53.変わり果てた風景
ガハッ、ゲヘッ、………ペッペッ、……ペッ!
あー死ぬかと思ったぞ。マズマ師匠に水泳の特訓受けてなかったら死んでたな。【物質操作】で潜水が出来たお陰だ。命拾いしたよ。
疲れたな、それに眠い。でも早くみんなを助けなきゃな。
おいナノ、起きてくれ。
……オレ、ねこだけど人工呼吸していいかな。って出来ないよな。
オレはナノの腹の上で跳び跳ねた。あっ、口からぴゅうぴゅう水が出たてきたぞ、これで大丈夫かな?
よし、次はガンクだ。おい、コラ起きろガンク!
ちょっと痛いかも知れないけど、痛かったら起きてくれるよね。
ガンクの顔を尻尾で何度もペチペチ叩きながら、前足で腹をぐいぐい押した。
うぉ、冷たっ。尻尾に水がかかったみたいだ。よーし、もういっちょ!
「うーん、食い足りねぇや」
やった、息を吹き返した、と思えば。何が食い足りねえだ、こんなに水飲んでんのに。早く起きろ、戻って来い!
「ガッハ! げふぇ……」
よし、生還したな。これでいいぞ、早く起きるんだぞ。
最後はイルマだ。あと少しだ、気張っていくぞ! イルマ、起きろおぉ! 全員でガロットさんの家に帰るんだぞ!
「ゴボォッ、ごふぉっ? ごふぅ……。
むぅ、ここは、ランド? お前が助けてくれたのか」
オレは尻尾を振って応えた。
「そうか、礼を言う。皆無事か?」
うん! 心配したよ、生きててくれて、こっちがありがとうだよ。
みんな多分大丈夫だ。まだ気を失ったままだけど、しっかり生きてるよ。
イルマがそばで倒れていたガンクとナノの脈をとる。そしてまたその場にぐったり身を倒した。イルマの顔は不安が晴れて安堵した表情だ。
「お前が皆を救ったのか。フッ、もはや頭が上がらぬな」
どうってこと無いさ。仲間だからな。
オレは意識を取り戻し始めた他の二人へ耳を向けた。
「カハッ、コホッコホッ。……うぅんん。あれ、アタシ生きてるんだ、良かった」
「……ハッ、ここは? みんな大丈夫か?」
ナノもガンクも起きたな。良かった、みんな目を覚ましてくれた。
「フッ、やっと起きたか。全員無事で何よりだ。
ランドが水死寸前の俺達を助けた。感謝してやれ」
ナノがオレを抱き締めて頬擦りし、ガンクはオレの頭をわしゃわしゃ撫で回した。二人とも痛いよ。
「どうなってんだよ、この状況は」
「あの通路の奥には水属性の怪物が住み着いていたようだな。凄まじい魔力だったな。そして被害は甚大なものだ。見ろよ」
オレ達は地上の鉱石採掘地まで水に流されて、今は 大岩の上に全員で佇んでいる状況だ。眼下の地表は見渡す限り水に覆われてしまい、全て水没してしまっている。
元々はドウォルフ周辺は乾燥地帯の筈なのに、現在は広域の湖と化してしまった。
明け方の湖のような風景を眺めながら、しばしの間全員がその変わり果てた景色の中心で沈黙の時間を過ごした。
リーダーの意見を聞こうとイルマが訊ねた。
「ガンク、どうする?
一応、【魔力感知】で探ってみたが、怪物は
おそらく移動は行っていない。この水も何の変哲も無い水なのが救いだ。体力的にも、一度ガロット殿の自宅へ退き体勢を立て直すのがいいだろう」
大きな大きなため息を付きながら、ガンクは返答した。
「回りくどいぜイルマ。戻ろう。
……体勢を立て直す、か。俺達にどうにか出来るかな」
顔を出した太陽に目を細めながら、ナノが口を抑えて欠伸をした後で言った。
「アタシも賛成だよ。戻ろ。
とりあえずいっぱい寝ていっぱい食べて。それからゆっくり考えようよ」
そのまま寝転がってナノが微笑んだ。




