42 地獄が過ぎた後には。
地獄の二週間が過ぎた後、審査の結果が出た。
審査っていっても、うちの部活の役決めはオーディション式で、誰をその役に決めるのかは多数決だ。
台本の内容にそったアドリブ、役柄、そして声量。その他どの点を取っても優れている人が役につく。
勿論、希望はとるけどね。
私は、主役の人魚、ナーシャに希望した。はっきり言うと、勝負に出た。
で、結果……私は落ちた。
うーん、当然?梓先輩に勝とうだなんて、百年早いと感じた。声量は勿論のこと、演技力も。
そう、梓先輩も主役を希望していたのだ。まぁ、三年生は最後だし、主役を演じたいと思うのは当たり前か。
「優李ちゃん?どうかした?」
心配そうな圭一先輩の声に我に返った。
「いえ、なんでもないです。ちょっと考え事しちゃって……すみません。」
「謝らなくていいよ。一緒に帰ろうっていきなり言い出したのは僕だしね。」
そう、時は既に夕暮れ。
私は、恐れ多くも圭一先輩の方から誘ってもらい、一緒に帰っていた。
先輩の行動は、私がオーディションのことで落ち込んでいたために行われたことだと思われ、更に落ち込んだ。
……いろんな意味で。
「いや、あの、誘っていただいて、すっごくうれしかったです!荷物まで持っていただいて……」
「彼女の荷物持つぐらい当たり前でしょ。」
「あ、でも……」
先輩は、尚も言葉を続けようとした私を遮って
「あー、じゃあさ。土曜日、デート行かない?」
と、言った。
「ふぇ!?」
いきなりのことに驚き、変な声が出た。
「あ、ダメ?」
「いえ、だ、だめじゃあないです!行きたいです!あ、明日ですよね!」
「うん、じゃあ後でメールするから。」
「は、はい!」
「おやすみ。」
完全に先輩のペースだったこと、
また気をつかわせてしまったこと、
家の前まで送っていただいたこと……
それらの事に私が気がついたのは、玄関に入った後だった。
次回、急展開!!
……の、予定。




