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34.第2カレンド遺跡②

「蝙蝠ばっかでヒマー」


 地下3階まで到達したオレ達は、昼ご飯休憩を挟みながら遺跡内部を探索している。


 他の冒険者パーティと遭遇するでもなく、特筆するような強敵に苦戦するでもなく、オレ達はゆっくり神経をすり減らしながら進む。


 魔物が出たら、物理攻撃が出来る前衛組のガンクとイルマを中心にして倒していく。この階層は1つ上の地下2階と比べて暗く、蝙蝠が多い。吸血蝙蝠だそうだ。


 けれど天井にぶら下がり近寄ったオレ達に上から襲いかかるという単純明快な攻撃パターンだ。対処は楽というか物足りないくらい。ナノの言う通り暇に感じる程なのだ。同じ光景を繰り返し見ながら、それでも慎重に進む。


 そうしていると、初めて見る変な塊が現れた。毬のように跳ねて転がり破片を巻き飛ばして向かってくる。


「む、キラーマツボックリだ」

「問題ねーって」


 ガンクが欠伸でもしそうな弛緩した顔で剣を構えた。


 なぜこんな場所に松ぼっくりが? と思ってる内にガンクが剣を振り、林檎大の松ぼっくり数個を切り裂いた。


 実に危なげ無い。オレはというと、遺跡に入ってからずっと後ろから戦いの様子を見てるだけだ。オレはナノの護衛という大役を担っているけど、ナノに危機が迫る前にガンクとイルマが無事に対応しちゃうから、見せ場は一向にやってこない。


 オレは大きな欠伸をついた。


 別れ道に行き当たった時はイルマが【探知魔法】を使い、ガンクが進む道を決定する。


 オレとナノは攻撃に魔法を使うので出来るだけ魔力温存で後衛に回されている。たまに背後を警戒しては危険が無い事に内心ため息つく状態だ。すこぶる暇なのだ。


 一つの通路を行き止まりまで来てはイルマが周囲の壁を入念に調べ、この場に何も見当たらないと判断するとまた来た道を引き返す。今度は選ばなかった方の通路を進みそこでも何も無いと断定されれば再び引き返して別のルートを進んでいく。


 行きと同じ敵が現れたら倒し、進んでは戻りを延々と繰り返す。繰り返す。ただただ繰り返す。


 オレはみんなに聞きたい。この行動に何の面白味があるの? 無いよね? ねぇみんな、楽しい?


「よし。大方埋まってきている。次は戻って、多くの【魔力感知】が掛かった通路を進んだ方がいいな。おそらく、キラーマツボックリが数個見られた事からも殺し松があるだろうな」


 軽い調子でガンクが応える。


「あいよ。いいよ。その道を行こう。

 ナノもランドも、退屈だろうけど、イルマの言う通りに行くぞ」


オレとナノはうんうん、と首を振る。


「ナノはまぁいつもの調子だけどさ。ランドはダンジョン攻略なんか初めてだろ。実はこんなに地味な作業の連続だからな。我慢しろよ。ていうか納得すんだぞ」


 そうなの? オレ耐えられるかな、この暇な展開。


「強敵と切った張ったの激闘して、『うおーっ興奮爆発すんぜ! 』とか、『あっこんな所に宝箱がっ!?』とか、 夢みたいな一攫千金やその他諸々のドキドキワクワクなんてのは滅多にねぇから」


 そんなぁ。オレ、ダンジョンの冒険に幻滅だよ。


 幾度も通った道を引き返して、突き当たりの広間に出ると一本の大きな松の木があった。枝に付いている数百個のマツボックリが次々に落下しては飛び跳ね接近してきた。


「数が多過ぎだぞ。ナノ」

「はいはーい。アタシの【火魔法】でこんがりやっちゃおーか」

「洞窟だ、火はよせ」

「あー、うかっりしてた。地下で【火魔法】はマズイか」


 だらん、としながらもナノが杖をかざして構える。


「我が身体を流れる血潮よ今こそ息吹け。疾風集いて切り裂き舞い散り彼の地を吹き曝せ……」


 ナノが頭上に構えた杖を円を描く様に振るう。


「危ないから下がってねー。いっくよぅ、トルネードスライサー」


 広間の中を暴風が渦を巻きながら吹き荒れた。後に残ったのはズタズタに切り裂かれて半壊した哀れな松の木だけだ。


 被害を逃れた数個のキラーマツボックリを分割させながらガンクが怒る。


「こんな小部屋で大技使うな、危ねーよ。トルネードカッターで十分だったろ」

「だってストレス発散したかったし」


 ナノはどこ吹く風だ。


 風が落ち着き散らかった広間の中をイルマが見分する。そして険しい顔をして広げた地図を睨み唸った。


「おかしいぞ、ここより進む道が無い。何か見落としているのか?」


 イルマの持つ地図は【探索魔法】を使える冒険者必須の重要アイテムの1つだ。イルマの携帯する地図には一度通った通路が全て自動的に解り易く平面地図化され、第2カレンド遺跡各階層の地図は勿論のこと、過去に探索したダンジョンの地図も記録され残っている。


 ナノはしゃがんで休息を取り、ガンクは松ぼっくりの欠片を蹴飛ばしている。


「容易に過ぎる。地下3階で途絶えるなどありえんぞ」


 熱心に頭を掻きむしるイルマを脇に見ながら、オレは殺し松に近付いた。ズタボロの木の根元から水滴が落ちる音と共に微かな風が感じられた。


 ココ掘れワンワンじゃないけど、皆に鳴いて知らせる。


「ほぅ。やるな、ランド。流石は獣。でかしたぞ」


 根元に開いた小さな隙間から、殺し松の根を伝いながら下層へ降りて行く。第2カレンド遺跡地下4階は水路と共に巨大な地底湖が広がっていた。


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