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第14話 オメガの胎動

1.帰還、そして違和感


光の出口を抜けた瞬間、凪と明日美の意識は、強烈な浮遊感とともに現実の肉体へと引き戻された。


「……ッ、はぁ、はぁ……!」


凪が目を開けると、そこは見慣れた第ゼロ研究棟の資料室だった。窓の外はまだ夜明け前。机の上にあった父の日記はボロボロに風化し、黒い金属片は完全に砕け散って砂になっていた。


「お兄様……!無事、なのね……?」


隣で、明日美がふらつきながら凪の肩を掴む。彼女は太陽のGaeaを経由して次元を超え、ファントムとして意識だけを飛ばしていた。凪に比べれば短時間だったとは言え精神的な疲労が色濃く出ている。


「ああ。……戻ってきた。父さんを、あそこの無限の記憶の世界に置いて……」


凪は、砕けた金属片の砂を握りしめた。父、真澄は、自らの意志で深淵に残り、新たな管理者となった。その決断を無駄にしてはいけない。凪の心には、以前のような虚無的な静寂ではなく、嵐の後の海のような、悲しみを含んだ穏やかな感情で溢れていた。


だが、感傷に浸る時間は与えられなかった。突然、資料室のモニターがひとりでに起動し、不快なノイズ音を撒き散らし始めたのだ。


「……戻ったか。凪、明日美……」


スピーカーから響く、重々しく、腹の底に響くような声。凪と明日美の背筋が凍りつく。聞き間違えるはずがない。それは、深海一族の長にして、組織「オメガ」の頂点に君臨する祖父、深海源シンカイ ゲンの声だった。


「……おじい様。……盗み見とは、趣味が悪いですね」


凪は冷静さを取り繕い、モニターを睨みつけた。画面には何も映っていない。ただ漆黒の闇が広がるのみだ。


「真澄は愚かだった。個人の情愛に流され、管理者としての責務を放棄するとはな。……だが、奴が深淵に残ったことで、Gaeaのシステムは「自己修復」を開始した。無限の記憶は今、かつてない速度で再構築されている』


「自己修復……?」


「そうだ。傷ついたシステムは、より強固なセキュリティを求める。……明日美。お前が必要だ」


明日美が息を呑む。


「お前が「母なる海」に覚醒したことは把握している。……だが、お前のその力は、単なる突然変異ではない。お前は、深海一族の始祖「始まりの女性」の因子を、一族の歴史で見ても最も色濃く受け継いでいる。深淵の少女の代わりとなり得る存在なのだよ」


「私が……あの少女の、スペア……?」


「深淵の少女は限界を迎えている。真澄が支えたところで、そう長くは持たん。……少女が消滅すれば、無限の記憶は行き場を失い、世界中に溢れ出して人類を狂わせるだろう。……それを防ぐには、数千年前とは異次元と呼んでも良いほどの進化を遂げた人類のテクノロジーを理解している新たな「器」が必要だ」


モニターの向こうで、祖父が冷酷にわらう気配がした。


「明日美、お前が新たな人柱となり、深淵の少女を受け入れ一つになるのだ。……それが、一族に生まれた者の宿命だ。そこに器の証となる七色に輝く石を置いておいた。それを媒介にすれば無限の記憶の中に入れるはずだ」


「ふざけるな!明日美は犠牲になるために生まれたんじゃない!」


凪が激昂し、Ego Cubeを展開しようとする。だが、Cubeは微弱な光を放つだけで、深淵にいた時のような強力な具現化は起きなかった。ここは現実世界。物理法則の壁が、Ego Cubeの力を制限している。


