第二話-王都エストゥール-
王都……いい〜響きダァ〜……何かが起こりそうだなァ!!
◼︎王都エストゥール
僕たちは門をくぐり、王都エストゥールの中に入った。目の前には活気のあり、栄えた城下町が広がっている。そして目の前の噴水の奥、大通りの先には、天まで届く程の豪華な王城が人々を出迎えていた。
「ここが…王都……」
やっぱり、あまり覚えていない。あの頃は悲しみに囚われたままで、師匠が来るまでの記憶が殆どない。だが、これから覚えていけばいいだろう。
ふと遠くを見ると、王城とは別に、大きく、豪華な建物が見える。
「あれってもしかして……師匠が通っていた学園ですか?」
「あぁ、昔私が通っていた……ハイレピア学園だ。」
「随分と……豪華ですね。」
遠くに見えるハイレピア学園は、一見、あちらの方が王城なのでは、と間違えるほどに豪華で、荘厳な雰囲気を醸し出していた。
「まぁ、世界一の教育機関だからな……金はあるんだろう。」
「成程………それで、これからどうするんですか?」
「まずは、個人で王都の中を観光だな。それから宿を探して、明日、学園に向かおう。」
「ん?何しに行くんですか?」
「私の旧友は、学園の教師を勤めてる筈だからな。会いに行く。それじゃあ、そうだな……夜前に、この噴水に集合しよう。」
「了解です。それではまた会いましょう。」
師匠と別れてから、僕はまず、昔に住んでいた孤児院を探す事にした……といっても、記憶は殆どないため、聞き込みをするしかない。
「すみません!あの、王都の孤児院出身の者なんですけど、久しぶりに帰って来たせいで孤児院の場所を忘れてしまって……どこにあるか知っていませんか?」
僕はまず、近くにいた白髪の老人に声を掛けた。
「知っているには知っているが……」
いきなり、孤児院の事を知っている人に出会えた。運がいい。
「じゃが……あそこは燃えてしまって、今はもうないぞ?」
「え?」
孤児院が、燃えた?
「その話、詳しく聞いても?」
「ああ、良いぞ。」
老人はゆっくりと語り始めた。
話をまとめると、どうやら僕が孤児院を出て行った一週間後に、謎の火災が発生し、孤児たちの殆どが死亡したそうだ。そして、その付近には浮浪者がいたことから、浮浪者が火をつけたのではないか。と噂されているらしい。だが、その近くには浮浪者の死体もあり、結局犯人は不明なままだそうだ。僕は周りの孤児たちの事を覚えてはいないが、強い喪失感を感じた。
「そう、ですか……一応、跡地の場所を聞いても?」
「ああ、良いぞ———」
その後、老人に教えられた場所に行ってみたが、老人の言う通り、何もなかった。
残念だな……
その時、
「ぅっ…、ひぅっ………ぐすっ………」
何処からか、泣いている声が聞こえる。声を辿ると、そこには少年が一人、泣いていた。
「……どうしたの?」
「ぅっ…おがあさんとぉっ………はなれちゃってぇ……きがついたらぁ……………ぐすっ………いなくてぇ………!」
迷子、か……
「わかった。一緒にお母さんを探してあげるから……着いて来れる?」
「…………っゔんっ!」
そうして、少年の母親を探す旅が始まった。少年を連れて、道をひたすら歩き、曲がりを繰り返したが、見つからない。そうして右往左往しているうちに、師匠との集合時間が近づいて来た。
(どうしようかな………)
悩む。
一度、噴水付近で師匠と合流して、一緒に探す方がいいか………そう思い、僕は噴水へと歩み始めた。
噴水に着き、師匠を探す。
いた。
「あの、師匠。すいません……お話があるんですけど———」
そう言って、師匠に声をかける。
その時、僕の右側にいた迷子の少年が、走り出し、レオンの隣にいる女性へと抱きついた。
「「え?」」
僕も師匠も、困惑の表情を浮かべている。一体何があったのか。
結局事態は簡単なことであった。なんと、師匠がこの迷子の少年の母親から、子供の捜索依頼を頼まれていたのであった。まあ、見つかったのであれば、いいだろう。
御礼を言われ、親子が去り、二人が噴水前に残される。
「………師匠、観光はできましたか?」
「いや?全然だ………そっちはどうだ?」
「いえ、僕もあまり……」
二人の間に沈黙が走る
「まぁ、助かったんだったら、良いじゃないか。」
「………ですね。とにかく今は、宿を探しましょう。急がないと寝る場所が無くなってしまいますし。」
そう言って、二人は宿を探し出し、眠りについた。
……この時レオンは、一人で新発売のスイーツを食べていたことは、ニフタには言わなかった。何故なら、そこそこに怒るだろうから………
—————————
◼︎次の日
「うわぁ……近くで見ると更に大きく見えますね…」
僕たちは朝早くから、ハイレピア学園まで来ていた。
「先に手続きしておくから、待っててくれ。」
師匠が手続きをしに、学園の中に入った。
……………暇だな。素振りでもしておくか。
いつも使っている刀を鞘から抜き、素振りを開始する。
1、2、3、4、5……
素振りは好きだ。なんていうか、自分の力が確実に上がっていく気がする。
………198、199、200!
