31 頼まれて。
「佐藤さん?ちょっと、頼みがあるんだけど……いいかな?」
席に帰ると早速、石田さん達が話しかけてきた。
「何?別に(水ぶっかけられたこと、根に持ってるけど表面上は仲良くしてあげようと思ってるから)いいけど。」
私のダークオーラに、石田さん達は後ずさった。うん、いい心懸けだね。
「あの、珠ちゃんが頭痛いって言い出してね、次の借り物競争で代わりに走ってくれる人を探してるんだ。佐藤さん、走ってくれるかな?」
確かに、今の彼女達の中には、村山さんがいなかった。
「他に、走れる人はいないの?ほら、私鈍足だからさ。」
「うん、知ってる。」
おい、私の足が遅いのは真実でも、肯定するなよ!傷つくじゃん、そんなに仲良くない人にそんな風に言われたら!
「でも、決まりで代役は一人一回って決まってるでしょう?他にできる人がいなくて……。」
結局、私がやるしかないんじゃん。初めから言えよ!!それでも、怒りを表に出さずに営業スマイル☆
「分かった、やるよ。」
「ありがとう!それじゃあ、よろしく。」
彼女達は、大袈裟に喜んで見せると、そそくさと去っていった。
「借り物競争に参加する選手は、待機場所へ移動して下さい。繰り返します……」
あぁ、行かなきゃか。面倒だな〜。特に、生徒の波をかき分けるのが。どうして運動会ごときに、こんなに混んでるんだ。待機場所に着くのが遅くなっちゃったじゃん。あ、あそこにいるのは!
「千津!」
「あ、優李。もしかして、優李が走るの?」
「うん。村上さんって何番目だったの?」
「池内さん、宮本さん、村上さん、私の順だよ〜。」
その時、ふと閃いた。
「ねぇ、順番変わってくれない?」
「え?別にいいけど、なんで?」
「うん、みんながやってるの見ていたいな〜って。」
笑顔で嘘をつく。
「分かった〜いいよ。」
「ありがとう!」
もしかすると、千津の走る時にだけ、何か罠があるかもしれないし。まぁ、保険だよ。
「ねぇ、千津。私、やり方知らないんだけど。」
「ん?えっと、借り物競争担当の委員会の人がお題を書いて、担当の列前に置くの。で、私達は障害物をさけて、お題を取る。それを確認したら、誰かに借りてゴールまで走る!あ、確認係りの所まで行くの、忘れないでね?」
「優壱の言ってた係ってこれか。了解、ありがとう。」
と、後方から声が聞こえてきた。
「誰か!シャーペンかして!」
「帽子は!?どこ!?」
「野球部の人〜!?いないの!?」
「嘘、もう始まってる!?てか、人?人、借りるの!?」
「あ、次は私だ!」
「あ、がんばってね!」
私の声援に彼女は笑顔で応えた。どうしたらそんなナチュラルに笑顔ができるの!?うらやましい……。とか考えてる内に、無事お題を確認した千津が、走り出……せなかった。あれ?
千津は、お題を見たまま固まっていた。でも、しばらくすると頷き、席で見ていた星くんの下へ行き、耳打ちしてからゴールへ向かった。お〜、一位だ!すごい!
って、私の番じゃん!
千津のお題が何だったのか気になりますが、ひとまず忘れて目の前のことに取りかかりませう。
スタートダッシュは遅れたけど、この後取り返せば大丈夫!……だが、お題を確認した私は若干パニック状態におちいっていた。
「……す、好きな人……!?」
叫ぶまでにはいたらなかったが、心境は……うん、ヤバい!と、とりあえず……どうしよう!?
立ち往生してしまった私の下へ駆けつけてきたのは……圭一先輩だった。ヤバい、かっこいいです、先輩!!でも、なんで!?
「優李ちゃん、大丈夫?」
「せ、先輩?なんで……」
「おいで!」
私は、圭一先輩に引っ張られて一位でゴールした。
確認係りは、故意に選んで優壱の下へ……
「うん、合格。しっかりな、優李。」
何がなんだか分からないまま、私は圭一先輩に連れられてグラウンドを後にした。
爆弾投下完了しました。




