第四話 緊急依頼!オーガを倒せ!7
勝利の咆哮
カイルは村長の屋敷の屋根に座り、目を閉じて集中していた。
スカーレットを通じて、洞窟最奥の戦場が鮮明に映し出されていた。
そこはまさに地獄だった。
巨大なオーガロードが咆哮を上げ、岩を砕きながら暴れ回る。
その巨体に、マイケル・ロングのパーティーが必死に食らいつき、
ピピン・クロイスが双剣を閃かせて急所を狙い、
アレス・アルベインが剣技でオーガロードの攻撃をいなしながら、
確実に、着実にその体力を削っていた。
カイルは息を詰めて見守った。
(アレス先生……すごい……!
あの動き、全部読んでる……!)
アレスの剣は、まるで舞うようにオーガロードの巨腕をかわし、的確に腱や関節を切り裂いていく。
ピピンの双剣は光のようで、オーガロードの目や喉を何度も掠めた。
マイケルたちは周囲の普通のオーガを次々と倒し、ロードを孤立させていた。
しかし——
オーガロードが突然、深く息を吸い込んだ。
「グオオオオオオオオッ!!!」
凄まじい咆哮が洞窟全体を震わせた。
その瞬間、スカーレットとの視界共有が、
まるでガラスが砕けるように弾け飛んだ。
カイルの意識が真っ白になった。
「う……あ……!」
体がくの字に折れ、屋根から転げ落ちそうになるのを、近くにいた衛兵が慌てて抱き止めた。
カイルはそのまま、気を失った。
目が覚めたとき、カイルは村長の屋敷のベッドの上にいた。
左手に、温かい感触があった。
エレナが、カイルの手を両手で包むように握りしめ、
心配そうに顔を覗き込んでいた。
「……カイルお兄ちゃん……!
大丈夫? 急に倒れて……すごく怖かった……」
エレナの声が震えていた。
左手のエメラルド・ウィンドリングが、淡く緑色に光っている。
カイルはぼんやりと微笑み、弱々しく手を握り返した。
「……ごめん……
オーガロードの咆哮が……スカーレットに直撃したみたい……
でも、みんな……戦ってる……」
エレナは涙を浮かべながら、首を横に振った。
「もう……無理しないで……
私、ずっとここにいるから……」
それから数刻後——
里の北門に、大きな雄叫びが上がった。
「勝ったぞおおおお!!!」
マイケル・ロングを先頭に、突入部隊が凱旋してきた。
マイケルの大斧には血が滴り、
ピピンの双剣は赤く染まり、
アレス・アルベインの剣は静かに収められていた。
彼らが担いできたのは——
巨大なオーガロードの首だった。
里中に勝利の歓声が響き渡った。
人々が泣き、抱き合い、
子供たちは「勝った! 勝った!」と叫びながら走り回った。
カイルはベッドから体を起こし、
窓からその光景を見つめていた。
エレナがそっと寄り添い、
カイルの肩に頭を預けた。
「……終わったね……」
カイルは小さく頷き、
エレナの手を握り返した。
「うん……みんな、無事でよかった……」
里の空に、
ようやく平穏の光が戻ってきた。
オーガロード討伐——
風の召喚少年団が守った里は、
ようやく長い夜から解放された。
第四話 終わり




