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33.第2カレンド遺跡①

 翌朝、男女2人ずつの冒険者パーティ、ギンセント組と馬車を供にして目的の遺跡へ向かった。ちなみにオレは再び篭の中に幽閉されている。


 見た感じ、とてもよく似た顔の2人の剣士っぽい好青年は、長閑な牧場で馬の背中を拭いているのが似合いそうな印象だ。


 女の子2人の方はさっきからオレをチラチラ見ては2人で囁き合っている。一人は弓使いでもう一人は魔法担当のような格好だ。時折、まだあどけなさの残る可愛らしい微笑みをちらつかせていた。


 馬車は崖と崖の隙間を縫うように進んでいく。


 結構ガンマリヤの街から離れるんだな。小一時間くらい舗装されていない道を音を立てて走っているぞ。


「こんにちは。可愛いねこちゃんですね」


 ギンセント組の女の子の一人がナノにしゃべりかける。


「こんにちは。この子ランドっていうの。窮屈で可哀想だから出して上げたいんだけどね」

「ペットなんですか」

「そうよ。アタシのお気に入りの子だから連れて来てるの」


 おい、ナノ? オレはペットじゃないよ?


「なんちゃって。

 仲間よ。実はとっても強い子なの」

「ステキー」

「カワイイ。いいなー、私達のパーティにも可愛いねこちゃん欲しいよね」

「私は犬がいいなぁ」

「ワンちゃんもいいかも」


 ギンセント組の女の子2人が仲良くお喋りをし始めた。


「ほら冗談言ってないで、そろそろ到着だよ。気を引き締めて。

 皆さんも第2カレンド遺跡調査でしたよね」


 第2カレンド遺跡というのが目的の遺跡名だ。名前の通り近い位置に第1であるカレンド遺跡がある。こちらはもっと古くに発見され、既に調査され尽くした遺跡らしい。


「そう。第2カレンド遺跡の攻略に来たのよ」


 ナノは誇らしげに続ける。


「向こうではよろしくね。何かあれば協力し合って頑張りましょ。

 ほら、ガンクも挨拶しなよ。こんなのだけど、うちのリーダーのガンク。あと瞑想が趣味のイルマと、ねこのランドちゃん」

「瞑想ではない。俺は調査の道筋を考えている最中でだな……」

「ほら、ガンクも何かこちらのお兄さんにご挨拶しなって」


 オレはしっかり彼らに挨拶したけれど、ガンクは頭に腕をやって天を仰いだままだった。ナノに肩を揺すられてやっとガンクが顔を向けた。


「よろしく」

「ええ、こちらこそよろしく。

 僕はリーダーのギンセント、こっちのもう一人はガンセント。似てるでしょ? 双子なんですよ。あと、カイネとサミューラ」


 紹介されたそれぞれが「よろしく」と笑顔を振り撒いた。なかなか好感の湧くパーティみたいだな。


 馬頭の合図で降りたオレ達。イルマとギンセントが馬頭に料金を支払うと馬車は来た道を引き返していった。


 遺跡というか洞窟という印象だ。洞窟に繋がる入り口は地上より下にあり、その周りは掘り返されていて脇に土の山が造られている。


 洞窟の中へ入る穴は大人一人がやっと入れる程度の大きさしかない。


 先にギンセント組が入っていくのを後ろで待つ。


 イルマが腕を組んでオレに説明する。


「先に俺達は第2カレンド遺跡に入っている。そして地下2階まで俺とナノが到達している」

「この前地下2階に繋がる階段を見付けたのよ」

「発見者は別の冒険者パーティだがな」

「そうだけどね。

 ガンク? なんかさっきからおかしいよ。 どうしたの」

「む、そうなのか?」


 ナノとイルマがガンクを心配そうに見る。


「ん。俺は普通だけど」

「絶対おかしいって。なんか上の空が多いし」


 オレも同意件だ。


「……俺は、このパーティのリーダーでいいのかな」

「ハァ?」

「一体どうしたのだ、ガンク」

「なんか……、さ。自信無くしたって言うかさ」


 ガンクらしくない、どうしたんだろう。この前ドルマックに完敗したのが尾を引いてるのかな。


「なぁ、俺がリーダーでいいか? 俺はお前達を守ってやれるか?」


 絶句するオレ達。


 ガンクは俯き今にもしゃがみ込みそうだ。いつもの負けん気の強さが奥に引っ込んで、実年齢異常に幼く儚く映った。


