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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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37/42

5-2

「えっ・・・『金色』が駄目?」


「・・・ああ」


 宇佐美は自らの髪にそっと触れる。

 

「それって・・・私に金髪が似合わない・・・とかじゃなくて、『金色』なものが全部駄目ってこと?」


「そうだ」


「・・・なにか理由があるんだよね」


「・・・・・・・・・」


 言おうかどうか迷う俺。

 そんな自分のことを宇佐美は黙って待っていてくれる・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 1分過ぎ・・・2分過ぎ・・・3分過ぎ・・・。

 そうして時計の秒針だけが規則正しく動き続ける中で、どれだけも時間が過ぎようとも、決して催促してこない、背中越しの彼女。

 そんな宇佐美の健気な姿勢に・・・結局、自分は折れた。




「俺が幼い頃・・・」


「うん」


「両親が離婚したんだ・・・」




 ・・・そこから俺は所々でつかえつつも、自らに巣くう『金色』に対する憎しみについて話した。

 家事など一切行わずいつも遊び歩いていた母が、俺と父に突然突きつけた離縁・・・。

 それによって父が壊れ、家族を失ってしまったこと・・・。

 そこから祖父母に育てられるも、些細な切っ掛けで『金色』に対して、強い嫌悪感を抱くようになったこと・・・。

 飛田の名前を出すことは控えたが、それ以外は包み隠さず全てを話し、宇佐美はその間、適当な椅子に腰掛けることもせず、ただ黙って俺の話に耳を傾けていた。




「・・・そっか。それじゃあ私が振られるわけだ」




 俺が言いたいことを全て述べたであろうことを、2人の間に流れる空気の変化から感じ取った宇佐美の口から直後に出たのは・・・理解を示すものだった。


「・・・納得できたのか?こんなので?」


 きっと世間には、こんな理由で交際が断られれば、憤りを露わにする人間は多々いるだろう・・・。 

 なにせ、俺が宇佐美を振った理由は、とどのつまり「俺の嫌いなヤツと容姿が似てるから」に他ならない。

 差別や蔑視が過度に問題視される世の中で、ある意味、1番疎まれるべき理由を語った俺に、てっきり、もっと軽蔑するような態度をとってくるかもと思っていたのだが・・・。

 だが、今の宇佐美の声色には、そのような負の感情が籠もってはいなかった。


「うん!スッキリした!だってそれは本当のことなんでしょ!さっきのと違って!」


「あ・・・ああ」


「なら仕方ないよ。誰にだって苦手なものはあるんだし。それが渡会君は特定の色だったってだけの話でしょ」


「まあ・・・そうだな」


 そうやって自身の悩みを簡略化されると、まるで俺がとてつもなく矮小な人間に思えて・・・それが不思議と嫌じゃない。


「それに・・・髪色なら直ぐに変えれるし」


 と、あっけらかんと言ってのける彼女に対し・・・


「いや実際そんな簡単なことじゃないだろ・・・さっきはああ言ってたけど、絶対事務所とかが許さないぞ」


 と俺は正論を突きつける。




 しかし、この時の俺は、彼女の覚悟の程を見誤っていたのだ。

 俺はそのことを、翌日の学校で気付かされることになるのである。

 



「なら・・・私が金髪じゃなくなったら、その時はちゃんと私のこと見てよ」



 

 この時の俺は、彼女のその発言が実行に移されるまで、どれだけの時が必要だろうかと考え、きっとその頃には、自身に対する彼女の過大評価も適切な位置まで引き戻されているだろうと思った・・・。


「分かったよ」


 と俺が軽い気持ちで返事をすると・・・


「よし!言質はとったからね!それじゃ、また明日!」


 と、今まさに振られた人間のものとは思えない軽やかな足取りで、宇佐美は俺の背後から姿を消した。

 残されたのは、自身と静まりかえった教室・・・そしてほんの少しの寂しい気持ち。

 後ろを振り返る・・・そこに彼女はいなかった。

 

「まるで幻と話してたみたいだ」


 だとしたら、それはさぞかし痛いヤツだなと思いつつ、でもソッチの方が今後の学校生活も気楽に過ごせるかとも思った。

 引き出しの中に入っていた手紙も・・・彼女からの告白も・・・俺の自分語りも・・・何もかも・・・。 

 そんな今日起きた出来事が全て夢で、何かの拍子に我が家の自室で目を覚ます・・・そんなオチが待っていたとしたら、そこからはきっと、何も代わり映えしない日常が続いていくはずだ・・・。



「でも、多分、本当はそれが嫌だったんだな、俺は」




 そう・・・結局はそういうことなのだ。

 手紙が入っていたからといって、無視をすることも出来た。

 告白され、その過程で宇佐美の熱意を浴びたからといって、自身の過去を暴露する必要も無かった。

 ・・・だが、俺はその選択肢を全て絶ち、自ら平穏な日常を捨てた。

 



 それは、俺が宇佐美に期待しているということに他ならず・・・

 そして、彼女が俺のそんな期待を裏切ることは無かったのだった!




 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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