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びっくりした知也だったが
「ええぇ……」
と頷くと
「良かった……」
冴子は嬉しそうに知也の目の前の席に腰掛けた。
外国の難しそうな本をペラペラと数ページを捲った
冴子は知也のことを見ながら
「ここはよく来るの?……」
気軽に話しかけてきた。
あまりにも気軽に話しかけてきた冴子に知也は
びっくりしながらも
「うん!…… ここに来ると何だか、落ち着くんだ!」
気軽に冴子に話しかけた。
それから知也は本を読むのも忘れ、冴子と
たわいもない話を続けた。
だが、気が付くと知也は座っていた席のテーブルに
うつ伏せに顔を付け、眠り込んでいた。
『あれ?いつの間に寝たんだ?…… そうだ!
あの子【冴子】は?……』
知也は顔を上げ、冴子のことを探したが冴子の姿は
何処にもなかった。
『帰っちゃったか……』
知也が少しがっかりし、自分も帰ろうと椅子から
立ち上がるとまるで貧血のようにふらつき、尻餅を
つくように再び、椅子に座り込んだ。
『あれ? 貧血?……』
知也はそう思ったが明らかに貧血は違っていた。
まるで精気を抜かれ、力が入らなくて、崩れるように
椅子に座り込んだのだった。
その日は何とか、家路に辿り着く事が出来た知也は
そのまま、ベットに倒れ込み、死んだように眠り込んだ。
そんな知也が住むボロボロアパートの部屋を
少し離れたビルの屋上の縁に腰掛け、
両脚をブラブラと動かしながら、冴子は嬉しそうに
微笑んでいた。
そんなこととは知らず、知也は冴子との夢を見ながら、
夢心地で眠り続けた。
翌日。
ピピピィ……
目覚まし時計のアラムで知也は目を覚ました。
だが、そんな知也の頭は二日酔いのようにガンガンして
割れるように痛かった。
「い、痛たたぁ……」
割れるように痛い頭を知也は抑えながら、
ベットから起き上がると
コンコン……
知也の部屋の入り口のドアをノックする音が
聴こえてきた。
『何だよ!…… こんな朝から?……』
寝起きの悪い知也が不機嫌そうに
「はーい!…… どちら様ですか?」
ボサボサの髪を掻きながら、自分の部屋の入り口の
ドアの方に向かって
「おーい!知也…… いるんだろう?」
知也の部屋の向こうから若い女の子佳苗【かなえ】の
声が聴こえてきた。
「いるのはわかっているんだ! ここを開けろ!……」
佳苗は知也の部屋の入り口のドアをドンドンと叩いた。
佳苗は知也とは幼なじみで小さい時から知也の
彼女面【づら】をし、知也の世話を色々と焼くのだった。
初めはそんな佳苗が知也は面倒くさかったが
今ではもう慣れた。
ドアを壊す勢いで叩く佳苗に
「わかったから…… ちょっと、待っていろ!
今、ドアを開けるから……」
知也は面倒くさそうに部屋の入り口のドアの鍵を外し、
ドアを開けた。
知也がドアを開けるとそこには知也の妹と言っても
おかしくはないくらいのアイドル級のとても可愛らしい
佳苗が脹れ面で立っていた。
「もう! 昨日、何で来なかったの?……
ずっと、待ち合わせ場所で待っていたのよ?」
佳苗は頬を膨らませ、脹れ面のまま、知也の部屋の中に
ドカドカと入ってきた。
知也は首を傾げながら
「あれ? 何か、お前と約束をしてた?……」
というと
「何を言っているのよ!…… 久しぶりに授業が
早く終わるから映画に一緒に行ってくれると
言ったじゃん!……」
佳苗は呆れ顔で知也に文句を言った。




