第二話 「風の召喚少年団」結成5
スケルトン退治から2日後。
リーフェの里は穏やかな午後を迎えていた。
フォーチュン・ソード リーフェ支所
5人は報酬を受け取った直後、村の小さな雑貨屋に寄っていた。
マーサおばちゃんが笑顔で手渡した報酬は、金貨4枚+ギルドポイント4P。
5人で山分けすると1人あたり金貨8枚弱になった。
カイルは嬉しそうに財布を握りしめながら言った。
「これで……お菓子も買えるし、簡単な装備も少し揃えられるね!」
みんなで相談して買ったものは次の通り。
蜂蜜入りクッキー(5人で山分け)……シルフェリアの里で食べた味を思い出して大喜び。
干し果物(ルビィとファングのおやつ用)……ファングが尻尾をブンブン振って大興奮。
カイル……新しい革紐(おなべのフタ盾の補強用)と、ルビィ用の小さなリボン。
クレス……木剣の代わりに安い樫の杖。
チェスター……矢筒の予備矢10本。
アネット……小さな聖印の磨き布。
エレナ……風の香りのするハンカチ。
買い物を終え、村の広場にある大きな木の根元でみんなでお菓子を食べながら休憩していると——
クレスがポツリと呟いた。
「……俺の木剣、完全に折れちゃったよ。
父さんに大目玉食らった……『剣は自分でなんとかしろ』って怒鳴られた」
クレスはため息をつき、折れた木剣の破片をポケットから取り出した。
チェスターが冷静に言う。
「ウィンドリーフの街に行けば、ちゃんとした木剣か革の剣帯が買えると思うけど……日帰りは無理だよな。馬車で半日かかるし」
アネットが心配そうにクッキーを頰張りながら、
「でも、みんなで行けたら楽しいよね……」
エレナも小さく頷く。
「カイルお兄ちゃんも……一緒に来てくれたら嬉しい……」
カイルはルビィを肩に乗せながら、
「僕も行きたい! でも母さんが絶対反対するだろうな……」
その時、聞き覚えのある馬車の音が近づいてきた。
「よお、風の召喚少年団! また元気そうだな!」
村に定期的に来る行商人——ロイ・ワゴン(45歳・男性)が、荷台いっぱいに商品を積んだ馬車を止めた。
いつも優しくて、子供たちに安くお菓子を分けてくれる、フォーチュンらしい陽気なおじさんだ。
ロイは馬車から降りて、干し果物を一つずつ配りながら言った。
「どうした? みんな深刻な顔してるぞ。
……あ、クレス坊主。木剣折れたんだって? 父さんに怒られたんだろ?」
クレスが驚いて顔を上げた。
「ロイさん、なんで知ってるんですか!?」
ロイは豪快に笑った。
「村の噂は早いんだよ。で、ウィンドリーフの街に剣を買いに行きたいんだろ?
でも日帰りは無理だから悩んでる……ってところか?」
みんながこくりと頷く。
ロイは髭を撫でながら、にやりと笑った。
「ふむ……じゃあ、ちょうどいい話がある。
俺は明後日、ウィンドリーフの街に商品を運ぶ予定なんだ。
護衛依頼を出すから、ほぼ無料で乗せてやるよ。
ただし条件が二つ。
① 親の許可を取ること。
② 大人が最低1名は同行すること。
帰りは別の行商人(知り合いのサラおばさん)を紹介してやるから、そっちの馬車で戻ればいい」
カイルの目が一瞬で輝いた。
「ほ、本当ですか!? ロイさん!」
ロイは肩をすくめて笑った。
「ただし、無茶はするなよ? お前らまだ子供だ。
さあ、親御さんに許可を取ってこい。
俺は明後日の朝、ここで待ってるからな!」
一行は大急ぎで各家庭に許可を取りに行った。
クレス……父アレス・アルベイン(道場主)は「自分で剣を買う気があるなら行け」と渋々許可。
チェスター……猟師の父は「斥候の修行になる」とあっさりOK。
エレナ……人間の父親は「勝手に行け」と完全に放置。母親はすでに他界している。
カイル……母リリアが大反対。「絶対にダメ! 危ないわよ!」
しかし姉ミラ(18歳)が「私も一緒に付いて行くから!」と説得。
さらに、ミラの彼氏で教会の新任神官・エリオス・ベイン(司祭の部下)が「私も同行します」と申し出てくれたため、リリアはしぶしぶ賛成。
ただし条件は「二泊三日まで」。実質、街にいられるのは1日だけだった。
アネット……父(村の司祭)は「部下であるエリオス神官が同行するなら」と許可を出した。
全員の許可が取れた瞬間、5人は広場で小さくガッツポーズをした。
明後日・朝
ロイ・ワゴンの馬車が村の入り口に停まっていた。
荷台には商品がぎっしり。子供たちは荷物の間に座り、ミラとエリオス神官が大人として同行する。
ロイが馬を軽く叩いて笑った。
「よし、全員揃ったな!
それじゃあ、ウィンドリーフの街へ出発だ!
冒険者ごっこ少年団、行ってきな!」
馬車がガラガラと動き出す。
カイルはルビィを肩に乗せ、ファングを馬車の横に走らせながら、
隣に座るエレナに小さく囁いた。
「……エレナ、街で何買う?
僕、勇者の剣に似合う鞘が欲しいな」
エレナは風に銀髪をなびかせ、照れくさそうに微笑んだ。
「……カイルお兄ちゃんと一緒なら、なんでも楽しいよ」
馬車は朝陽を浴びながら、ウィンドリーフの街へと走り出した。