…まだ、来ない。
「遅いな……何かあったのかな?」
辺りにちらほらと、生徒の姿が見え始める。流石にそろそろ終わると思うんだが………
あ、校門から師匠が出て来た。
「師匠!だいぶ遅かったですけど、何かあったん———」
「おいリンダ!お前が寝坊したせいでめちゃくちゃに時間がかかったじゃねぇか!!!」
え?
師匠が校門から入ろうとしていた教師らしき金髪で眼鏡をかけた女性に掴みかかっていた。
「あれ?レオンちゃんだ!久しぶり!来てくれたんだね!!」
「来てくれたんだね。じゃねぇ!教師なら寝坊すんなよ!!」
なにか…すごい…喧嘩しているように見える。何故か恥ずかしいから、関わらないようにしたいけれど…
「あぁニフタ。待たせたな。」
師匠が喧嘩していた人の首根っこを掴みながら、こっちに来た。
掴まれている人が、「あはは……こんにちは……」と言っていたので、一応挨拶をしておく。
「それで……この人ですか?」
「あぁ、こいつが私の学園時代の同級生。リンダ・エンシールだ。今はこの学園の教師をしている。」
「どうも〜」
リンダさんがが手をひらひらさせ、笑みを浮かべている。
「あの、レオンちゃん。結構時間が足りないから、離してくれるといいな〜なんて…」
「あぁ、それはすまなかったな。」
急に手を離されたリンダが地面に落ちる。
そして、立ち上がる。
「改めまして…私が、レオンちゃんの親友。そしてこの学園の教師を務める、リンダ・エンシールです。宜しくね?」
「僕は、レオン師匠の弟子の、ニフタ・モンテリヒト、です。以後宜しくお願いします。」
二人が握手を交わす。
「それじゃあ、う〜ん……どうしよう。ゆっくり話す時間もないけど、今日は授業終わりも忙しいんだよね〜…………あ!そうだ!」
「レオンちゃん!ニフタくん!私の授業を見学しない?」
リンダは振り向き、こちらの反応を確かめている。
「まぁ、良さそうだね!それじゃあ私の教室に行くから、ついて来てね!」
そうして、何が何だかわからないまま、僕たちは授業見学をする事になった。
—————————
三人が廊下を歩く。窓ガラスからは、中庭で遊んでいる生徒たちが見えた。
「ここだよ!」
リンダがある教室の目の前で止まり、扉を開けた。
中には、25…いや27人ほどの生徒が椅子に座って、待っていた。
「ごめん皆んな!ちょっとだけ遅れちゃった!すぐに授業を始めなきゃいけないから、準備をお願い!」
生徒たちが授業の準備を急いで始める。そして、準備を終えた生徒たちが、不思議そうに僕と師匠の顔を見ている。
「あ〜この人たちは…う〜ん……気にしないでおいてくれればいいよ!」
何故か雑に済まされたが、ともかく授業が始まろうとしていた。
「それじゃあ……授業を始めます。」
リンダの顔がより真剣なものとなり、授業の準備が整う。
「そうだなぁ…まずは…皆!前回の授業の内容は覚えてる?」
「はい先生!前回は技巧について学びました!」
青髪の少年が手を挙げ、力強く答える。
「うん!いいね、正解!それじゃあ、内容について詳しく説明してくれるかな?」
青髪の少年は少し考えた後。
「はい!えっと……生物は、規定された型に応力を流し込むことで、様々な効果を得ることができます。その中でも、人の体に元々刻み込まれている型を潜在技巧。我々人間が物体など新たに刻み込んだ型を加工式技巧と言います。……こんな感じでしょうか。」
と、すらすら答えた。
「うん!良いね!大正解だよ。それじゃあ潜在技巧と、加工式技巧の効果の違いについてわかるかな?」
「潜在技巧は元々体に刻み込まれているものなので、自らの応力との相性が良く、大きな効果を出せますが、効果を変更することは困難となっています。加工式技巧は、相性がしっかりと決まっており、小さな効果しか出せない場合もありますが、潜在技巧と併用できると言う利点があります!」
「え、本当に、凄いね………しっかり復習してるみたいだね。これからも、頑張るように!」
褒められた青髪の少年は何やら嬉しそうであった。
「それじゃあ前回の授業の復習はここまでにして、今回の授業へと移りましょう!今回の授業は、応力とクレープスの関係性、についてです。それじゃあ……リィティアちゃん!応力についての説明をしてくれるかな?」
「えっ、あっはい!!」
突然当てられたリィティアと呼ばれていた藍髪の少女は少し戸惑いながらも、精一杯答え始める。
「えっと…応力とは私たちの体の中に備わった力で、相性がある……だったと思います!」
