30 放送室での静かな争い。
放送室内のイスを窓際に寄せて座る。優壱ってば、放送委員じゃないのに……我が物顔だな、おい。そして、アイツは唐突に一言。
「お前さ……圭一先輩のこと、好きだろ?」
「!?」
私は、イスから転げ落ちた。
「お前な……女子としてどうよ?」
いやいや、普通の反応でしょ?コレぐらい。驚いたんだから当たり前じゃない。まぁ、ちょっと大袈裟だったかもだけど。
「……何でそんなこと、あんたが知ってんのよ。」
「いや、見てたら分かった。」
え〜っと、この流れは……
「優壱って、すとーかー?」
「んな訳ねーだろ!?どこでどう解釈したらそうなるんだよ!?」
「ここでこう……?」
なんか、がっくりしてる。わざとだったんですけど……部活だとよくあることでしょ?
「そういうことじゃあ無くってさ。」
「うん、知ってる。てかさ。」
「なんだよ。」
「優壱も咲先輩のこと好きでしょ?」
「!!」
こっちだって、ちゃんと見てたんです――。こっちの恋心に気づかれていたのは誤算だったけど。
「て、いうことで、脅しても無駄だよ?バラしたらバラすからね。」
「……もとからそんなこと企んでねーよ。」
ふてくされたように呟いたその言葉は……残念ながら(?)聞き逃してしまった。まぁ、大したこと言ってないよね。
「で、話はそれだけ?」
「ん―。別にどうでもいいかと思ったんだけど。オレ、借り物競争の係りだからさ、何かあっても助けてやれねーよって言っとこうと思って。」
「あ―、うん。分かった、気をつけておく。けど、優壱って委員会やってたっけ?」
「いや、光貴のやつが軽い熱中症で倒れちまって。競技にはでるから、係だけやってくれってさ。」
やっぱりお人好しだな。
「だからさ、圭一先輩に頼んで……。」
「頼んだの!?」
私の剣幕におされて、優壱はイスから転げ落ちた。
「いや、頼んだらいいんじゃないかな〜と。」
「遠慮しとく!」
「何で?先輩に近づくチャンスじゃん。」
「なんでも!!」
だめなの!だって……
「私のは……本当の恋じゃないから。」
「……なんで?」
男子には分からないかな〜。このビミョーな気持ちは。
「とりあえず、そういうことだから!」
それだけ言うと、何か言われるのがいやで立ち上がった。
「あ、おい!」
優壱が止める声が聞こえたけど……いや、私は何も聞いてなかった!!
以上!




