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虐げられた令嬢は魔女になり、誰にも奪われない領域を作る〜義妹に全てを奪われた伯爵令嬢、奴隷たちと帰る場所を創る〜  作者: 薄氷薄明


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第23話 「帰還と建築準備」

 王都に戻ったのは夕刻だった。


 荷馬車から素材を降ろす作業は、空間魔法を解いた後が大変だった。本来の量が一気に現れる形になるので、素材の山がどっと出てきた。


「……多い」


 ラドスティンが一言言った。


「多いですね」


「店に全部入りません」


「倉庫スペースを一時的に確保しましょう。拡張工事が終わるまでの仮置きです」


 ライリーがすぐに動いた。馬車を貸してくれたブロンソンに連絡を入れ、アルドスの一角に一時保管のスペースを借りることができた。石材はそちらに置かせてもらい、薬草は店の二階にできる限り積んだ。


「これだけ採れれば、当分の素材は心配なさそうです」


「ですね。ありがとうございます、マオドさん、ルクスさん。おかげで予定以上に集められました」


 エマがそう言うと、二人は少し照れたような顔をした。


「……こちらこそ、色々と」とマオドが言いかけた。


「色々と?」


「……エマさんと一緒に仕事ができて、良かったです」


 少し言い方が変わったが、言いたいことは伝わった。エマは頷いた。


「それで、一つ相談があるのですが」


「何ですか?」


「今後の建築作業なんですが、お二人にも引き続き手伝ってもらえると助かります。レンタルの延長をブロンソンさんに相談しようと思っていて」


 マオドとルクスが顔を見合わせた。


「……手伝っていいんですか?建築って、俺にできるかな」


「ルクスさんは力があるし、器用でしょう? 向いていると思います」


「マオドは?」とルクスがマオドを見る。


「私は……ないよりある方が良ければ」とマオドが少し言いにくそうに言った。


「ないよりある方が良いに決まっています。お願いします」


 エマが静かに、でも確かに言うと、マオドが少し表情を緩めた。


「……分かりました!お願いします」



***



 ブロンソンへの相談は翌日に行った。

 アルドスの応接室で、ブロンソンはエマの話を聞き、すぐに頷いた。


「マオドとルクスの延長は構わない。グスタも、建築の監督として延長する方が仕事がスムーズだろう」


「ありがとうございます」


「費用は?」


「通常のレンタル費用でいただけます。彼らにも仕事として報酬が入る形でお願いしたいです」


 ブロンソンが少し目を細めた。


「……エマさんは毎回そう言いますね。奴隷に報酬を出す、と」


「当然のことではないですか」


「当然ではないのが、世の常です。ただ……」


 ブロンソンは少し笑った。


「私も同じ考え方なので、文句はありません」


 こうして、マオドとルクスとグスタの建築助っ人が正式に決まった。



***



 建築作業が始まったのはそれから三日後だった。


 まず土地の購入が完了した。

 ライリーが交渉した結果、金貨十八枚という相場より安い価格での購入になった。

 老夫婦は喜んでいたとライリーが報告した。


「少し上乗せしてと言ったんですが」


「老夫婦の方から、これで十分だと言われました。むしろ、長年放置していたのにこんなに良い値段で引き取ってもらえたと喜んでいました」


「……そうですか」


「代わりに、何か困ったことがあれば店に来てほしいと伝えておきました」


 エマはライリーを見た。


「……それが、ライリーさんなりの気遣いですね」


「そうですよ」ライリーはさらりと言った。


「エマさんが上乗せと言いそうだったので、先に布石を打っておきまし

た」


「分かっているんですね、私のことを」


「半年一緒にいましたから」


 エマは少し笑った。



***



 地鎮はグスタが仕切ってくれた。

 まず地面を固め、排水を考えた基礎を作る。石材を使う箇所と、通常の素材を使う箇所の区分けも、グスタが細かく指示してくれた。


 ロンとラドスティンは重い石材の搬入と設置を担当し、ルクスが材料を次々と運んだ。

 ハインは細かな仕上げ作業が得意で、グスタの指示に従って壁の調整をこなしていた。マオドはエマの手伝いをしながら、必要な部材を準備する役割を担った。


 ライリーは全体の進捗管理と、追加の材料発注を担当した。


 エマは……できる限り手伝ったが、大工仕事は思ったより細かい作業が多く、何度か「エマさんは魔法の仕事をしていてください」とグスタに優しく言われた。


「……邪魔でしたか」


「邪魔ではないですが、精度が必要な部分は任せた方が仕上がりが良くなります」とグスタは言った。

 その言い方は全く嫌みがなく、ただ事実を伝えていた。


「そうですか。分かりました」


 エマは素直に引いた。エマも自身の得意不得意は、分かっている。

 店の作業場に戻ったエマは、調合に集中した。工事の音を聞きながらポーションを作る日々が、それから一ヶ月続くことになる。

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