49 笑いによる平和的解決方法
前話、読後推奨です。
『そんなことありません!この世にいらない存在等無いのです。この世にあるものは全て、神様が必要だと思ったから存在しています。カイン様だってそうです!』
『アリーシャ……。』
『それに、私はカイン様を愛しております。それでもまだ、存在意義が無いとおっしゃるのですか?』
『アリーシャ……ありがとう。目が覚めた気がするよ。僕も愛してる。色々と黙っていてごめん。結婚してくれ。』
『カイン様……お気持ちはうれしいです。ですが、私も黙っていたことがあるのです。今夜月が沈む時、私は光となって消えてしまうのです。』
『アリーシャ、嘘だろう!?』
『いいえ、本当です。もう少しで月が沈みます。あぁ、最後にあなた様と両想いになれてよかった……。』
『アリーシャ!!』
優壱演じるカインが叫んだ瞬間、拍手が聞こえてきた。
「すごくよかったよ。一回目も二回目も、少しずつ違っていて……でも、よくなっていって良かった。
……梓先輩と琢磨先輩より、よっぽど上手だった。」
「早苗先輩……。」
器具室の入り口に立っていたのは、早苗先輩だった。
「二人だけで、練習してたの?」
「あ、はい。私も優壱も、やりたい役には入れなかったけど、演じるのは好きなので。」
「それに、先輩達が個人的に喧嘩するのはどうでもいいですけど……劇の中でまで喧嘩されてると、イライラしません?
早苗先輩の言うとおり、そこが足りないのにって分かっているから、尚更。」
「本当なら……愛し合ってるハズの二人が、演じ手の所為で反発しあっているのって、可哀想な気がして……。」
「それで、一回目の劇はあんなシナリオに変わってたんだ?」
「す、すみませんっ!」
そう、私達は一回目にエンドをオリジナルシナリオに変えて演じたのだった。
「どうせだったら、笑えた方がいいかなって、な。」
「うん。」
お話事態も好きだけど、役も好きだから…と控えめに言って笑ってみせると、早苗先輩は何か考え込んでいるようだった。
「そっか。そうだよね……。」
役が好き、演じるのが好き、か。と呟いた先輩は何かを決心したように、頷いた。
「このままじゃダメだよね!」
早苗先輩は、ありがとう。と言うと、急いで舞台に続く階段を降りていった。
「休憩は終わりです!それじゃあ、アベルとカインが入ってくるシーンから。みんな、位置について!」
そう言った後、早苗先輩が咲先輩にこっそりと何か囁いた。
あれ?二人してニヤって…何の話をしてるんですか…?
けれど、疑問は疑問のままで…
「よーい、《カンッ!》」
《ノック音》
アベル『入っていいかな?』
マリア『どうぞ。』
〈アベル×2入室〉
アベル(仮)『アリーシャ……。』
アリーシャ『ア、アベル様…。』
マリア『アベル様……いえ、カイン様。本当のことを話して差し上げたらどうでしょう?』
カイン『……。』
アベル『カイン。』
カイン『分かった。アリーシャ、今まで黙っていてごめん。僕の本当の名前は、アベルじゃない。カインなんだ。』
アリーシャ『カイン様……?』
カイン『あぁ、僕はカイン。第二王子だ。』
アリーシャ『え?なら、さっきは何故王子では無いとおっしゃったのですか?』
カイン『だって……僕は王子なんかじゃない。第二王子なんていらない存在なんだ。』
マリア『カイン様…!?』
カイン『だってそうだろう!?王位継承するのはアベル兄様だ!』
アベル『お前は、俺の只一人の弟だ。いらないわけがないだろう!?』
カイン『でも、僕は何をしても駄目で、アベル兄様の顔に泥を塗ることしかできない!こんな僕に……存在意義なんて無い!』
アリーシャ『そんなことありません!この世にいらない存在等無いのです。この世にあるものは全て、神様が必要だと思ったから存在しています。カイン様だってそうです!』