「威勢がいいな、凪。……だが、こちらの世界で私に逆らえると思っているのか?」


祖父の言葉と同時に、凪のスマートフォンが震えた。通知画面を見て、凪の表情が凍りつく。


「深海大学 量子力学研究所への補助金、全面凍結」

「神野太陽氏の運営するキャリア支援企業、個人情報漏洩の疑い」

「NEO-GAEAのサーバーに大規模なサイバー攻撃、株価暴落」

「アーク・システムズに対し、技術盗用の疑いで訴訟準備」


オメガの影響力は、裏社会だけでなく、政治、経済、司法にまで根を張っていた。明日美を守ろうとする凪だけでなく、彼女の「結び」である太陽、九条、権藤、白石……そのすべてに対し、同時に圧力をかけ始めたのだ。


「抵抗すればするほど、お前の大切な「仲間」たちが社会的に抹殺されていくぞ。……賢明な判断を期待する」


プツン、と通信が切れた。静まり返った資料室で、明日美が震えながら膝をつく。


「……私のせいだわ。私が……オメガの思惑通りに動かなかったから……太陽さんたちまで……」


「違います、明日美。……これは、僕たちが乗り越えなければならない試練です」


凪は明日美の肩を抱き、強く言った。


「太陽さんたちは、こんなことで折れるような人たちじゃない。……それに、僕たちにはまだ、やるべきことがある」


凪は、自身のEgo Cubeを見つめた。現実世界では力は制限される。だが、オメガの本拠地はどこにあるのか?祖父はどこから指示を出しているのか?


「……無限の記憶が「自己修復」されたと言っていましたね」


凪は推測する。父・真澄が管理者となったことで、深淵の世界は以前のような「廃墟」ではなく、新たな秩序を持った空間へと書き換わっているはずだ。そしてオメガは、その新しい深淵を拠点として、世界中に干渉している可能性が高い。


「オメガを倒すには、もう一度あそこへ行くしかない。……ですが、今度は父さんの日記という「道しるべ」がない」


その時、凪のEgo Cubeが、微かに振動した。鏡の表面に、奇妙な地図のようなものが浮かび上がる。それは日本だけではない。世界地図だ。ヨーロッパ、アジア、アメリカ、アフリカ……。 世界各地に、赤い光点が点滅している。


「……これは?」


「……共鳴しているわ」


明日美が、自身の胸を押さえて言った。


「私の中に流れてきた「始まりの女性」の記憶……。それと同じ特性を持つ人たちが、世界中にいる。……きっと、おじい様が言っていた「始まりの女性の末裔」たちよ」


オメガは、明日美一人に固執しているわけではない。世界中に散らばる「母なる海の因子」を持つ者たちを、無限の記憶を介して集め、利用しようとしているのだ。


「……分かりました。オメガの狙いは、この末裔たちを集めて、最強の管理システムを完成させること。……ならば、僕たちが先手を打つ」


凪は立ち上がり、白衣を翻した。


「行きましょう、明日美。……舞台は、日本だけじゃない。無限の記憶というネットワークを使えば、世界中のどこへでもアクセスできるはずです」


凪と明日美。二人の探索者は、物理的な距離を超え、世界規模で展開されるオメガとの意識情報戦インフォメーション・ウォーへと身を投じる。



2.再び記憶の深淵へ


オメガの総帥であるおじい様が用意した、七色の輝きを放つ石を媒介にして、凪と明日美の意識が、再び物理法則を超えた領域へと着地した。足元に広がる感触は、以前の「赤い砂」ではない。冷たく、硬質で、そして完璧に磨き上げられた大理石のような床だった。


「……これが、自己修復された無限の記憶の世界ですか」


凪が顔を上げる。そこは、見渡す限り白一色で統一された、巨大な神殿都市だった。かつての「滅びの庭園」のような廃墟の面影は微塵もない。整然と並ぶ白亜の柱、幾何学的に配置された回廊、そして空には、太陽の代わりに巨大な「眼球」のような光体が浮かび、世界を監視している。


