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59.霊獣玄武②

 ボボボボボォッ!


 地中から閃光のような大砲が幾筋も夜空に伸びて飛んでいった。これ、ガルビナクさんがやられたやつだ。


 剣を持ったドワーフの一人がその直撃を受けて弾け飛んだ。甲冑で重装備していたから死んではいないようだけど、受け身も取れずに地面に落ちたぞ、大丈夫かな。他は上手く避けたり軽傷程度で済んでるけれど。


 それにしても、あの大砲は水だったんだな。物凄い威力だよ。

 女のドワーフの一人が懐抱しようとしているけど、鉄製の分厚い甲冑がべちゃんこに押し潰されている。


 まだ霊獣玄武が地上に姿を見せていないことからもチューリットちゃんも納得してくれたようなので、オレ達は岩影に隠れたままドワーフの戦士達対玄武の戦いを観察することにした。


 ただの傍観者でいたら巻き添えで死ぬかもしれない。だからしっかり警戒は怠らずにだ。


 必死に立ち回るドワーフの戦士達をつまらなさそうな顔で眺めながらチューリットちゃんが疑問を口にする。


「……あの人達、このまま戦うのかな」


 おそらく、地中深くに潜んだままの玄武には地上で攻撃を繰り返しても無意味だ。手の届かない場所で騒いでいるのと同義なのだ。

たぶん先程の地下へ攻撃を放ったゴーデスとかいう大剣持ちのドワーフでないと。


 ドワーフ達は蛇のようにうねうねと形を為した太い水の鞭と懸命に戦闘を繰り広げていた。


 やっぱり無意味なんだろうな、あれに攻撃しても。

切り裂いても叩き壊しても結局水だからまた元通りになってしまう。水の為に透明でしかも視界の悪い夜では見えにくい上に、強く固形化している様で身体を打たれたり巻き付かれては身を捻られ顔を覆っては呼吸を出来なくさせている。厄介な攻撃だ。


 膝まで水に浸かりながらもバシャバシャと攻撃,防御、回避を行い続けてドワーフの戦士達は一人、また一人と戦線を離脱していった。残りも肩で息をする者達が多い。


 気付けばまともに動けそうなドワーフの数は三人にまで減っていた。最初に八人いたから五人が戦闘不能になったようだ。一人はガンク達の見張りに残して来たのかな。あのドラウンガものびて岩の上でグロッキー状態になっている。


 対して玄武の方はまだその姿すら見せていない。頑張れドワーフの戦士達!


 ゴーデスが槍使いに叫ぶ。


「このままではジリ貧のまま全滅だ。雷撃槍を使ってくれ!」

「ふぅ、了解しました。岩の上に上って下さいね」


 お、なんかやるみたいだ。指示された槍使いが槍の柄の部分を数回擦ると、先端の穂先から紫電が迸っていき、それは次第に夜の闇の中で眩しい光を生み出しバチバチと大きな音を立て始めた。


 ちょっとヤバそうだ。

 オレは浸かっていた尻尾を水中から引き上げた。


「そらぁっ! 雷撃槍!」


 槍使いがピョンと岩の上から飛び下り地面に槍を突き刺した。


 一気に槍から強力な電気が水を伝い流れ、辺り一帯を覆う水一面に凄まじい放電がされたようだ。


 おっ!


 地面がもりもりと膨れ上がっていく。魔力の塊が上昇してくるぞ。


 額の汗を拭いゴーデスが口元に微笑みを浮かべた。


「好機だ。

 機先を制す。ガブスリン、地を抉れ」

「ふぅふぅ。御意」


 ゴーデスが続けて「レームス、待避しろ」と命じその場から下がった。


 石突の上でバランスを取っていたレームスと呼ばれた槍使いが岩の上へ戻っていった。

 ドワーフ達の中で一番の巨漢のガブスリンと呼ばれた男が、その体躯に相応しい巨大な鉄槌を担ぎ上げた。

 波打つ地面の中央に向かって「むうん」と、強い魔力の波紋とともにその破壊的な鉄槌を大地へ打ち叩いた。


 辺り一帯に拡がるような轟音が響き渡り、大地が激震した。


 岩も土も水もその鉄槌が打った全てが放射状に飛散した。


「う、うぅん……、冷たい」


 背中から突然声がした、と思ったらそういえばチューリットちゃんを背負ってたな。彼女は寝ていたみたいだけど。

 真夜中だから眠たくもなるよね。


ギュイイイイイィィィィ


 頭の中に鳴り渡る甲高い声。

 立ち眩みそうになる身体を制して岩から顔を出すと、ガブスリンと呼ばれたゴブリンをその口にくわえた大きな亀が、地表が抉れて大きなクレーターのようになった中央の位置にその姿を露にしていた。

亀と一緒に二匹の蛇が甲羅に巻き付きながら、凶悪な口から鮮血のような色の舌をチロチロと出し引きしている。


「あ、やっと出た」


 トイレに籠っていたお父さんが用を足し終わるのを待ってたような言い方やめてくれないかな。緊張感と臨場感が……


 グチャリ、という音に神経を霊獣玄武へ引き戻す。


 玄武のひと噛みで「ひぶぇ」と最後の一声を発して甲冑に身を包んだ巨漢のガブスリンは絶命した。そして飲み込まれていった。


「おのれ、よくもガブスリンを……」

「ゴーデス、落ち着いて。慎重にいきましょう」


 レームスの声を無視してゴーデスが大剣を上段に構えた。


「コオォ、大地燦衝斬!」


 ゴーデスが光を纏い玄武に飛び掛かった。玄武は動かない。その目だけは何かを探すように細かく動いているようだ。


 ゴーデスの纏った光の全てが刀身に移り強力無比な魔力を撒き散らしながら玄武を斬り着けた。

 だけれどおそらくゴーデス渾身のその一撃は、ちょうど甲羅に辺り甲羅の上にこびり付いた岩肌をパラパラと取り除いたくらいな程度にしかならなかった。

 というより露になった甲羅がまるでダイヤモンドのように光輝きぼこぼこしているんだけれど。


 絶句しているゴーデスを蛇が襲う。


「ちぃ、飛弾槍!」


 三匹の蛇の思うままにその身を蹂躙されゴーデスはもはやボロボロだ。槍使いのレームスが助けていなければ死んでいたよね。


 チューリットちゃんがオレの頭をぐりぐりと手で押した。


「ね、もうそろそろいいでしょ。観察は」


 あ、ごめん。そういうの、言った方が良かったのか。

 そろそろ行こうか。オレ達の出番だ。









 一万PV達成しました。ありがとうございます。これからも精進します。

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