第三話 始動!風の召喚少年団!15
勇者と英雄
ある秋の穏やかな午後、リーフェの里のアルベイン道場裏で、クレスとカイルは木剣を構えて向かい合っていた。
クレスは13歳とは思えない堂々とした構えで、シルバー・ストライクを腰に差したまま木剣を軽く振った。
「カイル、今日は本気で来いよ!」
カイルは12歳の体で樫の杖を握り、グランマントを翻しながら笑った。
「わかった! でも、僕、召喚士だから前衛はちょっと苦手だけど……」
二人は軽く打ち合いながら、汗を飛ばした。
少し離れた木陰では、チェスターが弓の手入れをしながら静かに見守り、アネットが聖印を胸に当てて二人の動きを祈るように見つめていた。
エレナはルークと一緒に木の根元で読み書きの勉強をしながら、時々チラチラとカイルの方を見ていた。
木剣がぶつかる音が響く中、クレスがふと動きを止めた。
「なあ、カイル。お前って、俺とはちょっと違うよな」
カイルが息を整えながら首を傾げた。
「え、どこが?」
クレスは木剣を下ろし、照れくさそうに笑った。
「俺は……目の前の敵をぶっ飛ばして、みんなを守りたいだけなんだ。
熱くなって前に出ちゃうタイプだろ?
でもお前は、いつもみんなのことを考えて、後ろから支えてくれる。
召喚獣を上手に使って、みんなが安心できるように……
それって、俺にはない『英雄』みたいな感じがするんだよ」
カイルは少し驚いた顔をして、
「僕が英雄? そんな大げさな……
僕はただ、クレスが前に出てくれるから、後ろで頑張れるだけだよ。
クレスがいなかったら、僕なんてとっくに逃げちゃってる」
クレスはふっと笑い、
「それがいいんだよ。
俺が勇者で、お前が英雄……
なんか、いいコンビだと思わないか?」
カイルも笑顔になった。
「うん。僕もそう思う。
クレスが勇者でいてくれるから、僕は英雄でいられる気がする、なんてね」
そこへエレナが蜂蜜菓子を持って走ってきた。
「カイルお兄ちゃん、クレスお兄ちゃん、おやつです!」
アネットが優しく紅茶を注ぎ、チェスターが木陰から「休憩しろ」と声をかけた。
クレスとカイルは顔を見合わせて、同時に笑った。
クレス「よし、英雄。次も一緒に頑張ろうぜ」
カイル「了解、勇者」
二人はニヤリと笑い、拳を軽く合わせ、
秋の柔らかな陽射しの中で、
まだ少年のままの勇者と英雄は、
ただ仲良く菓子を頰張っていた。




