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「おーい!知也。急げよ!……」
大学のキャンパス内を歩く、男子大学生らの後をよろめきながら、
付いて来る、冴えない男子大学生・知也に男子大学生の一人が
声をかける。
「ちょ、ちょっと待ってよ!……」
知也は先に行く同年代の男子大学生らに声をかけると
そのまま、こけてしまう。
「何をやっているんだよ!……」
こけた知也を男子大学生らは大笑いした。
「全く、何をやっているんだかなぁ?……」
そんな知也の様子を大学の時計台の上に腰掛け、
見詰めていた冴子はそう呟いた。
「あんな奴が今度の私のターゲットとは……
まあ。これも仕事だし……」
少し不満な冴子は落胆し、諦め混じりにため息をつくと
姿をその場から幽霊のように消し去った。
「ごめん、ごめん……」
知也は頭を掻きながら、頭を上げると櫻の香りと共に
知也の前によそ風が過ぎった。
「だ、大丈夫?……」
女子大学生の姿をした冴子は知也の前に立ち、
優しく微笑みながら、知也に手を差し伸べた。
まだ、幼さが残る冴子の微笑みに見惚れていた
知也だったが、ハッと我に返った知也は
「あ、ありがとう!……」
自分に差し伸べられた冴子の手を握った。
冴子は知也の手をギュッと強く握ったまま、
知也の躯【からだ】を引っ張り起こした。
その瞬間、知也の躯に電撃のような衝撃が走り、
意識が飛びそうになった。
ふらつき、倒れそうになる知也から冴子は
手を放すと
「大丈夫?気をつけてね!……」
知也に再び、微笑みかけるとまるでそよ風のように
知也の前から立ち去った。
知也の前から冴子が立ち去った後、遠くの方で
知也のことを笑っていた男子大学生らが知也のもとに
駆け寄ってきて
「おい!誰だよ?…… あの子?……」
幼さが残る可愛い冴子のことを知也に訊いた。
知也は冴子が立ち去った方をぼんやりと見詰めながら
「さあ?……何処かの学部の子じゃないのか?……」
男子大学生らにそう答えた。
知也を含め、男子大学生らは冴子が死神で
あることに気付いていなかった。