カイン『アリーシャ……。』
アリーシャ『それに、私はカイン様を愛しております。それでもまだ、存在意義が無いとおっしゃるのですか?』
カイン『アリーシャ……ありがとう。目が覚めた気がするよ。僕も愛してる。色々と黙っていてごめん。結婚してくれ。』
アリーシャ『カイン様……お気持ちはうれしいです。ですが、私も黙っていたことがあるのです。今夜月が沈む時、私は光となって消えてしまうのです。』
マリア『そんな……!』
カイン『アリーシャ、嘘だろう!?』
アリーシャ『いいえ、本当です。もう少しで月が沈みます。あぁ、最後にあなた様と両想いになれてよかった……。』
カイン『アリーシャ!!』
ナレーター『次の瞬間、月が沈みました。ところが』
アリーシャ『消えていない……!?』
〈魔女、背景裏から〉
魔女『アリーシャ、婚約おめでとう。』
アリーシャ『魔女様!?どういうことですか?』
魔女『一ヶ月の猶予、というのは嘘です。』
アリーシャ『なんで……?』
魔女『私の娘は人間に恋をして、あなたと同じように私に薬を頼んできたのです。ところが恋は叶わず、娘は海に身を投げて死にました。
あなたには、同じ道をたどって欲しくなかった!だから命と引き替えにする、と嘘をついたのです。あなたが、王子を諦めるように。』
アリーシャ『魔女様……。』
魔女『けれど、あなたは諦めなかった。そして、恋は叶った。あなたからは、美しい髪の毛をもらっていきます。
どうか、娘の分まで幸せに……。』
アリーシャ『魔女様……!』
あれ?髪の毛…?
咲先輩演じる魔女の言葉に疑問を抱いた。これって、私と優壱が演じてたっっ!
カイン『アリーシャ、朝日に反射して頭が神々しいよ…!!』
アリーシャ『あぁ!髪の毛が一本も無い!!』
カイン『大丈夫だ、アリーシャ。眉毛はある。』
マリア『睫毛と鼻毛もあるわっ!』
ナレーター『こうして、つるっぱげになってしまったアリーシャはカインと共に、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。』
他の役者もアドリブを重ねて、爆笑エンドの出来上がり!
「あははははっ!いいよ!これっ!」
「ひぃ〜っ!笑いがっとまんなーい!」
「ま、眉毛ってwwwww」
「wwwww」
全員で笑い転げていると、梓先輩と琢磨先輩が影で仲直りしているのが見えた。
「なるほどね〜。」
一人でによついていると、優壱が近づいてきた。
「どーした?」
「いや、早苗先輩も策略家だな〜っとね。」
これなら、早苗先輩の憧れ、梓先輩に追いつくのもそう遠くないんじゃなかな〜。
「えーっと、どういうことでしょう?」
「えっ、優壱分かんないの?アンタにしては珍しいね〜。
さっきの喜劇で得たメリットってなんだと思う?」
「えー……梓先輩と琢磨先輩が仲直りしたこと?」
「それもそうだけど、みんなが笑顔になれたって言うのもそう。」
笑みを浮かべて言うと、そっかぁ。と、優壱も納得したようだった。
「みんな疲れてたもんな〜。」
なかなか進まない練習、殺伐とした雰囲気、それから夏休みの宿題。どれも疲れることばかりだ。
私と優壱は息抜きしていたからいいが、残りの人たちはずっとストレスのたまるようなことをし続けていたのである。
笑うことにより、雰囲気の改善、ストレス解消、ついでに先輩達の仲直り。流石、監督様。
「さあ!気を取り直して初めから行きます!」
「「「はい!」」」
監督の声に、部員全員の声が反応した。約一週間振りに部員の心が一つになった瞬間だった。
早苗先輩は、優壱と優李の爆笑ものをみて、それを利用して上手い方向に転がした…と。
早苗監督、がんばってます。
勿論、監督補佐は上手く転がされた方ww




