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そんな吏雄の言葉に利奈の脚はぴたりと止まった。
「俺とお前が組めば、すぐに片付くさ……」
吏雄は利奈に甘い囁きをした。
はっきり言って、手詰まりだった利奈は吏雄の方に振り返ると
「何が望みなの?……」
吏雄に言うと吏雄はニコッと微笑みながら
「今回は良いさ…… 貸しで……」
というと利奈の前からその姿を幽霊のように消し去った。
利奈のもとから姿を消し去った脚で吏雄はターゲットの
知也のことを知る為に知也のもとに向かった。
そこには知也の命を利奈から守るためにしっかりと
冴子が張り付いていた。
そんな二人を吏雄は少し離れた空の上から見ながら
「話は聴いていたが…… 冴子が邪魔しているのか……
ちょっと厄介だな?」
と呟いた。
そんな吏雄の声がよそ風に乗り、知也と冴子の間を
吹き抜けたがと思うと冴子が首にぶら下げている
星型のペンダントがからりと揺れた。
冴子が嫌な予感がし、知也に気付かれないように辺りを見廻すと
少し離れた、近くの空の上にまるで幽霊のように浮かぶ、
男性【吏雄】を見付けた。
冴子はすぐにその男性が自分と同じ死神だとわかり、怖い顔で
吏雄を睨み付けたが吏雄は好意的な表情で冴子に向かって、
ニコッと微笑むとその姿を消し去った。
利奈以外に新たに死神が増えたことに冴子は顔を
強張らせながらも、新たに知也を守る決意を強く固めた。
冴子がそんなことを思っているなんて、全く知らず、知也は顔を
強張らせている冴子に
「どうした? どこか、具合でも悪い?」
冴子のことを気遣った。
ハッと我に返った冴子は何事もないように
「うんん…… 大丈夫…… 行こう!」
誤魔化すようにその場からそそくさと立ち去った。
更に冴子が知也の命を狙う者らに気を配っているとごく自然に
「あの…… 落としましたよ!」
知也の前に吏雄が現れ、微笑みながら、一つのネックレスを
差し出した。
知也は吏雄が差し出した見たこともないネックレスを見ながら
「それ、僕のじゃないです!」
と言い、その場から立ち去ろうとした。
吏雄は知也が自分の横を通り過ぎるときに着ている
サラリーマン風の上着の懐から小型のナイフを取り出し、
自分の前から立ち去ろうとする知也の背中に向かって、
切りかかろうとした
『あ、危ない!……』
だが、寸前のところで冴子が吏雄の腕を掴み、怖い顔で
睨み付けた。
中々、自分の後を付いて来ない冴子に不審を抱き、
知也は振り返り、
「どうしたの?…… 行こう!」
冴子に言った。
冴子は掴んでいた吏雄の手を慌てて、払い除けると
「はーい!……」
笑顔で知也の後を追いかけた。
楽しげに自分の前から立ち去っていく知也と冴子を見ながら
「ちぇ!…… しくじったか!」
吏雄は舌打ちし、悔しがると幽霊のようにその場から
その姿を消し去った。
遠くのビルの屋上から吏雄らの様子を見ていた利奈は
「役立たず!……」
と呟くと吏雄と同じようにその場から幽霊のように
その姿を消し去った。
それから数日。 吏雄や利奈から知也に何事もして来ないことに
『あいつら、諦めたのかな?……』
冴子は少し気を抜いていた。
そんなある日。
「明日のデート、遅れるなよ!……」
「知也もね!……」
知也と冴子はそう言い、いつものように別れたが……
『そうだ!あいつ【冴子】に借りていたノートを
返さないと……』
知也は冴子に授業の内容を書いたノートを借りていたのを
思い出し、慌てて、引き返し、冴子の後を追い掛けた。




