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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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4-2

 件の一件以後・・・宇佐美が俺に話しかけてくることは無くなった。

 仕事故に登校できない日がしばしばあるものの、それは入学当初から半ば習慣化されていたものであり、あの日を堺に登校する日数が極端に減少したという訳でもない。

 ・・・にも係わらず彼女からのアプローチがパッタリと途絶えた背景には、一体何があるのだろう?

 

(「少なくとも表面上は、宇佐美は何も悪いことしていないんだよな・・・」)


 飛田に対し一声かけることで興奮させ、俺を殴らせた・・・というのは俺の勝手な憶測だ。

 あの時、実際に彼女が行った行為といえば・・・急に始まった喧嘩に挙動不審になり、その一方に声をかけた・・・ただそれだけだ。

 仮にその一言が、自身の憶測通り、飛田に奮起させるが為だったとしても、彼が宇佐美の希望通り動くかどうかは運次第であり、そうならなかった可能性も十分にある。


(「だから、彼女が何か引け目を感じる要素なんて何処にも無いんだよなぁ・・・」)


 しかし、そう理性的に考えるほど、その後の彼女の俺に対する接触が一切途絶えたという事実を、自身は一体どう解釈すべきなのか迷う。

 自らの体質故に、顔色を窺うという選択肢を採ることが出来ず、その為何が彼女の行動を変容させるに至ったのかを知る術が無い。

 最近の俺は、その状態を何だか凄く気持ち悪いと感じるのだ。


(「いや・・・彼女からのアクションが無いならそれでいいじゃないか?俺は元々この状態を望んでいたんだから!」)


 と何故か割り切れない自身の心に戸惑う俺は、折角手に入れた平和な日々を、何処かアンニュイとした気持ちで過ごすことになる。




 そして、その鬱屈とした日々は、翌週の休日、とある望まぬ者との邂逅を果たすまで続くことになるのであった・・・。







「・・・最近、ここに来ること多くなったよな」


 とぼやきながら歩くここは、この地区ではもっぱら繁華街として知られる場所だ。

 友人とで歩くことなど皆無であり、趣味も読書・・・完全なインドア派である俺が、わざわざこの場所に訪れるのには当然理由があった。


「今年早くも3足目か・・・」


 日課のランニングに使っているシューズを履き古し、底に穴が開く予兆が見られれば、決して散財癖の無い俺も、財布のひもを緩めざるを得ない。

 自身に対して激甘の祖父母は、毎月お小遣いをくれるばかりか、何か入り用があればその都度お金をカンパしてくれるため、自身の経済状況が逼迫しているわけでは無い。

 しかし所詮は脛をかじっている身・・・お金の使い方には細心の注意を払って日々生活するのは当然であった。

 そして何より、俺には絶対にお金にだらしない人間にはなりたくない理由がある。 




(「・・・俺は決してあんな女のようにはならない」)


 


 久々に家に帰宅する度、見たことの無い鞄や服飾を身につけ、眩しさを感じるほどに染め上げられた金髪を見せつけてきた母親・・・。


「(あんな人間のクズになるくらいなら死んだ方がマシだ!」)


 という気持ちは、紛う事なき本心だった。

 閑話休題、ともあれ必要な物に関してはその限りにあらず・・・修繕不可能である場合は購入するしかない。

 というわけで、俺はこうして都会ぶった町並みの一角にドカンとそびえ立つスポーツ用品店に足を運んだのであった。

 

「よく靴をネットで買うって話を聞くけど、俺には絶対に出来ないな・・・」


 足にきちんとフィットする靴が買えるかどうかは、その後の練習効率や怪我の発生確率に大きく影響する。

 サイズの合わないものを安いからという理由で購入した結果、練習に差し障ったり身体を痛めてしまえば本末転倒である。

 その為、人との接触を好まない俺も、靴を求める際はこうして遠出しているのであった。


「とりあえず足のサイズを測ってもらうか・・・」


 俺は慣れた足取りでシューズ売り場に向かうと、近くにいた店員を呼び止め足の採寸を頼んだのであった・・・。






「まさか1センチも大きくなってるとは・・・」


 成長期という概念は知っているし、身長に関しては伸びている実感があったのだが、まさかたった数ヶ月ほどで靴のサイズを2つ上げなければならなくなったのには、流石に驚いた。

(「もしかしたら、靴の底の減りが速いのも、ソレが関係してるのかもな・・・」)


 今後はもっと頻繁に靴の点検をすることを心に留め店を後にした俺。

 その手の中には真剣に選んだ末に購入した新しい靴があった。


(「♪」)


 喜怒哀楽を表面に表すことが比較的少ない俺だが、人並みに嬉しいと感じるときは当然ある。

 今がまさにその時であり、新品の靴を手にして少々浮かれ気分に浸ってしまうのも仕方がない。


(「早く、履いて走ってみたいな!」)


 ・・・と、靴を買うことができ、興奮を隠せぬ足取りはいつもよりも心持ち速くなっていた。



 そんな絶好調な自身の気分に影を落とす出来事は、何気なく曲がり角を曲がって繁華街の中心部にさしかかったところで起きた。




(「!!!」)




 それに気付いた瞬間・・・俺の脳は精神を守るために、咄嗟に目線を下に向かせていた。

 理由はもはや言うまでも無いだろう・・・『金色』を見つけてしまったのだ。


(「だから嫌なんだよな・・・ここを通るのは・・・」)


 人通りが増えれば、当然そんなヤツらにエンカウントする確立が上がるのは当然。

 しかも今日が国民の休日ともあれば、羽目を外す輩が派手な格好で出歩くことも増えるのは道理。

 校内をチャラチャラした容姿で出歩くヤツらには、何個か物申したいことも無いわけでは無い・・・しかし流石に往来を行き来する一般人に文句を言える筋合いは皆無である。

 俺は仕方なし、目を地面の横断歩道のシマシマや、ポイ捨てされた煙草・・・すれ違う人達の足先に留めながら歩を進める。

 ・・・その姿は何処か挙動不審と見えなくも無いが、幸か不幸か、昨今は道行く人達がみんなスマホを片手に下を向いている時代である。


(「それだけ、自身の行動も目に付きにくくなるってもんだ」)


 と、俺だけしか教授することの無い恩恵を一身に受けつつ、更に足を速めた。


(「よし!もう少し!」)


 津波のように押し寄せる大勢の人達を、鍛えたフットワークを用いて華麗に躱しながら移動し続けた俺は、人通りの少ない路地まであと一息の所まで辿り着く。

 ゴールは目前・・・死角は無い!

 

(「・・・勝った」)


 ・・・別に何と戦っていたわけでも無い。

 にも係わらず、心中で鳴り響くファンファーレ。




 ・・・それは、またしても油断の表れであった。




「えーっ!もう帰っちゃうの?宇佐見ちゃん!?」




(「・・・不覚」)


 よりによって休日に校外でまで、耳にすることになろうとは・・・!

 俺は視線をほんの少しだけ持ち上げ、右斜め前方を確認する。

 足は8本・・・ズボンを佩いた3足の足とスカートから覗く一組の美脚・・・。


(「・・・今度厄払いにでも行ってこようかな」)


 


 顔を確認せずとも分かってしまう。

 それは間違いなく、飛田と仲間達・・・そして宇佐美茜その人であった!




 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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