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ミツバの日常

 祭りの会議の夜から、数日たった、ある日の午後。

 ミツバが、浜辺を歩いていた。 海から引き揚げるようにして、街へと戻っているみたいだ。 どうやら仕事の漁を終えた後らしい。


「あー、あっついな……」


 ぼやきながら、さんさんと照らしてくる日の光を、首をひねって避けるような動作をする。 その首筋には汗がだらだらと流れていて、けっこうエロい。


 ざっざっと砂の上を素足で歩いていきながら、ミツバは考える。

 ……あー、今日何やろうかな。 誰でもいいから、何か新しい都市伝説でも見つけてねえかな。 たった数日間、面白いことがないだけで、もう退屈になってきたぜ。 最近は特に色々あったからなー……。 刺激のある毎日が当たり前になってる感じだ。

 ま、今日もとりあえず市場に行っとくか。 漁が終わったら市場に行くのが、毎日のルーティーンってやつなんだよ。 歌ってる小春を回収していこう。




 市場では、今日も小春が歌っていた。 歌い終えると、目の前にいた1人の子供が、パチパチと拍手をしてくる。


「はい、ありがとー」


 小春は、その子に笑顔を向ける。 子どもは楽しそうに拍手を終えると、別のほうへと走っていった。

 その様子を見届けて、小春はくるっと市場に背を向けていく。

 小春がいつも歌っている区画は、市場の端っこにあるから、反対側を向くと外の景色が見えるのだ。 向こうには山が連なっているのが見えていて、なかなか良い眺めだ。

 それを見ながら小春は空気をすうーっと吸い込み、深呼吸した。


「はー……」


 ……あー、落ち着くわ。 今日も空気がおいしいわねえ。

 この街って山の斜面に出来てるけど、自然はそんなに多くないのよ。

 街に生きてて息が詰まりそうになった時、こうやって遠くの山々を眺めながら深呼吸するの。 これだけでも、結構いい気分になるのよ。


「小春ー」


 深呼吸をしていると、のんきな声が近くに聞こえてきた。 振り返ると、ミツバだった。 市場の外側を歩いて、こっちに向かってきている。

 あ! 来たわね。 毎日こうやってミツバが来るのが、私の中で仕事終わりの合図になってんのよ。 よっしゃ! 仕事は終わりよっ!

 小春は手を上げて返事をすると、自分の区画から飛び出していった。 市場の外の道へと出ていき、ミツバと合流して一緒に歩きだす。


「あ! ねえ、スズネが何か、鬼のことで掴んだみたいよ!」


 いきなり話題を振られて、ミツバは一瞬考えた。

 ……鬼? あぁ、憶え屋の口座の中をうろつく鬼ってやつか。 何でも食べて、人の血を求める鬼……とかだったっけ?

 何でも食べるって、どういうことだよ。 石ころとか草とかも、むしゃむしゃ食うってことか? どこが怖いんだよ、そんな鬼w

 人の血を求める? ははっ、なんだそれ、吸血鬼かっ! 欲しいなら、いくらでもくれてやるよwww

 威勢いせいのいいことを思いながら、ミツバは答える。


「あぁ、例の都市伝説?」

「そう。 ちょっと、歌どころ行ってみようよ。 まだ、スズネいると思うし」


 歌どころか、まあいいぜ。 暇してたしなー、ちょっくら刺激でも入れてくるか、ばーっとよっ!!ww

 どうせやることもねえし、家に帰ったって、おふくろにこき使われるだけだしな。 いつも限界まで外で時間使って、ギリギリで帰るんだぜ。 俺は兄弟もいるんだけど、家族から色々仕事押しつけられんだよ。

 歌子みたいに『はいはい』って他の奴らの言うこと聞く気なんて、俺はサラサラねえからな。 ははっ!w

 ミツバは腕まくりしてウキウキしだすと、横で小春は思い出したように別の話を始めた。


「そうだ、あいつが色々言うから、ちょっと祭りの案、考えててね。 どんなのがいい?」


 あいつって、マツリのことか。 ……うーん、祭りの案ねえ?

 そんなこと言われても、分かんねえよなー。 俺もあの会議には行ったけど、最初から提案する気なんて無かったしな。 手を上げるつもりなんて、まったく無かったんだぜwww

 ……え? じゃあなんで行ったのかって? いやー、別に意味はねえよな。 どうせ家に帰ったって、手伝いするかダラダラするかの2択だしな。 暇だから、行っただけなんだけど。


「うーん、よく分かんねえな」


 マジで適当な答えだな、俺。 まあいいか、どうせ考えたって分かんねえし。

 ……いや、別に興味ないわけじゃないんだぜ? 他の奴らのほうが、そういうの考えるの得意だろ。 俺が考えたって、なんか変な踊りを思いつくぐらいしか出来ねえよwww おい、踊ろうか小春。 お前のよく分かんねえ歌にのせてよ、♪♪♪~だっけ? もう忘れたけどさww ははっ!!!w

 横で、小春はうーんとうなって案を考えているようだ。 腕を組んで、真面目な表情で続ける。


「最近、歌どころに行ってなかったから、流行が分かんないのよ。 ちょっと、確認してみよう」


 なるほどな、歌どころに行けば、なんか良い案は転がってるかもな。 けどなー、あそこ結構高いんだよな、値段がさ。 いや、行くけどさ。

 ……え? なんか他に金を使う用事、あるのかって? いや、別にないんだけど。 なんとなく貯めときたいじゃん? 老後のためにさ。

 ……あ、そんなこと言ってたら、また小春にツッコまれるな。 『まったく、これだから現代人は。 使いたいときに、使いなさいよっ!』とか言ってな。 ははっ!!!w

 退屈踊り~♪♪♪ しましょ~♪♪♪ フゥゥゥッッッ!!! (ミツバ)

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