「おい、こんな時に何言う。しっかりしろ!」

「ガンク、甘ったれないで。リーダーはあなたなのよ」


 ガンクはオレ達に背を向け項垂れる。


「不安なんだよ。俺は、……弱い。

 この先、もしも……」


 ナノがガンクの正面まで近寄り、ガンクの頬を激しく平手で打った。バシィッ、と辺りに強烈な音が響く。時が止まったような静けさを感じた。


「もう一度言うよ。リーダーはガンク。ガンクがリーダーよ。

 誰だって弱くなるし心が傷付くことだってある。アタシやイルマやランドちゃんや、ガンクより強い敵はいっぱいいるよ」

「うん」

「確かに強いリーダーは理想だけど、いつかなれればいいから。それまで、ちゃんと引っ張ってって。辛い時はみんな同じだから。支え合うから。

 それに、アタシは最初から最後まで守ってもらうようなお姫様じゃない、アタシも横で戦うから。イルマもランドちゃんも一緒だよ」


 ローブの袖で溢れ落ちる涙をごしごし拭うナノ。


 ガンクはそんなナノの肩に手を置いて「わりぃ、泣かせちまって」と呟いた。もう大丈夫そうな、迷いの晴れた力強いリーダーの顔に戻っていた。


「そうだな、ごめん。ナノもイルマもランドも。俺、ドルマックって奴に負けてよ。ちょっと凹んでたみたいだ。本当にごめん。

 それにありがとう。俺はこのパーティのリーダーだ。ナノが言うように、もっともっと、強くなればいいことだよな」


 イルマもどうやら肩の荷が降りたようだ。


「フン、解っているのならそれでいい。一時、リーダー交代かと思ってヒヤヒヤしたぞ」


 オレはオレの大切な仲間達を見守るように見る。「イルマがリーダーならお堅いパーティまっしぐらね、大反対」とか、「交代するもんかよ、しっかり俺の命令きけよイルマ君」とか、ふざけ合っている、どこか愉快で頼もしい仲間達を。


 既にギンセント組は第2カレンド遺跡に入っていっている。


「よし、俺達も行くか」


 ガンクが声高らかに言う。早く行こう。その前にオレを篭から出してくれないかな。


 洞窟に開いた風の吹き出し口みたいな小さな穴を潜り内部に入る。しばらく人一人が這って移動出来る程度の道を進むと、階段がありそれを降りると大きな広間に出た。広間は人工的な造りで、壁の素材から不思議な光が滲みこの場所全体を照らしているようだ。


 イルマが説明する。


「ランドは初めてで知らないだろうが、ダンジョンに良く見られる照明魔法の一つだ。

 ダンジョンを建造した者や管理者……ボスなどだが、そういった者などかけた魔法だな。第2カレンド遺跡ではその全容は究明されていない為詳細は不明だが、ランタンなど持たずに進めるのはダンジョンとして易しい可能性を窺える」


 そうなんだな。オレは暗くても平気な方だけど。


 先に侵入したギンセント組の姿は見えなくなっていた。


 広間には4つの通路がその口を広げている。


「前に来た時は階段から見て2つを検証したな。どっちも行き止まりだったけど。残りはどうだった?」


 オレがナノと一緒にハストランで薬草採集していた3日間の時の事かな。


 ナノが通路へ指を差す。


「一番左も行き止まりで何も無かったよ。地下に進めるのはあれ」


 オレ達は左から2番目の通路を歩き始めた。一度通ったナノとイルマを先頭にガンクとオレが並んで後ろを歩く。


 通路を突き当たりまで行くとイルマが左手の壁を押した。すると奥に階段が現れた。押した分だけ隙間が出来て、手を離すと壁は元の位置に戻る不思議な造りだ。


 階段を降りると別の広間に出た。広間の壁には人の絵が所狭しと書いてある。雑なタッチの絵だ。広間に出たその奥にはまたその先に繋がる通路が2つ延びていた。


「あの2つの通路にはどちらにも別の道が続いていた。右は3つに下り階段が一つ。左は2つに上り下りの階段1つずつ。

 前回調査時はサルドマトという冒険者パーティを追随していたが、右の通路を進み、先の通路それぞれで弱いが多くの魔物と遭遇した。

 さて、今回はどの道を進もうか、リーダーよ」


 ガンクは即答した。


「左側を見てみるか」

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