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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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83/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 83

「…正造さんは…」


 と、私は、言った…


 「…正造さんの容態は、どうなんでしょうか?…」


 私の質問に、


 「…詳しくは、わかりません…」


 と、前を歩く、寿さんが、答えた…


 「…深刻な状況ですか?…」


 「…私が、さっき、お見舞いに、部屋に伺ったときは、寝ていました…」


 「…寝ていた?…」


 「…ハイ…」


 と、いうことは、たいした事故ではなかったのかも、しれない…


 ふと、思った…


 重大な事故であったならば、


 「…寝ている…」


 なんて、軽い言葉は、言えない…


 そう、思った…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…米倉さんも、大変だったのだと、思います…」


 と、寿さんが、告げた…


 「…大変って?…」


 「…米倉さんのお父様が経営した大日産業が、水野と提携して、合併すると、決まって、ホッとしたのも、束の間…互いの社風が、水と油で、とても、いっしょになるのが、困難なことに、気付いたとおっしゃっていました…それで、よく諏訪野と、会って、色々と、話しあっていたみたいです…」


 「…そんなことが…」


 私は、驚いた…


 あの正造は、ただの女好きな男とばかり、思っていた…


 「…でも、それも、大日産業が、五井のグループに入ることで、一件落着した…それが、いけなかったのかも、しれない…」


 「…どうして、いけなかったんですか?…」


 「…それは…」


 「…それは?…」


 「…それ以上は、私の口にすることでは、ないかも、しれません…」


 寿さんが、言った…


 だから、それ以上は、聞けなかった…


 だから、それ以上は、なにも、聞けなかった…


 だから、二人とも、黙って、五井記念病院の廊下を歩いた…


 無言で、歩いた…


 まもなく、ある病室の前で、立ち止まった…


 「…この部屋です…」


 寿さんが、告げた…


 「…どうぞ…」


 寿さんが、私が、部屋の中に入るように、促した…


 私は、


 「…それでは、失礼します…」


 と、言って、中に入った…


 そこは、個室…


 寝ているのは、一人だけだった…


 米倉正造だけだった…


 私は、それを、見て、あらためて、本当に、この正造が、入院した事実を思い知った…


 それまで、透(とおる)に聞いて、五井記念病院に入院したのは、知っていたが、実感がなかった…


 が、


 現実に、正造が、目の前で、ベッドの上で寝ているのを、見て、実感したというか…


 ウソでは、ないと、思った…


 真実だと、思った…


 すると、隣で、


 「…ちょうど、いい、休息になったのかも、しれません…」


 と、寿さんが、言った…


 「…どういう意味ですか?…」


 「…米倉さんは、忙し過ぎました…」


 「…忙し過ぎた?…」


 「…水野と提携した大日産業の引き取り先を探して、孤軍奮闘していました…」


 「…孤軍奮闘ですか?…」


 「…そうです…」


 …孤軍奮闘…


 意味は、わかる…


 自分一人で、闘うということだ…


 ならば、この正造は、自分一人で、大日産業を守るために、闘ったというのだろうか?


 いや、


 違う…


 そうではない…


 おそらく、この正造の目的は、好子さん…


 血の繋がってない、妹の好子さんに違いない…


 今も、この寿さんが、言ったように、水野と、米倉では、社風が、水と油…


 だから、両社が、提携して、いずれは、合併する…


 そんな当初のもくろみは、見事に崩れた…


 だから、水野と、米倉が、別れるのなら、透(とおる)と、好子さんも、別れるのが、よかったのかも、しれない…


 二人とも、正統後継者…


 水野と、米倉の正統後継者だ…


 互いの経営する会社の合併が、うまくいかない以上、両社の正統後継者の二人も、また離婚した方がいいと、いうことかも、しれない…


 互いの一族が経営する会社が、合併を解消して、別れたのなら、一族の正統後継者の二人もまた、別れるのが、自然だからだ…


 私は、思った…


 そして、この正造は、好子さんのために、米倉が、なんとか、生き残る道を探したのかも、しれない…


 好子さんが、幸せになる道を探したのかも、しれない…


 おそらく、それが、真相だろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、思うと、この米倉正造という男は、つくづく、不思議だった…