「綺麗……でも、息が詰まりそう」


明日美が胸を押さえる。


「ここにはノイズが無いわ。悲しみも、苦しみも、すべてが強制的に漂白されているような……」


「父さん。いや、深海真澄という新しい管理者が作った秩序でしょう。……オメガの理想とする「静寂」に近い」


凪は白衣を翻し、自身のEgo Cube「鏡面ミラー」を展開した。この世界は美しく整えられているが、その本質は「拒絶」だ。異分子である凪たちの侵入を、空間そのものが排除しようと圧力をかけてくる。


「行きましょう。あの中枢に、父さんと……「深淵の少女」がいるはずです」


二人が神殿の大階段を登り始めた時だった。頭上の「眼球」がギロリと動き、二人を捕捉した。


「警告。未登録の因子を確認」


空気が振動し、階段の頂上から五つの影が降り立った。 それぞれが異なる色のオーラを纏い、異質な存在感を放つ者たち。


「ようこそ、東洋の招かれざる客よ。ここは聖域。けがれた足で踏み入ることは許されない」


先頭に立ったのは、騎士のような甲冑を纏った、長身の白人男性だった。その手には、Ego Cubeにより具現化された巨大な盾のようなものが握られている。


「君たちは……?」


凪が問うと、騎士の男は厳かに告げた。


「我らはオメガの導きにより、世界中から集められた「始まりの女性」の正統なる末裔だ」


男の後ろに控える四人も、それぞれが敵意と、それ以上の「好奇心」を向けてくる。


第一の指:アーサー。騎士の男。秩序と規律を重んじ、オメガの思想に心酔している。「断絶」の特性を持つ守護者。


第二の指:シャオ。小柄な中華服の少女。無邪気な笑顔の裏に、残忍な計算高さを隠している。「演算」と「罠」を得意とする。


第三の指:ラシード。僧侶のようなローブを纏った寡黙な青年。盲目だが、心の目ですべてを見通す。「信仰」と「幻惑」の使い手。


第四の指:エルザ。軍服を着た赤髪の女性。力こそが正義と信じる好戦的な性格。「爆砕」の火力を持つ。


第五の指:???(詳細不明)黒いフードを目深に被り、性別も年齢も不詳。ただ静かに佇んでいる。


「末裔……。やはり、おじい様の言っていた通り、世界中から集められていたんですね」


凪は冷静に彼らを観察する。彼らのEgo Cubeは、通常のそれとは違い、深海一族の技術で強制的に強化されているように見えた。


「お前たちが何者かは知らない。だが、そこを通してもらう」


凪が一歩踏み出すと、アーサーがEgo Cubeで具現化された盾を構えた。


「通すわけにはいかない。我らの使命は、聖域を守護し、新たな「母」を迎えること」


アーサーの視線が、凪の背後にいる明日美へと向けられる。


「そこの女性……彼女こそが、我らが待ち望んだ「真正なる器」。深海明日美様ですね?」


「……え?」


明日美が戸惑う。


「さあ、こちらへ。貴女が深淵の少女と一つになれば、我ら五指の因子と共鳴し、世界は完全に浄化される。……その隣にいる「失敗作」など捨てて、我らの女王におなりください」


「……断る」


明日美が答えるより早く、凪の声が響いた。凪の瞳は、絶対零度のように冷え切っていた。


「明日美は「モノ」じゃない。誰かのために消費されるためのパーツでもない。……彼女を「器」と呼ぶ者は、誰であろうと僕が排除する」


「……愚かな。兄妹の情で世界の救済を拒むか。ならば、力づくで排除するのみだ」


アーサーがEgo Cubeを地面に接触させた。ズズズ……と大地が鳴動し、光の壁が凪たちの周囲を取り囲む。


「Spell「断絶セパレート」……この領域内では、あらゆる結びが無効化される!」


「きゃっ!?」


明日美が悲鳴を上げる。彼女と凪を繋いでいたGaeaのバイパスが遮断され、明日美の姿がノイズのように揺らぎ始めた。サポート役である明日美との連携を断ち、凪を孤立させるのが狙いだ。


