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死神の恋  作者: 劉・小狼
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 5

 数日前、知也は確かに佳苗と映画を見に行く約束をした。

 いつものことで知也は今まで、そんな佳苗との約束は

すっかり忘れていた。

 いつものことで佳苗も半分は諦めていた。

 「もう良いわ…… 私があなたを信じたのが

バカだったわ…… 大学に行くわ!……」

 知也より、少しだけ頭が良かった佳苗は知也とは

別の一段階上の大学の経済学部に通っていた。

 どうもバツが悪かった知也は急いで着替えると

 「途中まで送るよ!……」

 佳苗は知也に送ってもらうのが何だか恥ずかしくなり、

 「良いわよ!……」

 知也の部屋から慌てて、立ち去ろうとした。

 「良いから、良いから……」

 知也はそんな佳苗の手を掴むと佳苗と共に部屋を後にした。

 ボロアパートから佳苗と共に出てくる知也を少し離れた

ビルの屋上の上から見ていた冴子は

 「あの子(佳苗)、だれ?……」

 佳苗の存在に少し、イラっとした。

 強引に引っ張る知也のスピードに佳苗は脚のテンポが

追いつかず、階段から転げ落ちそうになった。

 階段から転げ落ちそうになっている佳苗のことに

寸前のところで気が付いた知也は

 「あ、危ない!……」

 佳苗の躯を優しく、抱き止めた。

 自分のことを受け止めてくれた事に佳苗は素直に知也に

 「あ、ありがとう!……」

 とお礼を言った。

 「危ないなぁ…… 気を付けろよ!」

 知也は照れくさそうにそう言うものの、階段から

転げ落ちそうになる佳苗を受け止めた反動で今度は

自分が階段から転げ落ちそうになった。

 それを見ていた冴子は咄嗟に階段から転げ落ちそうになる

知也に向かって、

 「あ、危ない!・・・」

 と叫んでしまい、知也が転げ落ちる真下に

小さな小さな旋風を起こした。

 その小さな小さな、旋風のお陰で知也は地面に

直撃することなく、軽いかすり傷ですんだ。

 「だ、大丈夫? 知也……」

 佳苗は自分の代わりに下に落ちた知也に驚き、

慌てて、階段の中間辺りから知也のもとに駆け寄ってきた。

 「ああぁ…… 大丈夫! また、やっちゃた!」

 知也は擦り剥いた手の平を少し痛がりながら、

心配する佳苗に向かって、ヘラヘラと笑ってみせた。

 「よかった!……」

 冴子は知也が助かったことにホッとするものの、

 『あれ? なんで、私はアイツ【知也】を

助けたんだろう?……』

 咄嗟に知也のことを助けたことが説明ができず、

首を傾げた。

 「いけない、いけない…… 使命、使命!」

 冴子は知也を死へと誘う使命を再度、思い直すと

ビルの屋上からその姿を幽霊のように消し去った。

 冴子がビルの屋上から消え去った後、知也は

擦り剥いた手の平を少し痛がり、佳苗の顔を見詰めながら

 「……お、お腹が空いた!…… 朝飯を食べに行こう!……」

 というといつもの調子の知也に

 「ば、バカ!……」

 佳苗はその場に知也を残し、さっさと立ち去った。

 「ま、待てよ!…… 佳苗!」

 知也は慌てて、立ち上がると服に付いた汚れを払い落とし、

佳苗の後を追いかけた。

 佳苗の背中を追いかけながら

 「ねぇ、何を食おうか?……」

 佳苗に話しかけると何処からか、そよ風が知也の前に吹き抜け、

微かなフルートの音色が聴こえてきた。

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