第二話 「風の召喚少年団」結成6
ウィンドリーフへの道中
馬車がリーフェの里を出発してすぐ、カイルは少し照れくさそうに自分の姿を見下ろした。
母リリアが「絶対に危ないからこれを着なさい!」と無理やり渡した装備だった。
グランターバン(紫色のターバン)とグランマント(紫色のマント)。
見た目はまるでド○ゴンク○スト5の主人公そのもの。
頭にターバンを巻きと旅人の服の上にマントを羽織り、革の靴を履いた姿は、ちょっとした冒険者に見える。
「母さん、やりすぎだよ……」
カイルはマントの端を指でいじりながら小さく呟いたが、内心はちょっと嬉しかった。
大切な勇者の剣(模造剣・ダガー)は、木剣を折ってしまったクレスに貸し出していた。
代わりにカイルが持っているのは、クレスから借りた樫の杖。
召喚士らしい後衛スタイルだ。
馬車の荷台で、カイルはエリオス神官の隣に座っていた。
エリオス(22歳・新任神官)は穏やかな笑顔でカイルの召喚獣を見ながら言った。
「カイルくん、君の魔獣召喚……本当に珍しい祝福だね。
実は『召喚契約』というものがあるんだよ。
今のカイルくんでも、H〈無級〉かG〈初級〉のモンスターなら契約を結べるかもしれない。
契約を結ぶと、召喚した魔獣が増えて、君の意思とより深く繋がるんだ」
カイルの目がキラキラと輝いた。
「えっ、本当ですか!?
ファングやルビィ以外のモンスターと……ぼく、もっと強くなれるんですか!?
どうやったら契約できるんですか!?」
エリオスは優しく笑って説明を始めた。
カイルは夢中になって質問を連発し、エレナも隣でじっと耳を傾けていた。
昼過ぎ、馬車は街道沿いの小さな空き地で停まった。
ロイ・ワゴンが馬を休ませながら言った。
「よし、ここで昼飯にしようか。
みんな、ちょっと休んでくれ」
エリオスとカイルは近くの川に水を汲みに行くことになった。
二人がいなくなった直後——
「キャアアアアッ!?」
大きなネズミの影が茂みから飛び出してきた。
ウェアラット(F〈低級〉)。
腹を空かせた個体で、体長は1メートル近く。
鋭い牙を剥き出しに、荷台の食べ物を狙って突進してくる。
ミラが悲鳴を上げた。
クレスとチェスターは一瞬で動いた。
チェスターが素早く弓を構え、矢を地面に射って注意を引く。
「クレス! 今だ!」
クレスは借りた**勇者の剣(模造剣・ダガー)**を握りしめ、
覇気を一瞬だけ爆発させて飛び込んだ。
「うおおおっ!!」
ザンッ!
一撃目がウェアラットの肩に深々と突き刺さり、
アンコモン級の魔力の輝きが刃を走った。
ウェアラットが大きく怯む。
「これ……すげえ威力だ……!」
クレスは驚きながらも、二撃目を全力で振り下ろした。
ドスッ!
ウェアラットが悲鳴を上げて倒れ、動かなくなった。
ロイ・ワゴンが目を丸くして拍手した。
「すげえな、クレス坊主!
あの剣撃……ただの坊主じゃねえな。
一撃目から大ダメージ出てたぞ! お前、才能あるわ!」
クレスは息を荒げながら剣を見つめ、呆然と呟いた。
「……これが、勇者の剣(模造剣・ダガー)の力……?
カイル、すげえ武器貸してくれてありがとう……
俺、こんなに一撃で倒せたことなかった……」
チェスターが冷静に矢を回収しながら、
「クレス、無茶しすぎ。
でも……確かにあの剣、ただものじゃなかったな」
ミラがホッと胸を撫で下ろし、エレナが小さく拍手した。
水汲りから戻ったカイルとエリオスが、倒れたウェアラットを見て驚いた。
「えっ、もう倒してたの!?」
カイルが目を輝かせると、クレスは照れくさそうに勇者の剣を返した。
「カイル、ありがとな。
この剣……マジで強い。俺、ちゃんと自分の剣を買ったら返すよ」
昼食(干し肉とクッキー)を簡単に済ませ、一行は再び馬車を出発させた。
夕暮れ前、馬車は無事にウィンドリーフの街に到着した。
街の石畳の道、賑やかな市場の喧騒、遠くに見えるギルド支所の看板。
子供たちは目を輝かせながら荷台から降りた。
ロイ・ワゴンと別れ、エリオス神官に連れられて今日泊まる教会へ向かう。
リーフェの里の小さな教会とは比べ物にならない、立派な白い石造りの教会だった。
エリオスが優しく言った。
「今日はみんな疲れただろう。
早めに夜ご飯を食べて、ゆっくり休んでくれ。
明日、街を案内するよ」
子供たちはベッドに倒れ込むように横になり、
ルビィはカイルの枕元で丸くなり、ファングは部屋の隅で番犬のように座っていた。
カイルは天井を見つめながら、小さく呟いた。
「……明日、クレスにいい剣が見つかるといいな。
それに……召喚契約のことも、もっと聞きたい……」
エレナが隣のベッドからそっと手を伸ばし、カイルの指に触れた。
「……カイルお兄ちゃん、今日もお疲れ様……」
教会の鐘が静かに鳴り、
ウィンドリーフの街の夜がゆっくりと更けていった。
カイル・ランチェスター
12歳・男性・ランチェスター家四男
職業:村の子供 魔獣召喚士
祝福:魔獣召喚(異能)、魔獣召喚士(職業)、MP補正(能力)
召喚:〈G級〉ファング(ハウンドドック)、〈D級〉ルビィ(カーバンクル)
装備:
樫の杖 (クレスから借りてる)
(勇者の剣(模造剣・ダガー) アンコモン級 クレスに貸出中)
おなべのフタ(即席盾)
グランターバン (紫色のターバン)
グランマント (紫色のマント)
旅人の服(父のお古)
革の靴(兄のお下がり)




