歌子グループ、スズネグループ!
鬼探し、スタートっ!
結局、3つの憶え屋に的を絞ることになった。 集まった人たちを3グループに編成して、手分けして探すことにしたのだ。
グループ1は歌子がリーダーで、小春が先陣を切って進んでいくらしい。 行くわよみんな、おーっ!!!
グループ2にはスズネやタンポポちゃんがいて、少し世間話でもやれそうだ。 ボソボソ……うんうん、そうだねえ。
グループ3にはナツミやユメなどがいて、一触即発な感じである。 夢見酒がどうのこうの……ハハハ、馬鹿じゃないのあんた!w
計画を立てていたら、既に辺りは暗くなっていた。 もう夜半警備隊が巡回していて、辺りをうろうろと歩き回っている。
街のある場所で、歌子グループがいた。 陰に隠れて辺りをうかがっているみたいだ。
もう暗くなっており、街の中はしんと静まり返っている。 虫の音や小動物の音だけが、小さくなっているのが聞こえる。
「……よし、じゃ、行こうっ」
歌子は掛け声を小さく出して、後ろを振り返った。
後ろには生身友達のツムギちゃんがいて、妹がいて、一番うしろには物静かすぎるクルミがいて……。 ……あれ? 誰か足りない。
と思っていたら、誰かが目の前を通り過ぎていった。
見ると小春だ、何事も無いかのように建物の影を出ていって、散歩をするように気軽な感じで歩いていく。 ふふーん♪♪……さて、今日はどこに行こうかしら。
「え? 小春っ!」
ちょっと! なんで、一人で飛び出してんのっ!?
びっくりして呼び止めるが、小春は気にしていないようだ。 歩きながら振り返ってきて、道端の猫でも見るようにこっちを見る。
「ん? あんたたち、何こそこそしてんの」
「えっ?w」
憶え屋までは隠れて行くって、さっき言わなかったっけ。
計画を立ててるとき、小春もさんざんどうやって隠れるかをワクワクして話してたのに。 楽しくなって浮かれちゃって、もうどうでもよくなったのかな。
気づけば妹も、元気に飛び出していっていた。 陰からぴょーんと出ていくと、元気に手足を振って小春の横についていく。
「堂々としてればいいじゃない、ねえ? 妹ちゃん」
「おうよっ!」
妹は手足を元気に振って、隣で一緒に歩いていく。 ちょっと、妹ーっ!! あんたまでおかしくなったなんて、やめてよっ!!
「えっ、ちょっと!w」
「そうだ、歌でも歌おうかしら。 らららー♪」
「らららー♪」
もうめちゃくちゃだっ! 小春と妹は歌を歌いながら、楽しそうに歩いていく。 2人の賑やかな歌声が、街中に響きだした。
私とツムギちゃんは慌てて前に出ていって、遮るように手足をばたつかせた。
「小春っ! まずいって、見つかったら……」
その時、遠くから別の人の視線を感じた。 はっと見ると、向こうのほうで人の動きがあるのに気づく。 夜半警備隊だっ!!ww ヤバいっ、こっち見てるっ!!!
「あっ! ヤバっ!」
「おい、お前らっ!」
警備隊の人は、大声を出してこっちに呼びかけてきた。 来たーっっ!!ww 小春、逃げるよっ!!
私は、思わず小春の腕を引っ掴んで走りだす。
「ちょっと、何よ! ……え、何? 逃げるの? ……逃げるわよっっ!!!!」
小春の叫び声とともに、5人は全速力で走りだした。 ぎゃーっと叫びながら、夜の街を一目散に逃げていく。
遠くで、叫び声が聞こえた。 スズネグループは、思わずふと足を止める。
「……え、何? 今の」
スズネがそらを見上げて、顔をしかめる。 その横にはミツバや、歌子の弟がいるみたいだ。 陰にはこそっとタンポポちゃんがいて、一緒についてきている。
ぱっと見、ちょっとした家族みたいなグループだ。 ミツバがお父さんで、スズネがお母さんで……いや、ありえないか、ははっ!!w
今は潜入中のようで、一行は物陰に身をひそめているようだ。
遠くの叫び声を聞いて、弟は眉をひそめていたが、この子も妹と同じで適当な性格なのか、気を取り直したように言った。
「ま、気のせいだろ!」
「……そうだな!w」
スズネは笑って、そのノリに乗っかっていく。 そうだ、聞かなかったことにしよう! どう考えても、小春たちの声だったけど。
一行は角を曲がり、次の物陰へと進んでいく。 弟は飛び出していき、真っ先に行こうとする。
弟はさっきからこんな調子だ。 元気だなあ、どんどん先に行きたいみたいだ。 その後を追ってミツバが、お父さんみたいな感じでついていく。
私が歩く後ろには、タンポポちゃんがいた。 いつものように静かに喋らず、黙って足を動かしてついてくる。
「そういえばタンポポちゃん、精神科の仕事、やることになったんだって?」
小さく跳ねるような足取りで歩いていたタンポポちゃんは、顔を上げて頷いた。
「うん」
「へえ、すごいね。 ……ていうか、精神科って、本当にあったんだね」
意外なように呟いていると、前を歩いていたミツバが会話に入ってくる。
「そりゃ、そうだろ。 街中でも、色んなところで、相談してくださいって書いてんだから」
「うん、そうなんだけどw」
街中には、精神科のポスターが大量に張ってある。 まあ、あれだけ張ってれば当然かw
今となっては、幻の精神科とか言って面白がってたのが、懐かしく思えてくる。
話をしながら、私は再び物陰に隠れていった。
ぼんやりと辺りの様子をうかがっていると、タンポポちゃんが近くに来た。 私のそばに、身を寄せるようにしてしゃがんでくる。
「……スズネのおかげ……」
ぼそっと、タンポポちゃんが呟くように言った。 辺りを眺めていたスズネは聞き取れず、振り返って聞き返す。
「……え?」
「スズネのおかげで、みんなと一緒になれた。 ……私のこと、言ってくれたんでしょ?」
まあ、それは事実なんだけど。
あの騒動の後、何かタンポポちゃんが出来る仕事がないか、色んなところに聞いて回ったのだ。 別に頼まれたわけじゃないけど、そっちの方がいいかもって……。
タンポポちゃんも、それまでの生活に納得いってなかったみたいだし。 外に出られて、感謝されるのは普通なのかもしれない。
……でも、やきもきするのはなんでだろう? こんな話を聞いてると、なぜだか胸がモヤモヤしてくる。
変な感覚を覚えつつ、再び陰を出て歩きだしながら、私は頷く。
「……まあ、うん」
「ありがとう」
ぼそっとした言い方だったが、今度は聞き取れた。 歩きながら振り返ると、タンポポちゃんは私を見ていた。 真っ直ぐに見つめてきて、心からの言葉のようだ。
「あぁw ……うん……」
私は妙に落ち着かなくなり、ちょっと笑ってごまかした。
……なんで、気分が悪くなるんだろう? タンポポちゃんが街に参加するようになったのは、私も嬉しいはずなのに……。
複雑な感情を抱えながら、スズネは前を見て、黙って進んでいく。
体が温まってきたわ。(小春)




