表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた令嬢は魔女になり、誰にも奪われない領域を作る〜義妹に全てを奪われた伯爵令嬢、奴隷たちと帰る場所を創る〜  作者: 薄氷薄明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/46

第30話 「冬の商品」

 季節が移り、王都に冬が来た。


 ロドワール王国の冬は厳しい。石造りの建物は夜になると底冷えがする。市場に出回る薬草の種類が減り、薬師への依頼は風邪薬と滋養強壮が増える。


 エマはこの季節に向けて、ずっと前から準備していたものがあった。


「自動薪割り器、完成しました」


 エマが食堂に持ち込んだのは、小さな台の上に刃が乗った道具だ。台の端に石が一つついていて、それを叩くと刃が自動で降りる仕組みになっている。薪を置いて叩くだけで、力を使わずに薪が割れる。


「これ、どうやって」とハインが目を丸くした。


「術式を刃に刻みました。力のない方でも、老人でも使えます」


「すごい……これ、冬の前に出せますよ」


 もう一つはエマが「ずっと暖かい石」と呼んでいるものだ。拳ほどの大きさの石に、熱を一定に保つ術式を刻んである。布に包んで抱えると、六時間ほど暖かさが続く。寝床に置いたり、外出時に懐に入れたりと使い方は自由だ。



***



 販売を始めると、すぐに大きな反響があった。


 自動薪割り器は開店三日で完売した。特に一人暮らしの老人や、力仕事が難しい女性から大きな反応があった。「これがあれば冬が楽になる」という声が多かった。


 ずっと暖かい石も、毎日作っても追いつかないほど売れた。


「エマさん、また完売です」


 ハインが言う。


「今日中にもう十個作ります」


「昨日も十個作りましたよ」


「明後日にはまた作れます」


「エマさんの体力はどうなっているんですか」


「問題ありません」


「問題あります」


 ライリーが帳簿を置いて言った。


「一日に作れる上限を決めましょう。売り切れたら翌日まで待ってもらう形にします」


「お客様が」


「エマさんが倒れたら誰も困ります。待ちます、お客様も」


 エマは少し考えて、頷いた。


「分かりました。ライリーさんの判断に従います」


「……素直に聞いてくれると拍子抜けします」


「正しいことを言われたら従います」


「少しくらい反論してもいいんですよ」


 ハインが笑いをこらえた。ロンが小さく咳払いをした。



***



 ライリーが管理を入れると、エマの睡眠時間が安定した。


 睡眠が取れると、逆に仕事の質が上がることをエマは実感した。調合の精度が上がり、ミスが減り、作業時間も短縮された。


(ライリーさんが言っていた通りだ)


 素直に認める。自分の判断が全て正しいとは思っていない。信用できると判断した人間の言葉は聞く。その判断基準が他の人と違うだけで。


 ある夜の食後、ライリーがぽつりと言った。


「エマさんって、信頼と信用を分けて考えていますよね」


「どういうことですか」


「人を信用しているからその人の言うことを聞く、ではなくて。そのことが正しいかどうかで判断しているでしょう」


「……近いです。人を信用するかどうかと、その人の言っていることが正しいかどうかは、別の軸で考えています」


「なるほど」


 ライリーは少し間を置いてから、続けた。


「私は……冤罪で奴隷になった時、全部嫌いになりました。関わった人間全員を。今も、その傾向はあります。エマさんみたいに切り分けられない」


「ライリーさんがここにいるのは、私を嫌いではないということですか」


「当たり前じゃないですか」


 ライリーが少し語気を強めた。照れを隠しているのが分かった。エマは少し笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