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次の日っ!

 スズネが仲間に加入してから、新しい朝を迎えて、次の日になった。 小春たち、都市伝説を探すメンバーたちは、昼ご飯を終えたころの時間に、待ち合わせの約束をしていた。

 朝は、みんな仕事があるから、遊べないのだ。


 歌子は、仕事が忙しいから、今日は来れないらしい。 ユメも、憶え屋の仕事をがんばるらしい。 一人で考え事をするのが好きなイトも、何か調べものをしているみたいだから、来れないらしい。

 そんな中で来れるのは、小春やスズネ、雨子たちだ。


 集合の約束をした場所には、すごく大きな建物がたっていた。 石造りのその建物は、まだ建築中のようで、あちこち欠けていていびつな形をしている。 周りには、大工のような体の大きい男たちが、えっさほいさと動き回っている。

 その大きな建物は円形で、ドームのような形をしていた。 聞くところによれば、これは外国の建物で、ミツエダさんが教えてくれたものらしい。


 建物の前に、雨子が走ってやってきた。 いつものように、笑顔で元気いっぱいな感じだ。 立ち止まると、建物を見上げながら、うーんと気持ちよさそうに伸びをする。 ふっと力を抜いて腕を下ろしていくと、スズネが、別のほうからやってくるのに気づいた。


「あ、スズネちゃん!」


 スズネは、仕事終わりだからか、なんだか爽やかな、すっきりした顔をしている。 こっちに走ってきて、元気に手を振ってきた。


「来たよっ! ……うわー、大きいっ!w」


 スズネはその場に来ると、その建物を見上げて、ワクワクするような声を上げる。 石造りの大きな建物に、乾いた風がひゅうひゅうと踊っているようで、昼間の爽やかな空気が気持ちいい!


「おっはよー! みんな!」


 今度は、小春の声が来る。 振り向くと向こうから、ミツバを引き連れて、元気に歩いてきた。

 スズネは建物のほうに、目を戻した。 ……大きい建物だなあ。 でもこんな建物、何に使うんだろう?


「ここ、何の建物になるの?」


 一緒に建物を見上げていた雨子は、答えた。


「なんか、まだ決まってないけど、作ってみようぜって話に、なってるみたいだよ」

「何? それw」


 スズネは笑いながら、ツッコミを入れる。 いつも思うけど、この街の人は、なんかノリが軽い。

 2人が話していると、小春が近くに来て、会話に入ってきた。


「何? 何の話? ……これのこと?」


 小春は建物をあごでしゃくって、聞いてくる。 一行は建物を眺めながら、ゆっくりと歩きだした。 先頭を歩く雨子が、頷いて答える。


「うん。 一応、候補はいくつかあるみたいだけど。 ……巨大な歌どころにするとか」


 こんなに大きな、歌どころ! 周囲から大喝采だいかっさいを浴びて、たくさんの歓声が聞こえて……うわ、それすごいっ!!

 想像したスズネは一気に満面の笑みになり、ワクワクして言う。


「へえ、そうなんだ! ……もっと大きな建物とか、たてられるのかな?」

「建てられるわよ。 こんなもの、たいしたことないじゃない」


 小春が、なぜか根拠もないのに、自信満々に言う。 小春はいつもこんな感じだ、よく分かんないのに、自信にだけはあふれている。 スズネは負けじと、対抗するように、語気を強めた。


「もっっっっと、高い建物でも?」


 小春は振り向き、当然よという感じで言う。


「そりゃそうよ! 世界は広いんだから、それぐらい、建ててる人たちぐらい、どっかにいるわよ」

「うわーっw ワクワクするっw」


 いきなり、雨子がはしゃぎだす。 足をバタバタとさせて、スキップするようだ。 ……え、何? 大きな建物が、好きなんだろうか。


「好きなの? こういうの」


 スズネが聞くと、雨子は満面の笑みになり、頷いた。


「大好きっ! どんな今までにない建物が出来るんだろうって、想像しただけで、こう、腹の底がワクワクしてね。 わたし考えたんだけどね、海の中にある大きな建物とか、すごく高い塔を作って、音楽をみんなで楽しんでたりとか……ほら、食糧庫しょくりょうこあるじゃん? 高い床の。 あれを、ずっっっっと高くしたような建物で、辺りに霊たちが飛んで、簡単に出入りしてて……、」

