第二話 「風の召喚少年団」結成4
スケルトン退治
翌日の午後、フォーチュン・ソード リーフェ支所はいつもより少し緊張した空気に包まれていた。
受付のマーサおばちゃんが、掲示板から一枚の依頼書を外しながら言った。
「今日のクエストは『村近くの洞窟に自然発生したスケルトン退治』よ。
洞窟は二層しかない小さなダンジョンだけど、気を付けてね。いないとは思うけどスケルトンウォリアーがいたらあなた達ではかなわないからすぐに逃げてね。
報酬は金貨8枚+ギルドポイント8P+幸運判定1回。
……本当にみんなで行くの? まだ子供なんだから、無理はしないでね?」
クレスが木剣を握りしめ、胸を張った。
「大丈夫です! 昨日キラーアントも勝てたんだから、スケルトンくらい余裕ですよ!」
チェスターが冷静に頷く。
「情報通りならH~G級中心のはずだ。俺が斥候やるよ」
アネットが聖印を胸に当てて微笑んだ。
「神の名の下、みんなを守ります」
エレナは少し不安げにカイルの袖を引いたが、カイルは目を輝かせて答えた。
「僕も行きます! ファングとルビィがいれば怖くないよ!」
マーサおばちゃんはため息をつきながらも、仮カードにスタンプを押した。
「わかったわ……でも、危なくなったらすぐに逃げて! いい?」
「「「「「はい!」」」」」
5人は意気揚々と洞窟へと向かった。
洞窟入り口は村から徒歩20分ほどの森の奥。
湿った空気と苔の匂いが漂う、小さな洞窟だった。
「よし、ダンジョン攻略開始だ!」
クレスが先頭に立ち、みんなで慎重に進む。
第一層の広間に着くと、すぐにスケルトン3体がガチャガチャと骨を鳴らして現れた。
「来い! 俺が前衛!」
クレスが木剣を振り回し、チェスターの矢が頭蓋骨を正確に撃ち抜く。
カイルがファングを突撃させ、エレナの風の刃が骨を削り、アネットの小回復がみんなを支える。
「ギギャ……ガララ……!」
あっという間に3体を粉砕。
カイルが息を弾ませながら笑った。
「やった! 簡単だったね! 先程のキラーアントより全然弱いよ!」
クレスが拳を握る。
「この調子なら奥も余裕だ! 行こうぜ!」
第二層の奥に進むと——
暗い通路の先に、10体以上のスケルトンが蠢いていた。
骨の足音が洞窟に響き渡り、奥の方には明らかに大きい影——スケルトンウォリアー(F〈低級〉)も見える。
チェスターが即座に手を上げて止めた。
「……待て。10体以上いる。
しかも奥にウォリアーもいる。これは危険だ。引き返すべきだ」
クレスが木剣を構え直し、熱く言い返した。
「勝てるよ! さっきの3体も一瞬で倒せたんだ!
俺が前衛で抑えれば、みんなで一気に殲滅できる!」
アネットが聖印を強く握り、祈るように言った。
「神の名の下……この不浄な亡者を殲滅しましょう。みんなで力を合わせれば、きっと……!」
カイルも昨日の勝利の高揚が残っていて、興奮気味に頷いた。
「僕も勝てると思う! ルビィの回復があれば大丈夫だよ!
ファングも張り切ってる!」
エレナだけが不安げにシルフの小さな精霊を呼び出し、耳を傾けた。
「……シルフが言ってる。『危険……たくさん……逃げて』って……
カイルお兄ちゃん、私も……怖いよ……」
その瞬間——
ガシャン!
背後からスケルトンウォリアー1体が奇襲をかけてきた!
錆びた剣がアネットに向かって振り下ろされる。
「アネット! 危ない!」
アネットが咄嗟に避けようとした瞬間、クレスが彼女を突き飛ばして庇った。
「うわっ!?」
木剣で受け止めたが、衝撃でクレスが吹き飛び、壁に叩きつけられる。
肩から血が流れ、木剣がへし折れた。
「クレス!!」
カイルが慌てて叫んだ。
「ルビィ、召喚! 回復の光をクレスに!」
ルビィが宝石を輝かせて回復の光を放つが、子供のMPとルビィの力では回復量が完全に追いつかない。
クレスが苦しげに息を荒げる。
チェスターが即座に判断した。
「撤退だ! これ以上は無理! みんな、逃げるぞ!」
エレナがシルフに必死に尋ね、風の精霊が薄く光の道を示す。
「こっち……! シルフが逃げ道を教えてくれる!」
ファングが殿(最後尾)を務め、低く唸りながらスケルトンたちを威嚇する。
「ファング、頑張れ!」
一行は必死に走った。
後ろからスケルトンたちの足音が迫る中、エレナの風が少しだけ足を速め、
チェスターが煙玉を1個投げて視界を乱し、
なんとか洞窟の外へ転がるように脱出できた。
外に出た瞬間、みんなが地面にへたり込んだ。
アネットが震える手でクレスに神聖魔法をかけ、気功も合わせて傷を癒していく。
「クレス……ごめんね、私のせいで……」
クレスは苦笑しながら立ち上がり、折れた木剣の破片を握った。
「いや……俺が無茶したんだ。みんな、ごめん……」
カイルはルビィを肩に乗せ、ファングの頭を撫でながら息を整えた。
「……僕も、勝てるって高揚しちゃって……反省だよ」
チェスターが冷静にまとめていた。
「スケルトンは数が多いと連携が怖い。次からはちゃんと引き返す判断をしよう」
エレナが小さく頷いた。
「シルフも……みんなを守ってくれてありがとう……」
ギルド支所に戻ると、マーサおばちゃんが一行をみると顔を青くした。
「まあ! みんな大丈夫?……!
えっ、スケルトンウォリアーが出たの、分かったすぐに冒険者パーティーを派遣するわ。」
「でも無事に戻ってこれて良かったわ。
……それで、倒せた数は?」
カイルが申し訳なさそうに答えた。
「逃げるときに2体……それと最初に3体……合計5体です……」
おばちゃんは優しく微笑んだ。
「よく頑張ったわ。
5体分はちゃんと報酬を出すわね。金貨4枚+ギルドポイント4P。
次は絶対に無理しないでね?」
報酬を受け取り、5人は支所の外の木陰で反省会を開いた。
クレスが頭を下げた。
「俺がリーダーなのに……みんなを危ない目に遭わせた。本当にごめん」
カイルが笑って言った。
「でも、みんなで協力して逃げ切れたんだよ。
これも冒険者の勉強だよね。次はもっと慎重にやろう!」
チェスターが静かに頷く。
「そうだな。情報収集をしっかりしてから挑む」
アネットがみんなの手を取った。
「神様も、きっとみんなの勇気を認めてくださったわ」
エレナがカイルの袖をそっと握り、
「……カイルお兄ちゃん、みんな……大好き」
ルビィが「ルビィ~♪」と宝石を優しく光らせ、
ファングがみんなの足元で尻尾を振った。
夕陽が洞窟のあった森を赤く染めていた。




