第四話 緊急依頼!オーガを倒せ!5
里の軋み
オーガ出現からさらに数日が経過した。
里は依然としてオーガの本体を発見できず、緊張と疲労が蓄積していた。
食料の配給制限、夜間の外出禁止、負傷者の増加——
里全体に重苦しい空気が漂い、些細なことで人々の諍いが起きるようになっていた。
そんなある午後——
村の広場で、いつもの三人組がエレナに絡んでいた。
長老の孫・バルタ・グランド(14歳)を筆頭に、ディルクとジェイの三人だ。
バルタがエレナの肩を突き飛ばしながら、苛立った声で叫んだ。
「全部お前のせいだよ、ハーフリング!
お前みたいな中途半端なのが里にいるから、オーガが来てるんだ!
早くシルフェリアに帰れよ!」
ディルクとジェイも同調して囃し立てる。
「そうだよ! ハーフリングの疫病神!」
「里が荒らされてるのも、お前の親父が飲んだくれだからだろ!」
エレナは唇を強く噛み、うつむいたまま耐えていた。
左手の指輪をぎゅっと握りしめ、涙を堪えている。
そこへクレスが駆けつけた。
「お前達、エレナに何言ってるんだ!」
クレスが三人組の前に立ちはだかると、バルタは嘲るように笑った。
「へっ、なんだよ。
レッサーオーガに一発で吹き飛ばされた情けない弱虫が。
お前みたいなのがリーダーだから、少年団も役立たずなんだよ!」
その言葉に、クレスはカッとなった。
「てめえ……!」
クレスがバルタに殴りかかろうとした瞬間、周りにいた大人たちが慌てて止めに入った。
「やめろ、クレス!」
「バルタも、よせ!」
騒ぎはそれ以上にはならなかったが、
里のストレスと苛立ちを象徴するような、嫌な一幕だった。
その夜、探索から戻ってきた父アレスは、クレスを道場に呼び出した。
アレスは厳しい顔で言った。
「聞いたぞ。バルタと揉めたそうだな。
……お前は今、リーダーとして里を守る立場にある。感情に任せて暴れるんじゃない」
クレスは唇を噛み、うつむいた。
「……すみません」
アレスはため息をつき、
「自宅謹慎だ。自分の未熟さをよく考えろ」
同じ頃、村長の屋敷ではカイルがマイケル・ロングと向かい合っていた。
カイルは少し緊張しながら言った。
「マイケルさん……
指定された場所を探索するだけでなく、
僕、探したい場所があるんです」
マイケルが眉を上げた。
「ほう? どこだ?」
カイルは地図を指差しながら答えた。
「里の子供たちにとっての……秘密の隠れ家みたいな小さな洞窟です。
昔、みんなで遊んでいた場所で、大人たちはあまり知らないと思います。
オーガが賢いなら、そういう場所に潜んでいるかもしれない……」
マイケルは腕を組んで考え、
やがて頷いた。
「今のままじゃ埒があかない。
地元の子供ならではの視点だ。
いいだろう。許可する。
ただし、絶対に一人では動くなよ」
カイルは大きく頷き、右手を掲げた。
「スカーレット……来い!」
赤い羽が夜空に舞い上がり、
新たな索敵が始まった。
里の緊張は、ますます高まっていく——。




