60.霊獣玄武③
駄々を捏ねる少女のように喚くチューリットちゃんを地面に降ろした。
神器『ファスガン』の能力で半自動攻撃的トランスモードになっている、だから大丈夫、私に構わないで、というよく分からない言い分をとりあえず信用することにした。
『ファスガン』から濃密でいて強大な力がオレの全身にも作用していて、普段なら絶対に出来ないような圧倒的な力業が出来そうだからな。
オレの背中に乗せて一緒に戦うよりも、二人で分担してみるのもいいかもしるない。
チューリットちゃんを守りながら霊獣玄武の相手も可能なくらいの神聖で恐いくらいの力がオレの中に渦巻いているし。
だとしても相手は数段格上の魔獣だから、自惚れもいいところかもしれない、だけど!
だけど、オレは自分の力がどこまで通用するか試して見たかったんだからっ!
玄武の胴回りをぐるぐる動き回りながら三匹の蛇が口を一斉に開いてレーザー砲みたいな凶悪な水を吐き出した。
それを迎え討って近付き、避け様に両手のねこパンチを放っていく。
蛇は切り裂かれているけれど亀の方はというとまるで効いていない。それも表面的な傷だけだ。
それに何か違う。せっかく力を得たのだ。もっと思う存分に行使しないと損だ。
もっと、なんかこういうふうに……
オレは頭の中の深い奥底に眠っている記憶をほじくり回して探した。強力な、霊獣玄武にも通用しそうな技を。
うん、こんなのどうだ!
頭の中に膨らんだイメージを膨大な魔力を消費しながら、そのための攻撃のシミュレーションをして構成していく。
すると、オレを中心に霊獣玄武までを包む程のドーム状の力場が拡がっていった。
今、この円の中はオレの創造領域だ。
オレは想像のままに創造する。
イノセントリフレイン!
玄武を無数の光線が繰り返し襲っていく。拡がった円の壁に当たって反射して何度も何度も光が襲う。
まだまだ、もっともっと。
両前足をぶんぶん振る度に生み出される光の爪が敵を攻撃する技だけど。
しまった。読みの甘さに気付いた。
オレは今二本足で立ちながら両前足を動かしてるんだけど、この体勢、バランス取るのが結構しんどいぞ。
しかも蛇だけ裂かれて亀の方は平然としてる。玄武の防御力を舐めていた。
これならどうだ!
オレは前足に集中した魔力を、万歳する格好から地面へとべたん、と振り落とした。
ファットキャットスタンプ!
小間切れになった蛇ごと強く踏んづけた格好だけど、どうだ? 効いてるかな?
玄武は防御力が高いというか、やっぱりチューリットちゃん(戦斧)が教えてくれたように先ずは超硬質のあの甲羅をなんとかしないとロクなダメージを与えられないようだな。
「力の無駄遣いだって怒ってるよ」
オレの背後で戦斧を振り回しているチューリットちゃんが苦言を呈してきた。言ってるのは神器かな?
借り物の力を使って効果の少ない攻撃を繰り返して不必要にその力を使ってるんだから、確かにそうかもしれないね。
でもなんか楽しいし、それに玄武の注意は上手く引けているよね。
「んん。あともう少し」
無視しないでよ。まあいいや。
了解だ、もういっちょ気張ってやるか。
玄武の方も何か仕掛けてくる様子だ。みるみるうちにその輪郭がぼやけ霧のような細かい粒に覆われていく。
何する気だ、まさか隠れるつもりだろうか。霧はその量を増していきオレ達の方まで届きそうだ。
でも玄武の姿は見えなくなっても、巨大な魔力でどこにいるか一目瞭然だ。というか玄武は移動していない。
サアアァァァ……
もやは霧雨のような音になっていく。細かい水滴が全身を包み込んでいく。
次の瞬間、微細な水の一粒一粒が破裂した。
「グアアァッ」
「きゃああっ」
吹き飛びながら転がりながらも、たまらず初めての防御結界を張ることになんとか成功した。けれど、オレもチューリットちゃんも血まみれだ。
ごめん、怪我させて。くそ、この野郎、やってくれたな玄武。
オレは強くイメージを膨らませた。
エクスプロードクロウ!
魔力を存分に乗せ伸ばした爪を濃い霧の向こうに潜む玄武へと振り抜いた。爪先から放射線状に爆風とともに猛威の爪が玄武を襲った。
ギュイイイィィィィィ
おっと、効いていそうな悲鳴だ。いや、玄武の雄叫びかな。
苦し気に怒りに満ちた大音声をあげる玄武にニヤニヤしていると、割れた霧の道をチューリットちゃんが戦斧を大上段に構えたまま走っていった。
「お返しだから! セイントメテオインパクト!」
霊獣玄武の甲羅に向けて神器『ファスガン』の巨大なハンマーが降り下ろされた。




