31.ガンマリヤへ
「一体どうしたというのだ、コイツは。ガンク、何か変な食べ物を与えてはいまいか」
「そこの薬とか? ちょっとランドは怪我しちまってよ」
「どうしたの、ランドちゃん。包帯ぐるぐる巻きで。もしかして楽しいミイラ遊び?」
早めの晩御飯を食べて、治療師の治療と処方された薬のおかげですっかり快調したオレは、イルマに擦り寄ったり、ガンクの肩に登り顔を舐めたり、ナノを上目遣いで見上げて首を傾けたりしている。
効果無いかな。オレの精一杯のおねだり攻撃。
テーブルの上にお邪魔してごろんと横に寝そべって腹を見せながら転がる。
「んんっ! 何が目的なのだ?」
「ラ、ランド、さては昨晩の後遺症のせいで?」
「ランドちゃん? 可愛い、素敵よ!」
やったぞ。ナノは陥落した。
「うふふ、可愛らしいお姿です。おねだりかゴマスリでしょうか。ランド様には降りて頂 きましょうか」
オレは緑髪のお姉さんに抱かれて床に下ろされた。ここはギルドハストラン支部内の別室だ。
治療に専念して夜まで寝尽くしたオレにガンクが合流して、その後夜遅くにイルマとナノが遅れて合流した。
オレを宿に置いた後、ガンクはヴァンザードとスマルと共に森の沈静化を試みた。話を聞く限りだと、危険度の高い魔物類や野生動物に大型昆虫類の大多数はオレが排除していた様で、後の残りを3人で駆除して回ったそうだ。それもスマルの鎮静剤が奏功して、戦闘よりも危険生物の探索と安全の確認作業に神経を使い、精神的にお疲れの様だ。
ガンクがベッドでぐったりしているところに緑髪のお姉さんが再度現れ、ガンクの為にと回復薬と全員揃ったらギルドへ顔を出してほしいと、言伝てを残して帰って行った。
夜遅くにイルマとナノが宿へやって来て、ナノが「疲れてんのに。明日にしましょ」と喚いたけれど、2人が簡単な軽食を取った後でギルドを訪れたのだ。
緑髪のお姉さんが労いの言葉を掛けながら言う。
「皆様、此度はお疲れのところ申し訳無く、また、当方までわざわざお出向き頂きまして誠に感謝致します。
まずは、皆様方にこちらをご覧頂きたく存じます」
お姉さんがテーブルの上に1枚の用紙を置いた。
「機会が有りました故に、先にランド様には簡単なご説明をさせて頂いております」
『
依頼名 :〔ガンマリヤ近郊新規遺跡内部調査〕
対象級 :D以上
場所 :ガンマリヤ近隣新規遺跡内外
内容 :遺跡内部及び周辺外部の調査
注意事項:遺跡内外での獲得物また拾得物の取得権は当ギルドが有すものとする
報酬 :上級特定魔道具の譲渡 』
「何なのだ、これは」
イルマが用紙を拾い上げて、醒めた目をしながら呟く。そして捨てるように紙を指で弾いた。お姉さんを訝しむ様に鋭く捉える。
「お気に召されない様だとお察し致しますが」
「当然だろう。遺跡で得た物全てを渡せと? しかも報酬は魔道具のみ。冗談にも程がある。笑えぬぞ。
疲れてるんだが、こんな話を伝えるだけなら夜も遅い。失礼してもよいか」
席を立とうとするイルマ。やっぱりそうだよね。
「待って。もしかしたらこの上級魔道具って売ったら相当高いものとかくれるってことじゃない?」
「そんな回りくどい事をして何になる。ギルドの程度が知れるだけだ」
「この特定上級魔道具というのは、この言霊水晶です」
お姉さんが傍らに置いた2対の水晶玉をテーブルの上に置く。
「この言霊水晶を使用すれば、ランド様とも意思の疏通が可能となり得ます」
「それがどうした。そんな物、必要無い」
「イルマ! そうやってすぐ勝手に話を進めないで。素敵じゃない。ランドちゃんとお話し出来るって。ね、ガンク?」
「うーん……。
……でも、その水晶玉もらって、遺跡で見付けた剣とか、武具や防具や金銀財宝は全部俺達の手に入らないってことだろ。それと引き換えにランドと話せるって言われても。吊り合わねーよ、絶対。生きるか死ぬかの冒険して得るほどの価値が見出だせなくねーか」
賛同者がおらずにガックリ肩を落とすナノ。
「ガンマリヤにて新しく発見された遺跡は既に多数の冒険者が探索を開始している。遺跡というよりダンジョンだ。強く未知の魔物も多数発見され、探索もかなり困難な様相を呈している。
この条件では納得など出来ようものではない。他を当ったらどうだ。我々には無理だ」
腕を組みイルマがいい放つ。
「左様ですか。
畏まりました。では、残念ですがこのお話は無かったことにさせて頂きます」
えー、そんなぁ。
「大丈夫だ、ランド。こんなもん無くても俺達は上手くやっていける。だろ?」
「そうよ、ランドちゃん。アタシ頑張ってねこちゃんの気持ち分かるようにもっと勉強するから」
うぅ、ガンク、ナノ、ありがとう。オレ、この言霊水晶って魔道具欲しかったけど、みんなと通じ合いたかったけど、いいよ。こんなもの無くても分かり合える筈だ、仲間なんだから。
「ハストランを出発された後は、皆様でガンマリヤへ行かれるのですか」
依頼書を折り畳み懐へしまうと緑髪のお姉さんが訊ねた。
パーティのリーダーであるガンクが答える。
「ガンマリヤの遺跡は、少し俺達には荷が重い気がしてんだよ。王都に戻ろうかって考えもあったけど。どうする?」
「お前が決めろ。リーダーだろう」
「アタシはガンクに従うよ」
オレは、ガンマリヤを見てみたい。
ガンクは全員の顔を交互に見やった後目を瞑り、しばらく考え、皆に告げる。
「ガンマリヤに行くぞ」
こうして、明日の朝ガンマリヤに向けて出発が決まった。