「うん。殆ど正解だね!それよりもっと詳しいことは、今後の授業でやっていく事だから、まだ覚えなくても大丈夫だよ!」
再びリンダが生徒たちの方を真っ直ぐに見る。
「それじゃあ、今日の本題…何だけど、ちょっと重い話になっちゃうから、聞きたくない人は聞かなくても大丈夫だよ。そう言う人は、今挙手してもらおうかな。」
誰の手も、上がらなかった。
「それじゃあ、始めます。皆さんは、クレープスという存在を知っていますか?」
ちらほらと、知っている!という声が聞こえてくる。
「それでは、クレープスとは一体何か、一体何故生まれるのかまでを知っている人はいますか?」
今度は、教室内は静寂で満たされていた。
「それじゃあ、説明を———いや、今日はレオンちゃんにやってもらおうかな。」
急に、リンダがこちらを向いた。
「………気にするなって言ったのは、そっちの方だろ。」
「いや、私よりもレオンちゃんの方が、クレープスに関しては詳しいかなって思って…」
「いや、良い。説明してやる。」
師匠がリンダと入れ替わり、教壇に立つ。
「私の名前は、レオン・ヘルツ。そこのリンダの元同級生で、そこのニフタの師匠だ。それは別に覚えなくても良い。だが、これから言うことはしっかりと覚えておけよ。」
急に教壇に立って、大丈夫かと心配したが、杞憂だったようだ。寧ろ、先生としては優秀な部類に入るだろう。
「まず、クレープスの正体とは、負の感情に汚染された元人間だ。つまり、負の感情が最大限高まる……例えば、死の危険とかだな。そういった時に、クレープスに変化することがある。基本的に精神は負の感情に侵され、喋る事もできず、辺りを無差別に攻撃するようになる。だが……稀に、意思や執念が強いやつは、クレープスとなっても意識を残すことがある。だが、精神は負の感情に侵されているためか、結局人のことは襲う。そして、意識が残されたクレープスの最大の特徴、それは……………技巧が使えるってことだ。だから、もし意識のあるクレープスと出会ってしまったなら、直ぐに全力で逃げろ。まぁ、生まれる確率は低いがな。」
これで私が言いたいことは以上だ。と、師匠は言い、教壇を降りて、リンダと場所を交代する。
「皆んな、レオンちゃん…いや、先生って呼んであげよう。レオン先生の言ったことはわかったかな?一先ず、クレープスについては、わかったと思う。だから、次は……クレープス・エクリクシについて、説明します。」
教室内に、重苦しい空気が流れる。
「皆さんの中にも、知ってる人はいると思います。クレープス・エクリクシとは、十一年前に、クレープスが大量発生し、人間社会に多大な被害を与えた事件を指します。例えば———」
僕の家族は、クレープス・エクリクシで……死亡した。僕が昔住んでいた村に、大量のクレープスが突然攻め入ってきて、生き残りは僕一人だった。師匠が助けてくれなければ、全滅となっていただろう。
暫く、僕はあの時のことを考えていた。クレープスが襲ってきた時、僕は何をしていたのか、何も覚えていない。両親の顔も、忘れてしまった。
「———というわけで、今回の授業は終了とします。残りの時間は自習とします、それと、次回までに、今回の授業の復習をしておいてください。それでは…次の授業で会いましょう!」
僕が過去を思い出そうとしているうちに、授業は終わってしまったようだ。
そうして僕たちは教室を出た。
「リンダ…私を利用するのはいいが、事前に言ってくれよ。緊張する。」
意外と師匠は、緊張していたらしい。
「今日は、なんかごめんね!付き合わせちゃったみたいで……」
「いえいえ全然、楽しかったですよ?僕は授業を受けるのは初めてでして、何だか新鮮な気分になりました。」
「私も、教師の真似事が少しできて、楽しかったな……」
「………そっか。」
少し、空気が暗く感じる。今は廊下を歩いている。だから光は煌々と当たっているはず。でも、リンダの顔は暗い。
「なぁ、リンダ。」
「…」
「何を悩んでる?」
「どうしたの?レオンちゃん。一体、何のこと?」
「惚けるな。お前は、何かで悩んだ時、大体、左手を握るよな?」
そう言われたリンダが咄嗟に左手を見る。
「それと、リンダは悩んだ時に他の誰かに相談することはあまりない。だが、今回ばかりは見逃せないな。」
「………何で?」
「勘、だ。」
「…レオンちゃんって、昔から勘がいいよね…」
ふふっ、とリンダが笑う。少しは気分が緩んだらしい。
「それで、どうしたんだ?」
