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『金色』嫌いな俺の青春  作者: えみお


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16/42

2-4

 飛田心・・・その名は二度と聞きたくなかった。

 自らの心に傷を負わせ、以降一度も会話することなく、そして、クラスが変わってからはその面すらまともに直視しなかった相手。

 そんなヤツとよりによってこんな形で再会することになるなんて・・・。

 

(「過去に戻ってやり直したい・・・」)


 家庭が崩壊したときも、幼少時のアイツに心ない言葉を投げかけられたときも、ジムの先輩梅津さんの優勝トロフィを無残な姿に変えたときも、一度として思ったことのない感情が自身の心に芽生えた。

 

「えーっと・・・趣味は音楽鑑賞、特技はモテること・・・かな!?」


 その調子の良さは、小学生の時と何ら変わりない・・・。

 笑いを誘ったのかもしれない今の発言も、いかんせん優等生が多いこの学校では滑り気味だが、発言した当人がそれを気に止めることはなかった。

 

「これから1年ヨロシクーッ・・・と最後に・・・」


 飛田はそう言うと、クルリと後ろを振り返る。

 その視線はというと、真っ直ぐに廊下側最後方・・・即ち宇佐美の方を向いている。


 ビシッ!


 っという擬音が聞こえそうなほど仰々しい腕振りと共に、その指先が宇佐美の方に向く。 そして・・・




「あの女・・・俺のなんで、手ぇ出したら殺すよ・・・以上!」



 

 小学校や中学校で同級生だったとかでない限り、ほぼ初対面であり、曲がりなりにもつい先程・・・「これから1年ヨロシクー!」と言ったクラスメイトに対し、唐突に脅しをかけてきたのであった・・・。


「「「・・・・・・・・・」」」


 俺は勿論、その他・・・誰1人として声を発しない。

 当たり前だが、俺には超能力が備わっているわけじゃないし、コミュニケーション能力が他者に比べ秀でている訳でもない。

 机を並べるクラスメイトと初対面なのは俺だって同じであり、なんなら、今この空間に俺の声を聞いたことのあるヤツは1人もいない。

 だが、何故だろう・・・今、俺たちは心を1つにしているのでは?という妙な確信があった。


(「「「アイツはやばい・・・」」」)


 悪い意味でクラスの顔になるであろうその男に対する共通認識が定まった瞬間であった・・・。

 その後、飛田着席後、何となく1拍置かれた後に、ふくよかで優しげな雰囲気を纏う鍋島君が自己紹介を始め、それ以降は淡々と進行していく。

 俺の前に座る雰囲気暗めな男子生徒・・・三河君が着席したのを見計らって、俺は席を立った。




「初めまして・・・渡会わたらい優です。宜しくお願いします」




 名字が変わったことによる思わぬ恩恵に感謝しつつ、余りにも淡泊な自己紹介を終えた俺の高校生活はこうして幕を開けたのだった。

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