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46.ドワーフを買収してトロッコに乗り進め

「ねぇ、これって高く売れるんじゃない?」

「ただの石だ」

「なぁ、こいつはどうだ? 面白い形してるぜ」

「……ただの珍しい形をした石だな」


 オレ達は鉱石の採掘地を歩いている。怪しまれないようにしっかりと採掘管理人のドワーフに断りを入れておいた。管理人はだらだらと怠慢な様子で、数人のドワーフと無駄な時を過ごしていた。以前は筋骨粒々だったろうと推測出来るその体は現在は脂肪が付いて、平時の管理者として立派な体つきになっている。


 まず手始めに共同採掘地から収集を開始することにした。しかし、辺りは掘り返され小さな石さえ探すのが困難な場所だ。


 イルマ的にはガンクもナノも協力的じゃないように映ってるのかもしれないな、辟易してるような顔だけど。二人は一応真面目みたいだから強く注意出来ないみたいだ。


 ちなみに鉱物の真贋は全てイルマ任せ。ほんと、イルマは万能なのね。どんな場合でも大概役に立つんだから。


「これは?」

「ただの石だ」

「こいつはどうだよ?」


 イルマが立ち止まったぞ。熱くなってしまった頭を手で押さえて。


「お前らやる気あるのか?」


「もちろん」と陽気に笑う二人に溜め息を漏らすイルマ。大変だな。ちなみにイルマはちょこちょこと鉱石をアイテム袋へ入れていっている。


 オレは周囲の臭いを嗅いで周りそれっぽい物を探しているけれど、所々にドワーフ達の糞尿と思われる場所があって鼻を動かすのが嫌になってきた。


「いいか。鉱物を、ナノは見た目で判断するな。美しければ、拾って持って帰れば高く売れるとでも思っていまいか」


 それじゃカラスの習性と同じだよね。光輝く物を集めているだけだ、確かに綺麗だけど。


 ……実は似たような事をオレもしているけれど。


「そしてガンク。石の形や触感で手に取るのをやめろ」


 え、変な気配のする石を見つければいいんじやないのか?


 イルマがアイテム袋から自分で採集した鉱物を取り出し言う。


「俺は【魔力感知】を用いて鉱物に含有する微量の魔力を読み取っているのだが、二人とも何か自分なりの手立てを見付けた方がいいぞ」

「アタシは直感があるからいいの。女の勘」

「俺も……男の勘だ!」

「もういい。勝手にしてくれ」


 こうして初日は取るに足らない少量の成果を得ただけだった。



 二日目。


 暇そうに数人のドワーフ達と談笑している採掘地管理人。その元へと近付いていくガンクとイルマ。また挨拶するのかな。


「なんだお前らまた来たのか。余所者は帰んな。採掘権も持ってねぇ奴に良い場所は案内してやんねーぞ」


 採掘権? そんなものがあるのか。それにしても、当然かもしれないけど内贔屓だよな。ズルいや。


「なぁおっさん。そう邪険にすんなよ。今日は

いい物持ってきたんだ。見てくれよ」


 ガンクはそう言い酒瓶をアイテム袋から取り出した。ガンク悪どい顔をしているな。


「お前ら、ワシを酒で釣ろうってのか?」

「フ、それだけではないぞ」


 イルマがアイテム袋から魚と貝の干物を取り出した。昨夜ミューネさんにもらっていたやつだ。いいな、アレ。すっごく美味いんだぞ。


 ドウォルフは内陸の高山地帯にあるから魚介類は出回っていない上に、ドワーフは交易商とも関係が余り良くないらしく、海産物は一部のドワーフを除いて滅多にありつくことの出来ない貴重な食べ物だという。


 所狭しと並べられた酒と食い物を見て生唾を飲み込む管理人らドワーフ達。ガンクとイルマは全員が足りる程の結構な分をその場に出した。奮発したな、と思う。


「ね、おじさん達。アタシ達奥まで行ってもいーい?」


 ナノが猫撫で声を出した。

 管理人はナノの格好を嘗める様に眺め、そして観念したように笑った。


「ああ、許可してやるよ。嬢ちゃん魔法使いだろ。しかし、物好きだな。奥まで行かなくてもまだ割の良い魔鉱石は産出出来るぞ」

「俺達は大穴狙いなんだ」

「最奥は未開の大地が拡がっている。天然の迷宮だ。地底に潜るのが趣味みてぇなドワーフが帰って来れない事もある危険な場所だ。それでも行くってんのか?」


 脅しも含めてガンクを値踏みするように見る管理人。彼にガンクは冒険者証を出して見せる。


「心配すんな。俺達は冒険者だ。自分の身は自分で守るさ」

「簡易な物でいい。地図等あれば助かる」

「いっぱい採れたら分けてあげてもいいよ」


 イルマもナノもガンクと同じく冒険者証を誇らし気に彼らに提示した。おい、オレのも出してくれ。まだオレ一匹だけD級だけど。


「ヘッ、気に入ったぜ。

 この頃採集に来んのはヘタレしか来やしねえとガッカリしてたが、胆力のある奴もいるもんだな」


 いい気分そうに早速酒を煽りながら、管理人はしっかりと仲間のドワーフ達に酒とつまみの配分を行うと、遠くて荷車に石を載せていた若いドワーフに向け「おい、ガルビナク。トロッコ出してやんな」と声を掛けた。


 ガルビナクと呼ばれた若いドワーフは周りのドワーフと比べたらその体格は華奢だけれど彫りの深い顔立ちをした美形ドワーフだ。


「ガルビナク、お前も付いていってやんな。解る範囲で道案内してやれ。後学にもなるだろう」


 ガルビナクは無言で頷く。


 オレ達を載せたトロッコがガロゴロとレールの上を進んでいく。平地や登り坂では押さないと前へ進めないのが不便だけど、ねこのオレは手助けする術もない。楽チンだ。


 それに篭に閉じ込められていたから、馬車で味わう事が出来なかったこの疾走感! 最高だよ。


 トロッコは地底に開いた穴へ入り、右へ左へと曲がりながら、先へ先へ進んでいく。

 帰り道、トロッコを押して進むの酷く大変そうだと思った頃だ。地上よりも低く肌寒い外気に混じって辺りに薄くもじんわり感じる魔力の感触が鼻孔をくすぐる様になった。


 やがてレールの終点に辿り着きトロッコが停止すると、オレ達に向けガルビナクが初めてその口を開いた。


「この先が最奥です。死なないように注意しましょう」




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