顔の怖いネズミ
初めての戦闘だ、大きく開かれた口に鋭い牙、恐ろしい。
だが敵意剥き出しに襲い掛かって来てくれるから返って良かった。
相手になる魔物は一メートルは優にある、ネズミだ。顔が物凄く不細工だ、そして怖すぎる。何をどうしたらこんなネズミになるのか……
きっとこれも呪詛の影響なんだろう。
鋭い手足の爪は鋭く俺たちに襲いかかってくる。
大きい体に対して素早い緩急のある動きと小回りが利くようで、気が抜けない。
確実に避けたはずの攻撃が掠るのだ、
何かと思うと振り上げた爪の方向を振り下ろしている途中で調整ているようなのだ、
途中でカーブする爪、こわっ!
顔の怖いネズミ、賢い。どう見ても理性は無いようだが、本能で分かるのだろうか?
俺は剣を使って近距離で直接魔物と戦うよりも、少し距離をとって魔法で動きを鈍らせたり一緒に戦う人に魔法で援護したりが殆どだ。
幸い使う魔法に対して消費する魔力は少ない様なのでまだまだ戦える、そして一緒に戦う人を少しでも長く支えられる。
フォーンは自分に襲い掛かってくるネズミ達を次々に蹴散らしていく、
うさぎらしい足を使った攻撃が主体のようだ、
ダンっと繰り出される足技は惚れ惚れしてしまいそうだ、飛び跳ねるふわふわの毛玉。
ムフフ。
それに一度に数匹のネズミに襲われて余裕が無いオオカミさんのフォローも熟す、
自分の方に上手く注意を向けて引き受けたり、オオカミさんが戦いやすいようにしているようだ。
やっぱりフォーンは強いなぁ〜
そしてかわいい、
普段のまったりした動きと違ってとても俊敏な動きだ、
思わずフォーンの動きに見入ってしまう、
危ない危ない、今は戦闘中なのだ、集中力が切れてきたのだろうか?
気を引き締めねば!
大分襲ってくるネズミの数が減ってきた。減ったと言ってもまだまだ数はいるが、始めた時よりは大分減ったと言えるだろう、
空はあと少しで日が落ちそうだ。
半日近く戦っていたようだ。
そりゃ疲れるわなぁ
体がギシギシしている、ふぅうう
どうやら今日はここまでにするようだ、
また明日、出てくるネズミの数によって明後日も続けるそうだが…
ふぅ、こりゃ大変だ……
今回は数が増えていたとはいえそもそもあのネズミは強い。
そして怖い。顔もだが、勢いと容赦なく四方から襲ってくる。呪詛の影響で凶暴化しているせいなのか、少しの傷なんて全くものともしないのだ。
それに怯んだらこちらが喰われる、とヒシヒシと感じた。物凄く緊張した状態で戦い続けるのだ、
それと代々戦い続けていたとは……
この里の人達は……
「ヒサノリ〜!ボクあんなに戦ったの久しぶりだよ〜!たまには体を動かすのもいいね!」
「あぁ、そうだな、」
その日は里の方のご好意で泊めてもらうことになった、
里の人々が作ってくれたスープは木の実や薬草がふんだんに使われていてとても美味しかった。
薬草それぞれに疲労回復や精神安定の作用なんかがあるらしい。
これで明日も頑張れますね、と、里の女性に言われて思わず顔が引き攣った、
そうだよ、明日も参加する気だったけど、また怖い顔のネズミに突進されるってことだな………。
うん、考えるのは辞めよう。今こんなことを考えていたら夢に出て来そうだ。夢の中でも顔の怖いネズミに追い回されるなんて……絶対に御免だ。
ふうぅ、フォーンを眺めて心を落ち着かせる。
うむ、うちのフォーンは今日もかわいい。
そしてふわふわだ!
翌日も昨日と同じようにひたすら顔の怖いネズミ狩りだ。
体力よりも精神的にキツイ。
まるで悪夢のような光景だ。
おっわれ〜おっわれ〜おっわっれ〜
こわぁい おかおのねっずみっさん
あしたはあわずにすっみまっすかっ?
はぁ、俺も疲れてるな。
ネズミに聞いてどうすんだよ、
初めは恐怖と襲ってくる相手とはいえ命を奪う事には抵抗があった、
だがふと、日本で薄切りになって売っていた肉も俺の大好きなコンビニの唐揚げも、俺たちに代わって他の誰かが………
そう思うとその人たちと、お肉になっていた元の動物たちにきちんと感謝して食べていただろうか?と疑問が浮かぶ。
だが俺はこの世界にいる。
これからはこの世界、そして今までの分、前の世界の人達に感謝して食べよう。
また思考がそれていったがそれが悪いことだとは思わない。そういった心を失ったらロクな人間にならないだろう。
ふぅ、、、
結局今日も日が暮れるまで顔の怖いネズミ達と戦い続けた。
もう無理、、、、
これ以上出てくる様子がないそうなので今日で終わりだ
今日も里に泊めてもらい、明日は里でゆっくりさせてもらうことになった。
倒した顔の怖いネズミ達は素材を売れるらしいがこの里では不要らしくいつも燃やしていたそうなので俺が貰い受けることになった。
里の人達としても燃やす手間と匂い、煙が無いからありがたいと喜んでくれた。
なので今、俺のアイテムボックスの「顔の怖いネズミ達」というホルダーには二日間で倒した顔の怖いネズミが沢山詰まっている、
辞書スキルが教えてくれた方法で街に戻ったら売ってみようと思う、できるだけ早く。
そう、できるだけ早くだ。




