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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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84/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 84

…あの秋穂のことだ…


 すぐに、気付いた…


 米倉正造の娘と思われる秋穂のことだ…


 私は、気付いた…


 「…その女の正体に気付いたのですか?…」


 「…たぶん…」


 曖昧に、言葉を濁した…


 私は、寿さんの顔を、見て、次に、寝ている正造の顔を見た…


 見ずに、いられなかった…


 それから、


 「…もしかして、それが、原因で…」


 と、正造の事故に遭った原因を寿さんに、聞いた…


 が、


 寿さんは、


 「…それは、わかりません…」


 と、首を横に振った…


 「…ですが、おそらく、彼女を追って、追跡しているところを、近付いて来たクルマに気付かず、はねられたのでは? と、諏訪野が、言ってました…」


 「…諏訪野さんが?…」


 「…ハイ…」


 「…どうして、諏訪野さんが?…」


 「…おそらく、その原因が、米倉が、水野と、提携を解消したことに、起因するからだと、思います…」


 「…米倉と、水野の提携の解消ですか?…」


 「…ハイ…」


 「…でも、それが、一体、なんの関係が?…」


 「…米倉と水野の提携の解消…これには、賛成するひとも、反対するひとも、いました…」


 「…反対するひと?…」


 意外な事実だった…


 米倉と、水野は、社風が、水と油…


 それは、提携して、すぐに、わかったと、あの透(とおる)も、言っていた…


 だから、遠からず、提携を解消するしか、なかったのではないか?


 ふと、そう思った…


 だから、それに、反対する人間が、いたのが、驚きだった…


 だから、


 「…米倉と水野は、社風が、違いすぎるから、提携を解消するしか、なかったんじゃ…」


 と、言った…


 言わざるを得なかった…


 「…たしかに、そういう意見もあります…ですが…」


 「…ですが、なんですか?…」


 「…米倉をいったん、水野のグループ会社に、取り込み、いずれ、折を見て、高値で売却しようという動きも、水野内部にあったと、聞いてます…」


 「…一体、誰が、そんなことを?…」


 私は、息せき切って、聞いた…


 初耳だった…


 そんな話は、初耳だったからだ…


 「…水野のご一族と、聞いています…」


 寿さんが、答える…


 私は、考え込んだ…


 たしかに、寿さんの言うことは、わかる…


 いかに、社風が、あわずとも、一度、取り込んで、高値で、売れば、儲かるに違いないからだ…


 ちょうど、それは、高級なブランド品を買うのと同じ…


 たとえ、気に入らずとも、手元に置いて、値段が上がるまで、待ち、そのときに、売ればいい…


 そういうことだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 ということは、どうだ?


 この寿さんの言うことが、真実だとすれば、水野内部には、米倉を売却しようか、持ち続けようかという、二つの勢力がいたわけだ…


 私は、思った…


 そして、おそらく、米倉を持ち続けようとする勢力の筆頭は、あの透(とおる)では、なかったのか?


 ふと、気付いた…


 だから、好子さんとの離婚を嫌がったのではないか?


