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ここで改めて述べておくと、俺達の学び舎・・・県立安田高校は極々一般的な進学校である。
早い段階から大学受験に備え、日々勉学に勤しむ者が多い・・・という特徴があるにはあるが、それ以外は何の代わり映えもしない普通校であり、決してそれ以外に何か非凡なところが存在するわけではない。
よって、『校則』と呼ばれるものも当然存在しており、入学時に1人1冊配られた生徒手帳・・・そこにはハッキリ「髪の脱色、及び染色を禁ずる」と記されている。
にも係わらず、俺の所属する1年1組に我関せずとばかりに、日本人離れした髪色を持つ人間が在籍しているのは、簡単な話・・・彼等が特別扱いされているからだ。
『例外その1』の飛田は、パパの権力を笠に着ることでお目こぼしを貰っているのは言わずもがな。
『例外その2』の宇佐美は、風の噂で聞くところによると、どうやら入学前に事前に大人の話し合いが持たれたらしい・・・。
入学当初・・・俺がそれを知ったとき、真っ先に思ったのは「こんなこと一部の人間にだけ許してたら、学校の風紀が乱れるんじゃないか?」ということだった。
いくらこの学校に集うのが中学時代まで品行方正を貫いてきた者達だからといって、彼等も(勿論自分も)思春期真っ盛りの子供に他ならない。
ならば、学業に力を入れつつも、人並みにおしゃれしたいと思うのは至極当然であり、それでも殆どの生徒の髪色がキチンと黒に統一されているのは、ひとえに皆の我慢によるものなのだ。
にも係わらず、一部の人間だけが例外を許されては、「アイツらがいいなら俺もやってもいいよな!」と思う人間がいてもおかしくなかろう・・・。
だが、そんな俺の不安は杞憂だったようだ・・・。
宇佐美の告白を断った翌日・・・いつも通りに通学路を歩いている俺。
その目の前を友達同士だろう・・・肩を並べて歩く生徒の集団、そのいずれを見ても黒以外の髪色は存在しない。
どうやらこの2月足らずの間で、生徒達の間では『あの2人は特別』という共通認識が生まれたようだ。
「『特別』・・・か。まあ、無理も無いな」
かたや入学早々同級生と2度ほど暴力沙汰を起こしておきながら、悪びれも無く堂々と通学を許されている飛田。
そして、もう一方はといえば、メディアに引っ張りだこの宇佐美。
例外を許されているこの者達の『異常性』と自らの『普通さ』を比較して「ああ・・・私はこちら側だな・・・」と多くの者が諦めてしまったのだろうな・・・と俺は思う。
(「だけど、生徒はともかく、教師側にはよく思ってないヤツも依然としているんだよな」)
そう考え、ぱっと思いつくのが毎朝校門に張り付き、まるで門番が如く生徒を見張る2人の男性教師陣・・・阿方と宇崎だった。
彼等が宇佐美や飛田を目の敵にしているのは、毎朝この時間帯に登校している生徒なら誰だって分かる。
(「あの教師2人が宇佐美と飛田を目前にしたときの、あの苦虫をかみつぶしたような顔を見れば一目瞭然だ」)
門番としての職責を果たすなら、真っ先に止めなければならない飛田と宇佐美・・・。
その2人の通行を、『上からのお達し』という、これまた歯がゆい理由で我慢しなければならない・・・。
それが教師達にはよっぽど不快でならないのだろう・・・露骨に顔に出るほどに。
だが、彼等は別に悪い教師というわけでは無い。
それは当然といえば当然で、毎日校門を潜る生徒達にきちんと挨拶し、身だしなみを指摘する・・・その甲斐あって、学校の風紀は保たれている。
社会的には間違いなく善人にカウントされる人達であった。
「おはようございます」
「おう・・・おはよう!」
俺の挨拶に対し、ハリの効いた声で返答してくる阿方先生。
こういう体育会系丸出しの挨拶は、好き嫌いがあるかも知れないが、俺には割と心地よい。 勝さんをはじめ、共に汗を流すジムの先輩方をどこか想起させるその声が俺に「さあ、今日も何とか頑張ろう!」と思わせてくれるのだ。
(「よし・・・スイッチ入った!」)
校門を跨ぎ敷地内へ・・・。
俺はいつも通り玄関へ向かい歩を進めていた・・・その時
「「な・・・なにぃいいいいいいいいいい!?」」
門番2人のただ事では無い声が響き渡る!
「うん?」
きっとそこにいた生徒の大半がそちらを振り返ったであろう。
その中には勿論俺もいた。
そして・・・教師二人が叫んだ元凶・・・余りに可愛すぎる犯人はというと・・・
「おはようございます・・・渡会君」
昨日の今日で、髪を真っ黒にして現れたのであった!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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