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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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40/43

5-5

 噂は人の足より速い。

 そんな毒にも薬にもならない事実を、俺は今日知ることになった。




「おい・・・来たぞ!」


「ホントだ!手を繋いで・・・というか腕組んでるよ!」


「一体何でそんなことに・・・?」


「あれだ・・・絶対何か弱みでも握られてるんだ!アイツ・・・そこまでやるのか!?」




 引き戸を引いて、教室に足を踏み入れる。

 すると不思議なことに、俺と宇佐美の関係の変化はとっくに周知の事実と化していたのであった。

 ただ、クラスメイト達の反応を見るに、話を又聞きしたとしても、その噂を鵜呑みにしていた人間は殆どいなかったようだ。


(「そりゃそうだよな・・・。以前までの俺の態度を見てれば・・・」)


 話しかけられれば無視を決め込み、顔をのぞき込めば拳を振り下ろす。

 それが先日まで、俺が宇佐美に対して行っていた仕打ちなのだ。

 そして、俺が今まで彼女に対してしでかしてきた行動の数々は、全て彼等が直接目の当たりにしている、紛う事なき真実に他ならない。

 



 なのに・・・それなのに・・・。

 そんな俺が、いつの間にか、そのクラスのアイドルと腕を組んで登校するまでの関係になっているだなんて話を、又聞きした程度で信じるヤツがどこにいようか?

 



「あっ、みんな、おはよう!」


 依然として腕は解かず、それ故にクラスメイトの視線が厳しいモノになっていることくらい百も承知の筈の宇佐美は、そんなことには一切動じず、いつも通り振る舞っている。

 そんな彼女を見て・・・


(「本当に『強い』のはコイツなんだよな・・・」)


 と、俺はつくづく思わされたのだった。

 

「さて、鞄を置いてっと・・・」


 そう言った宇佐美は、ようやく俺の腕を解放し、自身の鞄を席に置く。


(「あっ・・・」)


 自由になった・・・筈の腕。

 それを寂しい・・・と思ってしまった時点で、きっと宇佐美の術中にどっぷり嵌まってしまっているのだろうか・・・。

 



 しかしご安心を。




 ギュッ!




(「!!!」)




 今度は鞄を持つという作業から解き放たれたもう1本も合わせた腕2本・・・故に密着度200%増の腕組み・・・いや、ハグが飛んできた!




「・・・・・・・・・」


 宇佐美の物量作戦は確実に功を奏しており、俺の脳内は、そこかしこで感じられる柔らかい感触と、ほのかに香る匂いに機能停止寸前である。




「うっ・・・嘘だあ!!!」


「うっ・・・うっ・・・宇佐美ちゃあん!?!?!?」


「キャアッ!」




 そんな俺の代わりに一斉に反応したのはクラスメイト達である。

 男子生徒の嘆きと女子生徒の嬌声が教室内を木霊した。


「う・・・宇佐美。一旦離れようか・・・なっ?」


 何かもう・・・色々限界に来ていた俺は、とりあえず一時休戦を願い出る。

 しかし・・・優勢な立場にある彼女が、それを何の譲歩も無く受け入れてくれるわけも無く・・・


「なら・・・今日から昼食は一緒に食べましょう。それを承諾してくれるのであれば、解いてあげます」


 案の定・・・宇佐美は一時の安寧の対価として、今後の俺の昼食時間全てを手中に収めようとしてきたのだった!


「いや・・・いくら何でも、こちらの支払うものが大きすぎやしないか?」


 流石にふっかけすぎだと、俺は交渉を試みる。

 俺にとって昼食時及びそこから続く昼休みは、1人でゆったりと読書でもしつつ、羽を伸ばす・・・いわば、無くてはならない時間なのだ。

 それを金輪際奪われる・・・という条件はいくら何でも看過することは出来ない。

 しかし・・・依然圧倒的有利な立場をとる宇佐美が、俺の提案に唯々諾々と従う理由は無い。

「なら・・・渡会君は対価として、私に何を頂けるのでしょう?」


 宇佐美は心持ち更に密着度を強めつつ、俺に問う。

 柔らかい感触がよりハッキリとし、冷静な思考が上手く働かない・・・。


「そ・・・それは・・・」


「それは?」


 ムギュリ。

 また形を変える。


「そっ・・・それはぁ・・・」


 だ、誰でも良い・・・。

 誰か・・・助けてくれぇ!!!




「おいっ!テメェ!?何してやがる!?」




 そんな俺のSOSに応答してくれた・・・訳では無いだろう。

 ようやく現れた飛田の存在に、俺は不覚にも感謝してしまったのであった・・・。




 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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