「ちょっと、ちょっと!」


 止まらなくなった雨子を、小春が止める。 雨子は我に返って、一人で突っ走ってたことに気づき、頭をかいた。


「あ、ごめんw」

「もー、相変わらずねえ、あんた」




 一行は景色の開けた、山の斜面を歩いていく。 斜面に沿って階段が続いていて、そこをすたすたと上り、頂上方向へ向かっていく。

 後ろを振り返ると、背後には、街の景色が見えている。 岩の建物、わらの建物、料理場……。 さらに向こうには田んぼや、その奥には海が見えて、風が吹いていて気持ちがいい。


「ところでスズネ、あなた、何か仕事してるの?」


 小春が、階段を上りながら、スズネに話しかけていく。 辺りの景色を眺めていたスズネが、振り返って答えた。


「うん。 歌どころで、働いてるよ」


 歌どころというのは、主にお笑いを楽しむところだ。 歌を歌ったりする人や、手品のようなものを披露したりする人なども、中にはいるけど……一番多いのは、お笑いなのだ。

 そこで働くというのは、この街での、結構なステータスだ。 市場で下積みをして、人気が出た人だけ、そういう大きくて立派な場所で芸を披露できる。

 小春も、市場で毎日歌っているから、その辺の事情は知っているんだろう、感心したような顔を浮かべた。


「へー! すごいじゃない。 どこの、歌どころ?」

「第2区画の、山のふもとのあたり」


 第2区画は、まさに今いる、この辺りだ。 小春は足元をちらっと見て、気づいたように言う。


「第2区画って……あれ、ここじゃないの?」

「うん。 ここのふもとのあたりだよ」


 そういいながら、スズネは後ろを振り返ってみせる。 小春は理解したように、へえと頷いた。


「ふーん。 ……今度、行ってみようかしら」

「来るの?! ちょっと、緊張するかも……」


 スズネはそういって、身を縮めるようにしり込みする。

 知ってる人の前で、あれこれ面白いこと言うなんて。 全然面白くないような顔をして、客席からじっとこっちを見つめてる小春を想像すると、ちょっと胃が痛くなってくる。


 小春はそんな気持ちも知らずに、いつもの勢いで言ってくる。


「そんなこと言って、どうするの。 つねに、堂々としてないとっ」

「しっ! ……ちょっと、待って」


 話していると、前を歩いていた雨子が、突然手で制してきた。 それにつられて、一行は立ち止まっていく。

 階段を上りきったそこは、住宅街のようだった。 岩で作られた、アパートのような建物が、たくさん並んでいる。 昼間だからか、辺りはしんと静まり返り、静かだ。

 一行は建物の陰に身を隠して、辺りの様子をうかがった。 ひょこっと建物から顔を出して、道の様子を眺めていく。


「ふーん、ここ?」


 小春が、辺りを眺めながら言う。 別に何でもない住宅街だ、特に目立ったものはない。 人は少しだけ歩いているが、不審者らしき人はいない。 前に話に聞いた、土のにおいを気持ちよさそうにいでいる変態とか、そういうのもいなさそうだ。


 一行は頭を引っ込めると、建物の陰で、コソコソと話し始めた。


「よし、じゃあ、誰が行くか決めよう」

「誰がって……雨子が約束したんじゃねえのか?」


 雨子の言葉に、ミツバが疑問を呈する。

 聞いた話では、雨子が街を歩いているときに、声をかけてきたということだった。 なら、行くのは当然、雨子じゃねえのか?


 雨子は手を横に振って、説明を加えた。


「あ、いや、私以外が来るかもって、言っといたから」


 はあ? これから行くの、死者と話せるサービスだろ? 誰が死者と話したいかも決まってないって、どういうことだよw


 ミツバが笑った。


「どんな約束だよ、それw」

「あ! じゃあ、私行きたい!」


 スズネが先陣を切って、手を上げた。 仲間に入ったばかりだし、何か面白いことやってこないとっ! そんな顔に見える。


「あ、そう? ……よし、じゃ、行ってきなさいっ!」


 小春が賛同して、スズネの肩のあたりを、とんと触るような動作をした。 スズネは楽しそうに笑いながら、何もためらうことなく、さっと陰から出ていく。 けっこう度胸があるみたいだ、歌どころで、きたえられているんだろうか。

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