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死神の恋  作者: 劉・小狼
6/18

 6

 突然、何処から聞こえてきたフルートの音色に知也の脚は

ぴたりと止まった。

 急に立ち止まり、自分の後を付いてこない知也に気付いた

佳苗は立ち止まり、知也の方を振り返り、

 「ど、どうしたの?……」

 知也に聞いた。

 知也は辺りをキョロキョロと見廻しながら

 「(フルートの)笛の音が……」

 と呟いた。

 「え? 笛の音?……」

 佳苗には知也に聴こえているフルートの音が

まるで聴こえていなかった。

 佳苗も辺りをキョロキョロと見廻しながら

 「気のせいじゃないの?…… 行こう!」

 その場から再び、歩き出した。

 「そうだよなぁ……」

 知也も気のせいかと思い、佳苗を追いかけるように

その場から歩き出そうとするとまるで知也を

呼び止めるかのように再び、フルートの音色が

何処からか、聞こえてきた。

 そのフルートの音色を聴いた知也はどうしても

そのフルートの音色が何処から聞こえてくるのかが気になり、

 「ごめん!佳苗…… 食事は今度なぁ!」

 佳苗にそう言うとそよ風に乗って、聴こえてくる

フルート音色の方へと駆け出していった。

 「もう!……」

 その場で地団太を踏む、佳苗を後目に知也は佳苗から

どんどんと離れ、フルートの音色へと引き寄せられていった。

 微かにフルートの音色が聴こえて来た場所を探し、

少し走った知也はそのフルートの音色が

町外れの少し古びた洋館らしき建物の庭から

聴こえていることを探し当てた。

 『誰が弾いているんだ?……』

 知也がフルートを弾いている者が誰なのか気になり、

洋館らしき建物の庭を外の通りから<覗き込むと

そこには大学の図書室で逢った時とはまるで別人のような

真っ白なワンピースを着た冴子が優雅にフルートを奏でていた。

 「あっ!……」

 知也が冴子に気付き、思わず、そう声を上げると知也の声に

びっくりした冴子はフルートの演奏をやめ、驚いた顔で

知也の方を見ると恥ずかしそうに

慌てて、洋館らしき建物の中へと隠れた。

 『ここがあの子の家なのかな?……』

 知也はそうおもいながら、その日はその場を後にした。

 それから毎日のように知也は少し早起きをすると

冴子がフルートを演奏する洋館らしき建物の庭が

見える通りから冴子のフルートの音色を聴くのが

日課になっていた。</font></p>

 冴子も初めは自分の演奏するフルートの音色で

知也を夢心地にし、知也をそのまま、死へと誘おうとしたが……

 1日、2日とフルートの演奏を続けるうちに知也が

自分のフルートの音色を気持ち良さそうに聴いているのを

見ているうちに冴子も知也のためにフルートの演奏をするのが

日課になっていた。

 いつしか、冴子がフルートの演奏を終わると知也は

冴子のことを気遣ってか、冴子がいる洋館らしき建物の前の

通りからいなくなっていた。

 そんなことが何日か続き、冴子がいつものように

フルートの演奏が終わり、知也がいつもいる通りに

いない事に確認し、建物の中に戻ろうとすると外の通りと

冴子がいる敷地の庭の境に一輪の小さな野花が置かれていた。

 『なに? これ?……』

 冴子は初めはその一輪の野花の意味がわからなかったが

その一輪の野花は必ず、知也が冴子のフルートの音色を

聴いている場所の辺りに置かれていた。

 冴子はその一輪の野花のことが気になり、

フルートの演奏中に知也の方を>チラリと見ると知也が

少し恥ずかしそうに一輪の野花を冴子がいる敷地の庭との境に

こっそりと置いていた。

 知也が何も知らず、自分のために一輪の野花を

置いていることを知り、冴子は自分が知也を死へと

誘おうとしていることに罪悪感を感じ始めた。

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