 たとえ、好子さんのために、孤軍奮闘したとしても、その見返りは、なにも、ないだろう…


 もしかしたら、好子さんは、この正造が、陰で、動いたのも、しらないかも、しれない…


 血が繋がってないのだから、ホントは、この正造は、好子さんと、結婚できる…


 夫婦になることができる…


 にもかかわらず、この正造が、それを、望んでいるとは、到底、思えない…


 だから、


 わからない…


 つくづく、この正造という男が、わからない…


 なんの見返りが、ないにも、かかわらず、なぜ、好子さんのために、動くのか、わからない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…この米倉さんは、女好きって、諏訪野が、言っていました…」


 突然、寿さんが、言った…


 「…女好き? …ですか?…」


 言いながら、思わず、笑いそうになった…


 もう少しで、吹き出しそうになった…


 やはり、この米倉正造は、女好きで、有名だと、思ったからだ…


 誰もが、この米倉正造を評する言葉は、いっしょだと、思った…


 「…ですが、諏訪野は、こうも、言ってました…米倉は、遊び方がキレイだと…」


 「…遊び方が、キレイって?…」


 …どういう意味だろ?…


 …キレイの意味は、わかる…


 が、


 遊び方が、キレイと言われても、なんのことか、わからない…


 おそらく、そんな思いが、私の表情に、出たのだろう…


 寿さんが、すぐに、


 「…無理強いしないということです…」


 と、付け加えた…


 「…無理強い?…」


 「…要するに、相手が、嫌だといえば、諦める…無理は、しない…」


 「…」


 「…遊びは、あくまで、遊び…本気じゃない…だから、相手も、その遊びが、わかってくれる女を選ぶ…だから、遊び方が、キレイ…諏訪野が、つねづね、そう、言ってました…」


 「…」


 「…そして、そんな米倉さんだから、信用できるとも、諏訪野は、言ってました…」


 「…信用できる?…」


 「…そうです…いつも、他人の悪口や陰口を叩いている人間を見て、その人間を信用しろ、とでも、言われても、無理でしょ?…」


 「…それは…」


 「…それと、同じです…子供ではないのだから、いっしょに酒を飲んでいても、どんな人間かは、いつも、見てます…おおげさに、いえば、観察しています…」


 「…観察…」


 あまりの言葉に、絶句した…


 「…諏訪野も、また、五井家当主です…周囲には、五井の力を利用しようと、さまざまな人間が集まって来ます…だから、自然に、ひとを、見る力が養われる…諏訪野の口癖です…」


 寿さんが、言った…


 そして、そう言ってから、ベッドの上で、眠った米倉正造を見て、


 「…でも、この顔を見ると、女好きでも、おかしくありませんね…寝ていても、イケメンだというのは、わかる…」


 と、いきなり、言って、笑わせた…


 私は、びっくりした…


 まさか、それまで、まともな話をして、いきなり冗談を言うとは、思わなかったからだ…


 「…おまけに、諏訪野と同じく、生まれつきのお坊ちゃま…女にモテるのは、わかる…」


 そう言って、寿さんが、意味深に笑った…


 私は、直観的にマズいと、思った…


 寿さんが、正造を狙っていると、思った…


 これは、マズい…


 寿さんは、私以上の美人…


 しかも、色っぽい…


 寿さんが、迫れば、この正造は、すぐに、落ちると思った…


 だから、焦った…


 私は、焦った…


 だから、とっさに、


 「…でも、この正造さんは、無類の女好きですよ…」


 と、言った…


 言わずには、いられなかった…


 そして、私が言うと、寿さんは、私をジッと見た…


 その蒼ざめた美しい顔で、私を見据えた…


 「…もしかして、高見さん…私が、米倉さんを、狙っていると、思った?…」


 からかうように、言った…


 そして、からかうように、言いながらも、目は、真剣だった…


 笑ってなかった…


 が、


 私は、なんと答えていいか、わからなかった…


 だから、


 「…」


 と、黙った…


 無言だった…


 すると、


 「…このカラダの状態では、そんなことは、無理…できない…」


 ポツリと、寿さんが、呟いた…


 「…だから、安心して…」


 寿さんが、意味深に、笑った…


 私は、どう返答していいか、わからなかった…


 だから、黙った…


 またも、答えなかった…


 すると、だ…


 「…でも、この米倉さん…本当、大変そうだった…」


 と、寿さんが、呟いた…


 「…米倉の…大日産業の引き取り先が決まって、ホッとしたのも、束の間、正体不明の女が、現れて…」


 意味深に、寿さんが、告げた…


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