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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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4-1

「お前が2発も貰うとは・・・どんな高校なんだ、そこは?」


 そう言った『河西ボクシングジム』の勝さんは、きっと俺の進学先を「どこの『虎の穴』だ?」とでも思っているのだろう。

 

「どんな高校って・・・至って普通の進学校ですよ」


 嘘を吐く必要など露ほどもないので、俺は正直に答える。

 しかし、それを信じてもらえていないことは、細められた眼を見れば一目瞭然だった。

 

「俺が世情に疎いのは自覚してるが、それでも昨今の学生は昔と違って品行方正って話しじゃないのか?俺らの若い頃はそりゃいくらかあったもんだが、このご時世に殴り合いなんてしたら、周りの大人が黙ってないだろ」


「そりゃつまり・・・勝さんが思ってるほど、人間の質が向上したって訳じゃないってことですよ」


 誰もがスマホを持ち歩き、他者と繋がれるこのご時世において、身近な人間との繋がりによってもたらされるものは、メリットよりもむしろデメリットやリスクの方が大きい。

 若気の至りともいえるちょっとしたトラブルが今頃になって発芽した結果、身分を負われる政治家や著名人の何と多いことか・・・。

 そんな情報を常日頃から浴び続けている現代の若者が、表向き礼儀正しく振る舞うことを忘れないのは、自身がその轍を踏まないようにするためである。

 ・・・決して、質が高まったが故ではない。


「そうか・・・」


 勝さんはそう呟くと、改めて俺の顔・・・正確には殴られ腫れた頬を見る。


「教師は味方になってはくれないのか?経緯はどうあれ生徒同士の殴り合いが発生して、何もしないじゃ済まないだろ?」


「望み薄ですね。とある教員曰く、相手が代議士じゃ勝てないらしいっす」


「・・・なんだそりゃ!?今じゃそんなこと言うヤツが教師してるのか!?」

 

「正直に言ってくれる分だけマシですよ」

 

 実際、警察沙汰になってもおかしくない状況だったにも係わらず公権力が動く兆しは無く、それ関連の噂が学外に広まった様子も皆無・・・。

「SNSであっという間に拡散するのでは?」とも思っていたが、終ぞ、その兆候が現れることは無かった。

 

(「大原はともかく、それ以外の教師陣は全員長いものに巻かれるスタンスなんだろうな・・・」)


 人との繋がりが希薄になる一方で、一部の権力者に皆がおもねる姿勢は継続し続ける世の中が、本当に正しい方向に向かっているなんて言えるのか・・・なんてスケールの大きなコトを、つい考えてしまった。


「・・・優」


 そんな俺の前で、何か必要以上に考え込んでいた勝さんが呼びかける。


「・・・なんですか?」


 と返す自分を真っ直ぐ見つめながら、勝さんは言う。





「俺は、お前に助けてと言われたら、何があっても絶対に手を貸してやる。だから遠慮無く相談してくれていいんだぞ、分かったか?」





「・・・・・・・・・」


 急に真面目なことを言い出す勝さんは、何かある度によく似たような言葉をかけてくれる。 俺は勝さんのそんな文言を聞く度に、何故か在りし日の父のコトを思い浮かべる。

 

(「きっと俺は無意識に勝さんを父さんを重ねているんだ・・・)」


 恥ずかしくって、くすぐったい・・・でも悪い気はしない。

 そしてもう二度と得ることが無いであろう親からの愛情。

 おそらく、俺の本心はそういったものを渇望しているのだろう。

 そして勝さんの言葉や行動をその代替にしているのだ。


「・・・ありがとうございます」


 ・・・当然、そんなこと言えるわけもない。

 だが、もうしばらくはそれに縋らせてもらおうと思った。



 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 

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