
その結果・・・
「フギョオ!!!」
気に入らない相手に断腸の思いで謝罪の言葉を紡ごうとしていた俺の口からは、俺自身ですら聞いたことの無い声が出た。
そして当然・・・その声はスマホを通じ、電波になって・・・飛田の耳にもバッチリ届くことになったのであった!
「あ?おい・・・お前ぇ・・・ふざけてんのか!?」
「い、いや・・・ふざけてなんかないです!」
動揺の余り、思わず敬語になってしまう俺。
「ほら、速くしろよ!言うんだろ!俺に謝るんだろ!」
焦れったくなったのか、飛田は謝罪の催促をし始めた。
しかし、そんな今の俺はといえば、抱きついてきた宇佐美の柔らかさと甘い匂い・・・それらの情報を処理するので手一杯になっていた!
祖父母には大変申し訳ないと思いつつも、すっかりピンク色に染まってしまった脳内を整理せずして、俺は真っ当な行動がとれそうに無い!
結果・・・半ば祖父母を人質に取られている状況であり、圧倒的に不利な状況にも係わらず・・・俺はスマホの向こうの飛田に対し・・・
「済まん!急用が出来た!後でかけ直す・・・絶対かけ直すから!」
と、一方的に言い放ち・・・
「え、は?お、おい?一体何言ってやが・・・」
と動揺する飛田の声を無視して、通話を切ったのだった!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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