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51.ゴーレム戦終結

 どうしよう、ゴーレム相手に何も打つ手が見付からない。

 唯一の弱点の『EMETH』の文字もどこにも見当たらない。こんなの、討伐不可能じゃんか。


 石箱に付いた宝石がまたもや怪しげな光を放ち始めた。それに合わせて停止していたゴーレムがぜんまいが巻かれたからくり人形のようにゆっくりと動き始めている。


「でやぁ!」


 ガンクが剣戟の末にスカルドワーフの一体を切り伏せた。生前は歴戦のもののふだったんだろう、ガンクお見事! と言いたいけれど、意味は無いんだろうな。


 ガンクもそれを承知している様子で、復活しだしたスカルドワーフをチラリと見やりながら顔を歪めて次の相手に剣を向けている。


「はぁっはぁっ、やっぱあの石箱が怪しかねぇか?」

「うむ、他に文字が書いてありそうな場所は、石箱の内側しか見当たらぬな。

 開けれるか?」


 ガンクとイルマが背中を預けながら話し合っている。オレはスカルドワーフの背中にしがみつきながら、背後に隠れるような格好でほとんど意味の無い攻撃を繰り返している。


「ナノ! その石箱の蓋を開けられないか」

「アタシも、これが気になって、いて、おっと、開けようとしてるん、だけど……、蓋が重くて、無理!」


 動き始めたゴーレムの頭の上でふらつきながら叫ぶナノ。見ているこちらが心配になるくらいによろめいていて危なっかしい。


 またオレ達を踏み付けようと動き出したのかと警戒していたけど、ゴーレムは今までに無い行動を見せ始めていた。


 ゴーレムは付近の壁を手当たり次第に殴り付けている。周りの壁という壁に亀裂が入り、砕けて幾つもの凶悪な岩礫となって落下してきた。


 あっ、ナノが落ちる!?


「キャアアアァァァ」

「ちっくしょう!」


 物凄い振動にバランスを崩して、遂にナノが振り落とされた。


 ガンクが駆け付けようと走り出すもその眼前に岩の雨が落ちてきて前に進むことすら出来なさそうだ。


 オレは降り注ぐ岩を避けながら予測したナノの落下地点へとなんとか足早く辿り着く事が出来た。

 そして全身へ魔力を行き渡らせて、今よりもっと毛の量を多く柔らかく、そして弾力を持たせるイメージを膨らませた。


 上手くいくかな、いや完璧にこなしてみせる!


 ゴーレムの頭頂部は高さで言えば十二メートルくらいはあるだろう。そんな高所から転がり落ちたら、辺りどころが悪ければ大変なことになる。


 ぐぅっ!


 激しい落下の衝撃にみまわれたけれど、オレは潰れる事なくナノを受け止めた。


 ナノ、大丈夫?


 ベッドサイズくらいありそうな巨大な漆黒の毛玉になって、もはやねこの影も形も無くなってしまったオレに埋もれて泣きじゃくって感謝しているナノ。


 よかった。ナノが無事で安心したよ。

 でも今は安堵してゆっくりとしていられる場合じゃないよ。


「ランド、よくやった。スゲーぞ。

 ナノ、起きろ。早速だけど、ゴーレムを寝転がせられるか」

「うん。ごめんね、迷惑かけて。あの岩男ぶっ倒してやるわ


 やる気満々怒り心頭といった雰囲気のナノが杖を掲げて詠唱を開始した。

 頭上で杖を降りながら、楕円を描いたり八の字を描いたりしてぐんぐん魔力を練り上げている。


「……我が体内に燻る熱き血潮よ。我は大地の胎動を宿す者なり。散る礫よ集塊と為りて彼の者を轢らん……」


 オレはイルマと役割を交代して、オレとガンクでナノを、イルマがガルビナクさんを岩礫から守っていく。何体かのスカルドワーフは巨岩に押し潰されて行動不能に陥っていた。幸運だ。


 やがて、周囲に転がった小さな石から大岩までが浮かび上がり、ナノの振り回す杖の先へと次第に集まり組合わさっていった。


 ピョンと跳んで、ナノが岩の集合体を杖で叩いた。


「転んじゃえ! グランドロックハンマー」


 杖で叩かれた岩の集合体はゴーレムへ向けて思いっきりぶつかっていくと粉々に砕けてしまった。けれどその衝撃でゴーレムがよろけ、壮絶な地響きと共に仰向きに倒れた。


 やったぞ。


 転倒した衝撃で石箱の蓋も開いたかと思われたけれど無事な様だった。

 ゴーレムの頭部へ駆けつけたガンクとイルマが、被せ蓋の縁に手を入れ引き上げる。しかし内側から留め金みたいな物で開かないように固定されていた。簡単には開かない厳重な作りになっているようだ。


 オレも長くなってしまった毛をわさわさと靡かせながら近寄る。


イルマが小刀を取り出して金具を壊そうとするが。


「ガンク、この留め金具も魔道具かもしれん」

「危ねーぞ、放れてろ」


 石箱の開いた隙間にガンクが剣を降り下ろした。ペキンと渇いた音が響いて石箱の蓋が大きく開いた。


 石箱の中には大きな、変な形をした古ぼけた斧が納められていて、その石箱の上蓋の内側に『EMETH』の文字が彫られていて光を放っていた。


 すぐにイルマが『EMETH』の文字の頭文字の『E』の文字を懐の小刀で削り裂くと、その途端にゴーレムの形が流動化していき泥のように重なりその場に堆積していった。





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