47.レベルアップしていた
鉱石採掘地のトロッコ終着点から離れてしばらく周囲を探索開始した。
ランタンの魔道具のお陰で視界はすこぶる良好だ。この辺りも幾人ものドワーフ達に既に採掘されていて、目ぼしい物はほとんど見つからない。奥に進むしか無さそうだな。
広場になっているこのトロッコ終着地点は以前は結構な鉱物が存在したのだろう。天然のというより掘り返され広場面積が拡張された感じだ。
オレはトコトコと歩き、目についた石を前足で転がし臭いを嗅ぐ。長年魔力を帯びて石にも微量な魔力がまとわり付いている。でもこれだけじゃ魔石にもならないよね。この石自体に魔力は含有してない訳だし。
トロッコレールから見て右側は崖になっている。ガンクが石を投げ、遅れて届いた落下音から推測するに軽く三階建て家屋くらいの高さがありそうだ。
俺達は鉱物を求めて更に奥へと崖に沿って片足分程しかない細い通路を慎重に進んでいく。
その先にはまた広場があり所々ほじくり返されているだけの空間だった。
イルマとガンクは魔力を長年浴びた石を丁寧に検分してはアイテム袋へ入れるけど、その顔はやはり険しいものだ。
「ガルビナクさん、本当に高値で売れそうな鉱石がここに転がってるの?」
騙してないよね、とでも言いそうなナノの問い掛けにガルビナクさんは神妙に頷く。
「この辺りまでは誰でも立ち入れる場所ですからね。先人が既に採掘し尽くしているのでしょう」
ガルビナクさんを先頭にして広場を抜けて崖の奥へと進んでいく。ちょうどオレの身体分の道は下りの傾斜になっていた。通路の奥では反対側の崖へ橋みたいになって道が繋がっていた。
ガルビナクさんが壁に体を預けながら言う。
「死境の橋と呼ばれている場所です。ここから先が本当に最奥です。引き返すならまだ間に合いますが」
「もちろん行くさ」
全員一致で橋を渡り進む。落ちそうだけど大丈夫かな。でも肉の塊のドワーフでも通れるんだからそれより身軽なガンク達は問題ないよね。
ガルビナクさんが言うには、この先の場所は生還したドワーフもいるけど、皆が口を揃えて二度と戻りたくないと意見する場所だそうで、その噂が広まって近年ではめっきり挑戦者の数は減ったそうだ。
イルマが壁に手を当て、その壁を数回強く叩いた。薄い土壁が剥がれ落ちた部分から鮮やかな半透明の光が漏れだした。
「む、これは……」
「魔法水晶です。良く見つけられましたね」
「綺麗ねー」
ガルビナクさんが驚いていると、ガンクが、「イルマは【魔力感知】持ちだからな」と説明を加えた。
魔法水晶はギルドの受付カウンターに置いてある水晶玉の原石だ。この魔法水晶を加工して作られるらしい。
この壁の中にある量でも、それほど高値で取引されているような鉱物でもないというのが残念な話だ。
ガルビナクさんは自身のアイテム袋からつるはしやスコップにハンマーなどの採掘道具を取り出して配ってくれた。
しばらく無心になって魔法水晶を掘り起こしていると、奥の方から感じる怪しい気配が足を微かに伝ってきた。魔力を持った数体の魔物が迫っているようだ。
遅れてイルマがスコップを動かす手を止めて気配を探っている様子だ。
「発掘音に反応したのか、しくじった。
全員戦闘体勢だ。動きは近いぞ、すぐに構えろ」
イルマがスコップを放って弓を取り出す。奥の暗がりから子犬くらいの大きさをした灰色の蠍が次から次へと湧くように姿を現した。
「イヤだ、キモいキモいキモい」
「ナノ、声を上げるな。
デスロックスコーピオン、デスグレースコーピオンだ。尾の先端の毒針に注意しろ、良くて麻痺、悪くて即死だ。赤い両手の鋏にも注意」
言いながら矢を射るイルマ。広場には既に十数匹の蠍が地面に壁に天井にと這い回りこちらへ近付いて来ている。
ガンクも手近な一匹の蠍を切り付け言う。
「俺とイルマはいつも通り動く。ガルビナクさんは俺達の後ろへ。ナノはひとまず待機、落ち着け。ランドはいけそうなら気を付けて戦ってくれ」
ガッテンでい。
オレもいつも通り魔力を循環させると、【身体強化】,【硬質化】,【物質変換】を施して蠍へ迫ると長く伸ばした爪を叩き付けた。
そのまま危なげも無く三匹の蠍を裂き殺した。
オレは自分の足を眺めた。アクアアナコンダの魔核分泌液を飲んだ事で随分と身体能力も魔力も向上しているようだ。
見るとガンクもイルマも無事蠍を全滅させたようだ。
「やっぱり身体が軽くなってると言うか、基礎から動きが良くなった感じだな」
「今更実感したのか。自身の身体なのだ、正確に把握しておけ」
「アタシも強くなったかな」
拳を繰り出しているナノに「ナノは魔法だろ」とガンクは声を掛ける。
「早いとこ魔法水晶をアイテム袋へ入れて先へ進もう」
一段か、一段飛ばして二段くらい強くなっていたオレ達は、更なる鉱物を求めて奥へ進む。