 そう、思った…


 透(とおる)は、好子さんと結婚して、当初は、考えもしなかった好子さんの嫌な面を見たに違いない…


 だから、


 「…あんな女だとは、思わなかった…」


 と、私に電話口で、嘆いた…


 が、


 離婚までは、とても、考えていなかったに違いない…


 なにしろ、透(とおる)は、幼い頃から、好子さんに憧れていた…


 それが、やっと、結婚できたのだから、好子さんの嫌な面を見たからといって、すぐに、離婚するのは、早計過ぎるからだ…


 だから、離婚したくなかった…


 そして、それは、あの好子さんも、同じだったに違いない…


 なにしろ、透(とおる)に、


 「…気を付けなさい!…」


 と、諫言していたほどだ…


 おそらく、自分たち夫婦を別れさせようとする勢力が、水野、米倉、両方の一族にいると、知っていたのだろう…


 だから、透(とおる)に、


 「…気をつけなさい!…」


 と、言っていたに違いない…


 それが、透(とおる)が、泥酔して、あの秋穂という女と、腕を組んでいる姿をフライデーに撮られたから、激怒した…


 そういうことに違いない…


 もし、透(とおる)が、そんな写真を撮られでも、したら、大変な騒ぎになる…


 その結果、自分たち夫婦は、離婚に追い込まれるかも、しれないと、危惧していたに違ない…


 私は、そう、思った…


 私は、そう、考えた…


 そして、その通りになった…


 その通り=離婚した…


 が、


 ホントは、透(とおる)も、好子さんも、離婚したくなかったに違いない…


 要するに、透(とおる)と、好子さん、夫婦は、最初から、自分たち夫婦の結婚が、脆いものと、認識していたに違いない…


 夫婦の絆=水野と、米倉の絆が、脆いと、認識していたに違いない…


 だからこそ、抵抗した…


 すぐには、離婚したくなかったに違いない…


 ハッキリ言って、透(とおる)と、好子さんの結婚は、政略結婚…


 米倉を救うための結婚だった…


 が、


 透(とおる)も好子さんも、会社の都合で、別れさせられるのは、嫌だと、考えていたに違いない…


 いかに、米倉の経営する大日産業を救うために、結婚したとはいえ、大日産業を、水野から、放り出せば、透(とおる)と、好子さんは、離婚する…


 そんな会社都合で、自分たち夫婦の結婚が、弄ばされるのは、嫌だったに違いない…


 これは、誰もが、わかることだろう…


 これは、誰もが、理解できることだろう…


 人間は、道具ではない…


 会社の社風が、違ったから、合併は、ご破算…


 だから、その象徴たる、透(とおる)と、好子さんも、離婚となっては、堪ったものではないからだ…


 私は、思った…


 そして、あらためて、あの秋穂を考えた…


 つまりは、あの秋穂は、透(とおる)と、好子さんの離婚の引き金を引いた、女…


 あの秋穂が、泥酔した透(とおる)と腕を組んでコンビニに入る姿を写真に撮られなければ、二人は、離婚する必要がなかったからだ…


 さらには、私のリストラ…


 私を強引に、金崎実業から、リストラしようとした人事の松嶋…


 あの松嶋の背後にも、秋穂がいた…


 松嶋を唆(そそのか)して、私を金崎実業から、追い出そうとしたのも、秋穂だった…


 つまりは、すべてのキーマンは、あの秋穂…


 秋穂に決まりだ…


 だから、問題は、あの秋穂の背後に誰がいるか?


 まさか、あの秋穂が、独断で、動いているとは、どうしても、思えないからだ…


 あの秋穂は、誰かの指示で、動いている…


 そして、その誰かが、問題だ…


 そして、その誰かを、この正造は、知っていたに違いない…


 だから、この正造は、あの秋穂を追っていた…


 そうに、違いない…


 もしかしたら、あの秋穂という娘が、正造の娘か、どうかは、二の次…


 あの秋穂の背後に、誰が、いるか?