「まずは貴様からだ、深海凪!その薄汚い鏡ごと砕け散れ!」


アーサーが突進してくる。その盾から放たれるのは、空間そのものを寸断する衝撃波。まともに受ければ、Ego Cubeごと両断される。


だが、凪は動かない。連携を断たれた? 孤立した?それがどうした。


「……勘違いしないでください。僕はもう、誰かに守られるだけの存在じゃない」


凪のEgo Cubeが七色に輝き、全ての感情を取り戻した「神童」としての才能が、凪の脳内で高速演算を開始する。


「Spell「万華鏡カレイドスコープ」……位相転移」


衝撃波が凪に直撃する。その瞬間、凪の体が無数の鏡の破片となって四散した。


「なっ……!?」


アーサーが目を見開く。散らばった鏡の破片は、アーサーの背後で瞬時に再構築され、無傷の凪が姿を現した。


「貴方の「断絶」は、空間を分断する力。……ならば、その分かれた空間の隙間を反射して移動すればいい」


凪の手元で、Ego Cubeが鋭利な剣を具現化した。


「貴方は強い。信念もある。……ですが、貴方の正義は「誰かの受け売り」だ。自分の痛みと向き合っていない者の攻撃など、僕には届かない!」


凪の一閃。アーサーの堅牢な盾に、深い亀裂が走った。



3.共鳴する因子


「ぐあぁッ……!!」


アーサーが吹き飛び、白亜の柱に激突する。一撃。たった一撃で、五指のリーダー格が膝をついた。


静まり返る神殿。残りの四人が、警戒の色を強めて構える。


「……強いネ。あんなナヨナヨした男なのに」


シャオが目を細め、指先で計算を始める。


「データの更新が必要だ。彼は失敗作じゃない。……「イレギュラー」だ」


「……退きなさい」


凪は、剣を消し、再びEgo Cubeを手元に浮遊させた。その姿には、かつて父が夢見た「深淵の王」としての風格が漂っていた。


「僕は、この世界の管理者である父と話がしたいだけです。……邪魔をするなら、五人まとめて相手になりますよ?」


凪の背後で、明日美もEgo Cube「母なる海」を展開し、断絶されたバイパスを自力で修復した。


「お兄様一人じゃないわ。……私もいる。あなたたちの因子がどれほど特別でも、私の海の前ではただの雫よ」


最強の「鏡」と、覚醒した「海」。深海兄妹の前に、世界の守護者たちが立ちはだかる。


「面白い……。ならば、我ら全員で貴様らの価値を測ってやろう」


軍服の女性、エルザが狂気的な笑みを浮かべ、Cubeを展開し巨大な火砲のような兵器を具現化して構えた。


戦いの火蓋は切って落とされた。だが、その混戦の最中、フードを被った「第五の指」だけが、戦いには参加せず、じっと凪の瞳を見つめていた。そのフードの下で、何かに気づいたように口元を歪めて。


「ハハハ!壊れろ、砕けろ!オメガの秩序に逆らう異分子は、塵一つ残さず消し飛べ!」


第四の指・エルザの狂気的な哄笑と共に、彼女のEgo Cubeが具現化した巨大な火砲型から紅蓮の砲弾が連射される。それは単なる爆発ではない。「爆砕」の特性が付与された、触れるものすべての結合を原子レベルで解く破壊の雨だ。


「お兄様、来るわ!」


「問題ない。……軌道は全て読めている」


凪は冷静に白衣をなびかせ、自身のEgo Cube「鏡面ミラー」を盾として展開した。だが、それはただ防ぐだけではない。着弾の瞬間に鏡の角度を微調整し、爆風のベクトルを逸らす。


