第二話 「風の召喚少年団」結成7
ウィンドリーフの朝 ~冒険者ギルドへ~
翌朝、ウィンドリーフの街の教会は柔らかな朝陽に包まれていた。
食堂では、5人の子供たちとミラ、エリオス神官が大きなテーブルを囲んで朝ごはんを食べていた。
焼きたてのパン、チーズ、卵と野菜のスープ、果物が並び、ルビィはカイルの膝の上で「ルビィ~♪」と甘えながら干し果物を頰張り、ファングは床で大きな骨をガジガジとやっていた。
ミラがフォークを置きながら、にこっと笑った。
「ねえみんな、今日の予定はどうする?
私はエリオスさんと……その、ちょっと街を見て回ろうかなって思ってるんだけど」
エリオス神官が照れくさそうに頰を掻いた。
「ええ、ミラさんと二人で少しデート……じゃなくて、街の教会を視察しようと思います。
皆さんは自由に行動してください。ただし、絶対に迷子にならないようにね」
クレスがパンを頰張りながら、
「了解です! 俺は絶対にいい剣を買うぞ!」
その時、カイルがグランマントの端を握りしめ、目を輝かせて言った。
「みんな……僕、マイケル・ロングさんに会いに冒険者ギルドに行きたいんだ。
昨日道中で助けてもらったお礼もしたいし、クレスにいい剣を売ってくれるお店を聞いてみようと思うんだけど……どう?」
エレナがすぐに頷いた。
「カイルお兄ちゃんが行きたいなら、私も行く……!」
チェスターが冷静に、
「ギルドなら情報もたくさんあるはずだ。いいアイデアだ」
アネットも笑顔で、
「神様もきっと喜んでくださるわ。みんなで行きましょう!」
クレスが拳を握りしめて立ち上がった。
「よし、決まりだ! マイケルさんに会って、良い剣の店を教えてもらおう!」
ウィンドリーフの冒険者ギルド本部支部は、街の中心にそびえるかなり立派な石造りの建物だった。
5人は建物の前で足を止めた。
「うわ……でかい……」
クレスが珍しく声を震わせた。
チェスターが小さく息を吐く。
「本部の支部って、こんな立派なんだな……」
エレナがカイルのグランマントの裾をそっと掴んだ。
「……入るの、ちょっと怖い……」
カイルもドキドキしながら、
「でも……マイケルさんがいるはずだよ。行こう!」
クレスが意を決して、
「よし、俺が先に行く!」
大きな扉を押し開け、一行はギルド内に入った。
中は広々としていて、クエスト掲示板が壁一面に並び、冒険者たちが活気よく話し合っている。
カウンターには、綺麗な受付嬢(20代後半・金髪)が笑顔で立っていた。
「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ。
初めての方ですか? 入会希望でしょうか?」
5人全員が一瞬で固まった。
カイルが「あ、あの……」
エレナが後ろに隠れ、
アネットが「え、えっと……」
チェスターが珍しく言葉に詰まり、
クレスが必死に声を張り上げた。
「い、いや! その……知り合いの冒険者さんに会いに来たんですけど……!」
受付嬢が優しく微笑んだ瞬間——
「ははっ、カイルとエレナじゃねえか!」
後ろの休憩スペースから、聞き覚えのある低い声が響いた。
マイケル・ロングが大斧を背負ったまま、にやりと笑って近づいてきた。
「昨日は無事に着いたみたいだな。
ロイの馬車で来たんだろ? 聞いたぜ、元気そうだ」
カイルが目を輝かせて駆け寄った。
「マイケルさん! 会えてよかったです!」
マイケルは子供たちを順番に見回し、
「で? 今日は何の用だ? 確か良い剣を探してるんだろ?」
クレスが勢いよく頷いた。
「はい! 昨日カイルに借りたこの剣、めちゃくちゃ強くて……私も自分の剣を買いたいんです!
マイケルさん、いい店知りませんか!?」
マイケルは豪快に笑った。
「ちょうどいい。俺もこれから用事があるから、後で連れてってやるよ。
……ところで、せっかくだし、お前らギルドに入会しちゃうか?
未成年(15歳未満)はH級固定になるけどな。
受けられるクエストも個人はG級~H級まで、パーティーでもF級までだ。
ただしC級以上のパーティーにいる場合はその限りじゃないぜ」
5人が顔を見合わせた。
カイルが真っ先に手を挙げた。
「僕……入りたい!」
クレス「俺も!」
チェスター「情報も得られるし……いいな」
アネット「神様もきっと……!」
エレナ「カイルお兄ちゃんがいるなら……」
マイケルがニヤリと笑って、
「よし、じゃあ入会手続きしようか。
……ついでに、パーティー名も決めなきゃな。
まだ決めてないんだろ?」
5人が同時に「あっ」と声を上げた。
クレスが照れくさそうに頭を掻いた。
「そうだ……まだ名前決めてなかった!
どうしよう……」
チェスターが冷静に提案する。
「風に関係する名前がいいんじゃないか? リーフェの里は風の大クリスタルに近いし」
アネットが手を合わせて、
「召喚士のカイルくんがいるんだから、召喚を入れて……」
エレナが小さく呟いた。
「……風の……召喚……少年団……?」
カイルの目が一瞬で輝いた。
「それ、いい! 風の召喚少年団!
僕の召喚獣もいるし、みんなで一緒に冒険する感じがする!」
クレスが拳を握って立ち上がった。
「決まりだ! 『風の召喚少年団』でいこうぜ!
これが俺たち初めてのパーティー名だ!」
チェスターが小さく微笑み、
「悪くないな」
アネット「神様もきっと気に入ってくださるわ」
エレナがカイルを見て、嬉しそうに頷いた。
マイケルが大笑いしながら受付嬢に声をかけた。
「よし、決まったな!
パーティー名『風の召喚少年団』で、H級5人パーティー登録だ!
俺が保証人になる」
こうして、風の召喚少年団は正式にフォーチュン・ソード冒険者ギルドにH級で入会することになった。
5人分のH級ギルドカードがその場で発行され、カードの表面には「Wind Summon Boys Party」と刻印された。
マイケルが満足げに頷いた。
「よし、じゃあ早速俺のオススメの武器・防具屋に連れてってやる。
大通りから一本裏に入った、知る人ぞ知る名店だ。
ドワーフの親父がやってる店で、子供の財布にも優しいぞ」
一行はマイケルに続いてギルドを出た。
クレスはもう興奮で顔を真っ赤にし、
カイルはグランマントを翻しながら、
エレナはカイルのマントの端をそっと握っていた。
知る人ぞ知る名店「バルドゥークの鍛冶工房」へと向かう一行の足取りは、
朝のウィンドリーフの街に軽やかに響いていた。
勇者の剣(模造剣・ダガー)
品質:アンコモン級(高品質 C-)
数ヶ月前、村外れの街道で狼に襲われていた行商人を助けたお礼に貰った品。
実は有名ドワーフ鍛冶師「バルドゥーク・アイアンフィスト」が若かりし頃、金に困って「伝説の勇者の剣」を模して作ったダガー。
行商人は武器に全く詳しくなく、「ただの安物だろ」と思ってカイルにポイッと渡した。
実際の性能:
刃に微かな魔力の輝きがあり、切れ味は本物の剣並み。
軽量で12歳のカイルでも扱いやすい。
隠し効果(まだカイルは気づいていない):装備者に「小さな勇気」を与え、恐怖耐性+5%(村の子供が持つには破格のアンコモン級逸品)。