レオンが真っ直ぐリンダを見た。
「レオンちゃん…いや、レオンさんとニフタさん……我々に、協力してもらえませんでしょうか。」
リンダが真剣な表情で、こちらを向き、頭を下げる。
「そう畏まらなくてもいい…リンダは私の親友だからな。それで?何をすればいいんだ?」
「とある、事件についての会議に参加していただきたいのです。」
クレープス・エクリクシについての。と、リンダは続けた。
何かが、動き出す音が聞こえた気がした。
—————————
夜、学園の最上階にある会議室に、多くの人が集まる。
騎士団の甲冑を着用している者や、いかにも教師のような見た目の者もいる。
会議室は静寂で包まれ、荘厳な雰囲気を感じさせる。
ニフタが少しばかりの疎外感を感じていた頃、会議室の中に誰かが入ってきた。
「おや、皆さん揃っているようですね………それでは会議を始めましょうか。リンダ。皆さんに資料を配りなさい。」
「はい。」
男がリンダに資料を配らせる。
「そうそう、私のことは知っている人の方が多いとは思いますが、一応。私は、この学園の学園長を務めている、ライル・エンシールと申します。以後お見知り置きを。」
そういって、ライルが一礼をする。
「それでは、本題に参りましょう……我々学園一同はクレープス・エクリクシについて、長年研究を続けていました。その中で、恐るべき事実が発見されたためその共有のために、今回の会議を開かせていただきました。まずは資料をご覧ください。」
手元に配られた資料を開くと、そこには、クレープスの発見報告があった地点を記した地図が幾つか書いてあった。地図には、赤く印が付けられているところもある。
「先に結論から言いますと……近年のクレープスの発生傾向から、クレープス・エクリクシは再発する恐れがある、ということが判明致しました。」
会議室内が、ざわつく。
その時、騎士団の甲冑を着た男が席を立つ。
「失礼、私はエスコルタ騎士団団長。フォート・アグリンドである。学園長殿、その話の根拠を詳しく教えて頂きたい。」
「ええ勿論、話しますとも。まず、我々は調査機関を立ち上げ、クレープス・エクリクシについての調査を進めておりました。そして、クレープス・エクリクシの直前の、クレープスの発見報告に目をつけたのです。クレープス・エクリクシが発生する数ヶ月前、世界各地で身元不明のクレープスが複数報告されたようです。その時は、まだそのクレープスの危険性に気付く者は居りませんでした。その後、クレープ・エクリクシが発生した際に、大量のクレープスが何処からともなく現れ、近辺の都市を襲いました。そして、そのクレープス達が発生した場所……それこそが、あの身元不明のクレープスの報告があった場所でした。更に調べていくと、身元不明のクレープスが発見された場所はいずれも、発展した街の近くでした。そして最後に………現在、国中から、身元不明のクレープスの発見報告が相次いでいます。そしてそれは、いずれも発展した街の近く………この事から、我々は、クレープス・エクリクシは再発する恐れがある……と、考えたのです。」
「なる、ほど。」
騎士団団長が神妙な面立ちで頷く。
「そして、重要な点はこれだけではありません。今回の調査結果にて、クレープスが人類に強い打撃を与えるように、計算された行動を取っている事がわかりました。
つまり……クレープス・エクリクシとは、何らかの意思を持った存在が意図的に発生させた現象である、という事です。」
学園長が息を整え、真っ直ぐと、この場にいる全員に届くように強く、深い声で。
「我々は、戦う必要があるでしょう……人類を脅かす、何かと。」
そう、言った。
—————————
—————————
◼︎———座標特定不能
昏く、風が吹き荒れ、荒廃した大地に何かが佇んでいる。
その存在は遥か昔、この世界に◼︎と◼︎のみが主となっていた時代から存在している。
それは、世界を観ていた。
だが、それももう昔の話。すでにその存在は、呑まれてしまった。
「嗚呼、可愛い可愛い我が子らよ…!」
それは、少女を形どっただけの、狂気の塊として成り果てている。
「狂気で……己が持つ狂気の全てで!世界を呑み込みなさい!」
狂気の声が大地を震わせ、空に響かせる。
「それが………私達の使命なのです…!!あはっあははっ!!!あはははははははっ!!!!」
それは艶笑っていた。
—————————
流れの都合上、書きたいものがまだ書けません。 カナシイ




