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・・・それ以降も、宇佐美からの接触は続く。
俺が図書室という名の最後の楽園に、自らの居場所を求めようと席を立とうとすれば、まるでそれを見計らったかのように宇佐美が俺に声をかけてくる。
書籍を貸してやった日から3日ほどは、自らの保身や一度泣かせてしまったことによる負い目もあって取りあえず最低限の会話はしていたのだが・・・
「趣味って何?」
だとか・・・
「何か運動してるよね?」
という、それこそ互いに仲良くなりたいという気持ちがあるからこそ意味を持つ質問の一方的な応酬に段々と疲れてきた俺は・・・
(「貸してやった本・・・ちゃんと返してくれるんだろうな?」)
と、半ば諦めている本の返却を心の中でだけきっちり催促し、以降、宇佐美からのアクションを一方的に無視することにした。
結果、クラスメイトからの視線はより冷ややかなものとなったが、俺にとって『金髪の女とのコミュニケーション』はまさに死活問題であり、何よりも優先せざるを得ないもの。
従って、たかが同級生の自らに対する評価を理由に切り捨てる訳にはいかないのである。
宇佐美の「ねえ・・・」に対し、無言で席を立ちエスケープを決め込む俺。
クラスの人気者が袖にされる様子には、大半の人間が憤りを覚えたであろう・・・。
しかし、それでもここに集うは、中学生の頃まで優等生として扱われてきた者ばかり・・・。 精々、不満の対象である俺に対してやってくることといえば、不快感を隠そうともしない視線を送ってくるのが関の山・・・。
教養のある両親の元で育ち、蝶よ花よと育てられてきた彼等の中に、それ以上のことをしようとする者が現れるわけもない。
宇佐美の声をスルーすることに対する心の痛痒を感じないわけではないが、俺はそれからしばらくの時を割と平穏に過ごすことが出来た。
しかし、その平穏の影で、貯め込んだ怒りを今にも吐きださんとしている男が1人いることを俺は失念していた・・・。
このクラスにおいて、唯一『優等生』という枠に収まりそうにない男・・・。
宇佐美に一目惚れし、苛烈なアタックを行っているにも係わらず、のらりくらりと躱され続け、挙げ句の果てに、自身に刃向かった男に『自身の女』を盗られたと勘違いしている男・・・。
そう・・・過去、そして現在共に因縁のある男、飛田である。
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