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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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43/44

6-1

 宇佐美の決別宣言以降・・・飛田は打って変わって静かになった。

 入学当初から、暇さえあれば「うさみちゃーん!」のかけ声と共に教室を移動し、必要以上の大声でもって、取るに足らない出来事やら武勇伝を、のべつ幕なし話していた人間が、めっきり彼女に話しかけなくなったのだ。

 それは勿論悪いことではなく、クラス内の雰囲気が飛躍的に向上したのは勿論のこと、教師側も手のかかる問題児が一人減ったことを喜びこそすれ、悲しむことなどなかった・・・。

 



 だがしかし、そんな全てが上手くいっているかのような状況で、俺だけは、飛田に対する警戒心をより強めていた!




(「アイツは・・・あんなに物わかりの良い奴じゃない!」)


 この数ヶ月間・・・ある意味、この学校の誰よりもヤツと接してきた(物理的に)俺は、どうしても飛田心という男が、負け犬の遠吠えのような捨て台詞だけを吐き、この件を終わりにするとは思えなかったのである。

 

(「学校内で入学早々2度も暴力沙汰を起こしたヤツだぞ!そんな男が急にムッツリ黙り込むようになったからって、これで平和が訪れた・・・って考えられるほど、俺は。頭お花畑になれん!」)


 にも係わらず、他のクラスメイト達はといえば、まるで長い冬を越した後・・・ようやく春が訪れた時のような緩い空気の中に、無造作に身を預けている・・・?

 

(「何でだ?何で皆はそんなに無警戒でいられるんだ?」)


 俺はそれを考え、やがて1つの事実に気付く。




(「あ、そっか・・・結局、この中で飛田に『恨み』を抱かれてるのって俺だけなんだ・・・」)




 そう・・・俺以外のヤツらは、そもそも飛田に恨まれる筋合いなど、これっぱかしも持ち合わせていないのである。

 故に、この平和が仮に一時のものであり、後にまた飛田という問題児が再臨しようとも、彼等は以前と変わらず避難すれば良いだけであり、何かやることが増えるということはない。

 



 しかし・・・俺だけはそうはいかない。

 



 おそらく、飛田がなにがしか行動を起こしたとき、その渦中に俺がいるのは間違いないだろう・・・。

 故に自分だけは、嵐の前の静けさと言わんばかりに泰然自若としている飛田に対し、必要以上の警戒と心の準備をしておかなければならないのだ。


(「まったく・・・因果なもんだな。このクラスの平和をもたらしたのは俺なのに、その俺だけが恩恵を享受できないなんて・・・」)


 だが、その一方で自身だけが得たものも間違いないなくは存在していたのだった。

 






 キーンコーンカーンコーン・・・


 4時限目終了の合図。

 起立、礼、着席の号令。

 そしてクラスメイト達が各々持ってきた弁当や惣菜パンなどを机に広げたり、相席するべく机を移動させたりする・・・それらの雑多な音の中を、タッタッタッ・・・と掛けてくる1つの足音。




 流石に2週間以上も同じ習慣の中にいれば、もはや視線を向けずとも、それが誰の足音かは判別できる。

 そして、答え合わせするかのように振り向いた先にいたのが、やはり俺の想像通りの人間だったことを知って、俺は何だかフワフワした不思議な気持ちになった。




「渡会君!行きましょう!」




 清楚系にイメチェンを果たした宇佐美。

 俺は彼女のその声に、頷きを1つだけ返し、自身の弁当を持って立ち上がる。

 そして、幾つかのクラスメイトの視線を受けながら2人して教室を出て何時もの場所へ向かう。


 


 以前なら、こんなことがあろうものなら、絶対に声を荒らげていた飛田の怒声が飛んでくることは、もう無い。

 しかし、そんな状況がかえって、自身をより不安にさせるのであった・・・。

  

 


 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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