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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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6-2



「飛田に気をつけて欲しい」




 昼休み・・・普段から余り使われることのない屋上で2人して昼食を採っている最中、俺は横で終始微笑んでいた宇佐美に対して、そう忠告していた。


「え・・・?何ですか、急に?」


 藪から棒に何を言い出すのか・・・そう言いたげな彼女の、そんな顔すら最近は可愛いと思えるのは、きっと俺が浮かれているからに違いない。

 未だ、彼女の告白に対するまともな返答すら出来ていない俺・・・。

 にも係わらず、終始彼女を独占できる立場を手に入れた自分は、きっと浮き足立っているのだろう・・・。

 しかし、言うべきことをしっかり伝えておかないことは、後の後悔に繋がりかねない!

 俺は自身の語気を強めることで、これが冗談では無く、真剣なものであることを強調した。

「これは俺の勘だけど、飛田はまだ宇佐美のことを諦めてない」


「・・・もしかして、妬いてくれてます?」


「そっ・・・そういうことじゃない!」


「そうですか。私としては何時でもお返事待っておりますので」


 返事とは即ち、告白のことであろう。

 本来なら告白した側がその返答を、緊張しつつ首を長くして待つものなのだろうが、宇佐美のイメチェンから2週間近くが経過した今となっては、その立場も逆転してしまったかのようである。

 宇佐美はきっと、俺の心境の変化に手応えを感じているのだろう。

 故に最近の彼女には余裕すら感じられる。

 翻って俺はといえば・・・この程度のおちょくりにもタジタジの有様だ。

 外堀は順調に埋められており、俺という城が落ちるのも時間の問題だった。


「・・・俺は真剣な話をしてるんだよ。飛田はまだお前を狙ってる。しかも俺の予想が正しければ、もう・・・アイツは手段を選ばない」


「手段を選ばない・・・それはもしかして、また暴力沙汰が起きる・・・ということでしょうか?」


 自身で発言した暴力という単語に恐怖を感じたのであろうか。

 宇佐美は肩を震わせ、また、その表情に緊張感を漂わせて俺に問う。


「宇佐美・・・」


 彼女の『強さ』に対する執着・・・きっとそれは『恐怖』から来るものではないだろうか?

 宇佐美と共に過ごすようになった俺は、次第にそう思うようになっていた。

 それは即ち・・・俺と同じだ。

 俺は精神的な弱さを隠すため、肉体を鍛えるという選択をしたが、もしかしたら女性である宇佐美は肉体的に強い男性を側に置くことで、自身を守ろうとしているのでは無いだろうか?


(「なら・・・今の自分が・・・彼女に対してしてやれることは・・・?」)


 そう考えた俺の口は、咄嗟に彼女を励まそうと言葉を紡いでいた。




「宇佐美・・・お前のことは・・・その・・・俺が出来る限り守るから・・・だから、その・・・心配するなっ!」




 本来なら、学校の屋上でこのようなセリフを気になっている女の子に対し告げるのであれば、所々に間を置かず、サラッと言えるべきだ・・・。

 それに、「出来る限り」という保険掛けもするべきでは無い。

 ここは「絶対に」と言い切ってやるのが、良い男なのではなかろうか?

 

(「所詮・・・俺はこの程度の人間だ・・・」)


 意中の相手に励ましの言葉を贈る・・・そんなことすらまともに出来ない自身に対し、不甲斐なさを感じながら、俺は宇佐美の顔を見た。




「・・・グスッ」




 なんと・・・彼女の目にはハッキリと涙が!

 宇佐美は泣いていたのだった!


「えっ・・・えっ!?何で・・・どうして泣いてるんだ?」


 俺は彼女に問う。

 もし、俺の言動が宇佐美を泣かせてしまったのであれば、拳を振り下ろして以来2度目になるが、当然、前回の件があったからといって、女性を・・・ましてや意中の相手を泣かすことに抵抗が無い訳がない。

「どうにかしなければ!」と心は焦るが、女性の涙を止める気の利いたひと言なぞ、俺の頭の何処を探しても見つからなかった。


(「そりゃそうだ!インプットした覚えがないんだから!」)


 オロオロとする情けない俺に、やがて宇佐美から声が飛ぶ。


「スンッ・・・渡会君・・・こういうときは黙って抱きしめてくれれば良いんです」


「そっ・・・そんなこと・・・」


 「出来るか!」・・・と、そう言いたかっただが、その一方で「そうすれば良かったのか!」と思う自分がいて、結局それ以上言葉が出ない、


「渡会君・・・私が泣いたのは、渡会君の言葉が嬉しかったからです」


「そ・・・そうなのか?」


「はい、だって守って下さるんですよね・・・『出来る限り』」


「あ・・・ああ。『出来る限り』」


「・・・きっと、飛田さんなら、ここは『絶対に』と言ってるでしょうね」


「だろうな」

 

 このシチュエーションに飛田を置いたとき、彼が『出来る限り』などと、自信の無い台詞を言うところは、全く想像が付かない。

 ヤツなら、たとえどれだけ根拠が無かろうが、『絶対に』と言うであろう・・・絶対に!


「ですが・・・私は、今の渡会君の言葉が胸に響きました」


「そ、そうか?でも、ここはやっぱりズバッと言い切って欲しかったんじゃないか?その・・・女の子的には・・・?」


「言いたいことは分かりますし、同意できないこともありません。ですが・・・私は今の渡会君の言葉が嬉しかったんです。だって・・・『出来る限り』と付けたのは、自身の発言に責任を持っているからでしょ?」


「そ、そうだな」


 そこに関しては嘘を吐いているつもりは全くなかった。

 もし、宇佐美の身に何か起ころうものなら、今の俺は、全力で彼女の助けになろうとするだろう。

 ただ、俺に出来ることには限りがある。

 故に、『絶対に助けに入る』ことは出来るかもしれないが、『絶対に助ける』ことは約束出来なかった。


「そんな誠実な人に・・・渡会君に、そう言って貰えて嬉しかったんです」


「・・・そうか」

 

「渡会君」


「ん?」




「その言葉・・・私・・・忘れませんから!」




「・・・やっぱり忘れて貰って良いか?」


 何というか・・・こうハッキリ忘れないとまで言われると、それはそれで重く感じる情けない俺。

 そんな自分の心情を読み取ったのか・・・宇佐美はクスリと微笑みながら、


「嫌です!『出来る限り』!助けて下さいね!」


 そう言ったのだった・・・。

 





 そして・・・その次の週、事件は起きた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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