 それを、見極めたかったに、違いない…


 だから、あの秋穂を追っていたに違いない…


 私は、思った…


 そして、そんなことを、私が、考えていると、突然、白衣の着た男性が、入ってきた…


 病院の先生が、入ってきた…


 すると、突然、寿さんが、


 「…お久しぶりです…」


 と、丁寧に、頭を下げた…


 私は、驚いた…


 まさか、この寿さんが、この病院の医師と、知り合いとは、思わなかったからだ…


 寿さんを見て、その医師もまた、驚いた様子だった…


 「…寿さん…」


 と、言って、絶句した…


 「…長谷川センセイ…ご無沙汰しています…」


 寿さんが、告げる…


 長谷川センセイと呼ばれた、三十代の私や寿さんと同年代の医師は、カラダが、硬直したようだった…


 カラダが、動かなくなったかのように、見えた…


 つまりは、それほど、寿さんを見て、驚いていた…


 動揺していた…


 「…寿さんが、オーストラリアから、日本に戻って来たのは、聞いてました…」


 と、長谷川センセイは、驚いた表情で、告げた…


 「…ですが、今日、ここで、会えるとは、思わなかった…」


 その言葉を受けて、黙って、寿さんは、頭を下げた…


 そして、驚いて、二人のやりとりを見ている私に気付いた…


 だから、寿さんが、


 「…私は、以前、この病院に入院していたんです…」


 と、私に告げた…


 「…エッ? …入院?…」


 たしかに、この寿さんが、顔色が悪いのは、誰が見ても、わかる…


 どこか、カラダの具合が、悪いに違いない…


 だから、この寿さんが、この病院に入院していたのは、わかる…


 すると、隣で、長谷川センセイが、


 「…あのときは、お役に立てなくて、申し訳ありませんでした…」


 と、寿さんに、頭を下げた…


 寿さんは、


 「…とんでも、ありません…」


 と、またも、丁寧に、頭を下げた…


 それから、急に、


 「…この米倉正造さんですが、大丈夫でしょうか?…」


 と、聞いた…


 当たり前だが、この長谷川センセイは、米倉正造の担当医師に違いない…


 だから、この病室にやって来た…


 そう、寿さんは、考えたに違いなかった…


 「…大丈夫です…」


 長谷川センセイは、即答した…


 「…クルマにはねられましたが、命に別状はありません…」


 「…そうですか…」


 寿さんは、ホッとした様子だった…


 「…ただ、全身を強く打っているので、安静が、必要です…」


 長谷川センセイが、付け加えた…


 そして、今さらだが、この長谷川センセイは、私の存在に、気が付いたようだ…


 「…そちらの方は…」


 と、私のことを、聞いた…


 「…米倉さんのお知り合いです…」


 と、寿さんが、答えた…


 そして、


 「…センセイ、美人だからって、狙っちゃダメですよ…」


 と、付け加えて、笑わせた…


 「…いや、ボクは、そんな気持ちは…」


 と、長谷川センセイが、たじろぐ…


 だから、私は、


 「…ただの友人です…」


 と、強調した…


 「…別に、米倉さんと、特別な関係はありません…」


 と、力を込めた…


 すると、隣で、寿さんが、


 「…高見さん…もしかして、この長谷川センセイにアピールしている? 自分を売り込んでいる?…」


 と、突っ込みを入れた…


 私は、寿さんの突然の突っ込みに、どうして、いいか、わからなかった…


 「…でも、お互い、独身だから、付き合えば、いいのかも…」


 と、さらに、寿さんが、続けた…


 私は、唖然とした…


 同時に、なぜ、寿さんが、そんな、ふざけたことを、言うのか、考えた…


 いや、


 それだけではない…


 この長谷川センセイが、どう思うか、考えた…


 だから、急いで、長谷川センセイを見た…


 が、


 その表情は、深刻だった…


 少しも、笑ってなかった…


 そして、なにより、自分と私、高見ちづるのことを、寿さんが、話題にしているにも、かかわらず、私の方を一切、見なかった…


 寿さんの方だけを見ていた…


 これは、一体どういうわけか?


 考えた…


 そして、おそらく、その答えは、この長谷川センセイの深刻な表情にあった…


 長谷川センセイの目線は、あくまで、寿さんだけ…


 寿さんの、青ざめた顔にあった…


 寿さんの青白い顔にあった…


 その顔を見て、心配だったに違いない…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 そして、寿さんは?


 寿さんは、自分が、体調が悪いにも、かかわらず、わざと、私と長谷川センセイを、茶化して、この場の空気を軽いものにしようとしたに違いなかった…


 医者ならば、寿さんの顔色を見れば、カラダの状態が、わかる…


 それが、わかっているから、寿さんは、余計に、わざと、明るく振る舞ったに違いなかった…


 私は、そんな寿さんの気持ちに気付くと、なんと言っていいか、わからなかった…


 ただただ、寿さんに同情した…


 知り合って、まだ日の浅い寿さんに、同情した…


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