「チッ、チョコマカと……!シャオ、解析はどうなっている!」


エルザが叫ぶ。


「うるさいね。……おかしいよ。彼、データ通りじゃない」


第二の指・シャオが、指先で空中に数式を描きながら焦りの色を見せる。


「私の演算では、彼は右に避けるはずだった。でも彼は、あえて爆風の中に飛び込んで、そのエネルギーを吸収している……?」


「その通りです」


煙の中から、無傷の凪が現れた。彼のEgo Cubeは、エルザの爆炎を吸い込み、赤く発光している。


「貴女たちの攻撃には迷いがある。……エルザ、貴女は破壊を楽しんでいるふりをしているが、本当は誰よりも「壊されること」を恐れている」


凪が鏡をエルザに向ける。そこに映ったのは、狂戦士の顔ではなく、瓦礫の中で震える幼い少女の姿だった。それは、紛争地帯で育ち、力だけを信じるしかなかった彼女のトラウマ。


「な……ッ!?見るな!私の中に入ってくるな!」


エルザが動揺し、砲撃の手が止まる。


「そしてシャオ。貴女は計算で全てを支配しようとする。……それは、予測できない「人の心」に裏切られるのが怖いからだ」


凪はシャドウを統合したことで得た「照明イルミネーション」の光を放つ。シャオの数式の檻が光に溶かされ、彼女の心の奥にある「誰かを信じたい」という孤独な願いが露わになる。


「……嫌。私の計算を、狂わせないで……」


「迷いがあるのは、貴様らの方だ」


低い声と共に、第三の指・ラシードが前に出た。盲目の僧侶。彼の周囲の空間が、陽炎のように揺らぐ。


「Spell「幻惑ミラージュ」。……信仰なき者に、永遠の迷宮を与えよう」


凪と明日美の視界が歪む。白亜の神殿が消え、底なしの沼地へと変わる。足元から無数の亡者が這い出し、二人を引きずり込もうとする。それは、凪たちが心の奥底に封じ込めてきた「罪悪感」を具現化した幻覚だ。


「……お兄様、これ……幻だと分かっていても、苦しい……!」


明日美が膝をつく。彼女の「海」が黒く濁りそうになる。


だが、凪は静かに目を閉じた。(……幻覚?いえ、これは彼が見ている世界だ)


盲目のラシードにとって、世界は常に不確かで、恐怖に満ちていた。だからこそ、オメガという絶対的な「神」にすがり、その教義で世界を塗り固めたのだ。


「ラシード。貴方が見ている世界は、確かに地獄かもしれない。……ですが」


凪は目を開け、銀色の瞳で虚空を睨んだ。


「僕のEgo Cubeは、幻を映さない。……映すのは「真実」だけです!」


カァァァァン!!凪のEgo Cubeが高周波の音を立てて共鳴する。鏡面から放たれた光が、沼地の幻影をガラスのように砕き割った。


幻が晴れた後に残ったのは、膝をつき、肩で息をする五指たちの姿だった。彼らのEgo Cubeは、凪によって心の闇を暴かれ、不安定に明滅している。


「……なぜだ。なぜ、我々の心が読める……?」


リーダー格のアーサーが、剣を支えに立ち上がろうとする。


「読んだのではありません。……響き合ったんです」


凪の背後から、明日美が歩み出た。彼女のEgo Cube「母なる海」が、優しく温かい青色に輝き、傷ついた五指たちを包み込んでいく。


「あなたたちも、同じなのね。……特別な「因子」を持って生まれたせいで、居場所がなくて、孤独で……。オメガだけが、あなたたちを必要としてくれた」


明日美の言葉に、エルザが、シャオが、ラシードが、顔を上げる。そこには敵意ではなく、迷子のような表情があった。


「でも、もう大丈夫。……オメガにすがらなくても、私が……私たちの海が、あなたたちの痛みを全部受け止めるわ」


青い波動が神殿を満たす。それは強制的な洗脳ではない。冷え切った心を解きほぐす、春の日差しのような「受容」。五指たちのEgo Cubeから、オメガによって植え付けられたどす黒い強制プログラムが抜け落ち、本来の美しい色を取り戻していく。


「……暖かい。これが……母の温もり……」


アーサーが剣を落とし、涙を流した。

戦いは終わった。力による制圧ではなく、魂の共鳴によって。

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