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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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82/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 82

正造の入院する、病院…


 それは、五井記念病院だと、透(とおる)に、教えられた…


 あの後、電話をして、聞いたのだ…


 私は、その病院の名前を聞いて、おや?

と、思った…


 五井記念病院…


 当然のことながら、五井グループの病院…


 水野と、提携を解消した、米倉が、頼った五井の病院だ…


 しかも、


 しかも、だ…


 あの米倉正造は、五井グループの若き、当主…


 諏訪野伸明と、飲み友達と、聞いた…


 その縁で、水野と提携を解消した米倉の運営する大日産業グループは、五井の支配下に入った…


 私は、それを、思い出した…


 これは、果たして、偶然だろうか?


 それとも、やはり、なにか、意図があるのだろうか?


 考えた…


 考えざるを得なかった…


 

 私は、あらかじめ、スマホの地図で、場所を確かめ、一人で、正造の入院する、五井記念病院に、向かった…


 本当は、誰かといっしょに、見舞いに、行きたかったが、いっしょに行く相手がいなかった…


 これは、正直、キツイ…


 会社の同僚であれば、普通なら、同僚たちと、いっしょに見舞いに行く…


 が、


 米倉正造は、プライベートで、知り合った相手なので、いっしょに、見舞いに行く相手が、見つからなかった…


 いや、


 今の会社で置かれた私の状況では、例え、会社の同僚の見舞いといえども、私といっしょに、見舞いに行く、人間は、いないかも、しれない…


 なにしろ、会社で、ぼっちの状態だ…


 ぼっち=ひとりぼっちだ…


 だから、会社の同僚といえども、今の私といっしょに、見舞いに行くことは、ないかも、しれない…


 ふと、気付いた…


 そして、また米倉正造のことも、同じ…


 たしかに、正造との付き合いは、プライベートだが、正造と知り合ったきっかけは、プライベートではない…


 会社だった…


 以前、付き合いのあった大昭和という会社の部長の溝口の紹介だった…


 だから、正造と、知り合ったきっかけは、プライベートではなかった…


 私は、それを、思い出した…


 考えてみれば、私も、金崎実業に、入社して、はや十年は、過ぎた…


 すると、いい、悪い、ということはなくても、私の人間関係は、会社が、すべてとなる…


 会社での繋がりが、すべてとなる…


 ハッキリ言って、これは、残念なことだが、事実…


 事実だ…


 学生時代の友人は、この歳になると、自然と、付き合いがなくなったというか…


 付き合いが、自然消滅した…


 それが、真相だった…


 学校でも、会社でも、そこにいるときは、付き合う…


 が、


 学校を卒業したり、会社を転職したりすれば、会うには、億劫になる…


 わざわざ、時間や場所を指定して、遭わなければ、ならなくなるからだ…


 だから、誰でも、最初のうちは、時間を作っても、会うが、そのうちに、大半が、会わなくなる…


 恋人同士ではないのだから、そこまでして、会う必要を感じなくなるからだ…


 それが、現実だ…


 私は、そんなことを、思った…


 私は、そんなことを、思いながら、駅に降りて、バス停を探し、五井記念病院に向かうバスに乗った…


 手元には、お見舞いの花と、お菓子…


 まさか、手ぶらで、行くわけには、いかない…


 いまどき、小学生の見舞いでも、手ぶらで行く子供は、いるまい…


 いや、


 いまどきどころか、私が小学生のときでも、病院に入院した同級生のお見舞いに行ったことは、あったが、当然、手ぶらではなかった…


 私は、それを、思い出した…


 が、


 肝心の同級生の名前を思い出せなかった…


 顔も、そうだが、男だか、女だかも、忘れた…


 なにしろ、小学生のときの話だ…


 二十年以上前の話だ(苦笑)…


 たしか、お見舞いに行ったことは、一度や二度ではない…


 何人か、いた…


 が、


 誰一人、その名前も、顔も、思い出せない…


 つまりは、こんなことを言うと、その同級生たちに失礼だが、皆、印象が、薄いのだろう…


 印象が強ければ、それほど、仲が良くなかった人間も、しっかりと、覚えているものだ…


 そして、歳を取ってわかったことだが、意外なことに、美人でも、イケメンでも、案外印象に残らない人間もいるものだ…


 これは、自分が、歳を取って、わかった意外な発見だった…


 当たり前だが、美人やイケメンならば、印象に残ると思いがちだが、さにあらず…


 ただ、ルックスが、いいだけの人間は、案外、忘れるものだ…


 これは、自分でも、意外だった…


 どうしても、ひとは、外見で、判断しがち…


 だから、どうしても、ルックスのいい人間ほど、記憶に残ると思いがちだが、そうでもなかった…


 記憶に残るのは、男女を問わず、目立つ人間…


 目立つ=存在感のある人間だった…


 そして、存在感とは、なんぞやと、思えば、著名な芸能人を思い浮かべれば、いい…


 若い芸能人は、男女を問わず、ルックス重視だが、例えば、五十歳以上で、生き残っている芸能人は、皆、個性がある…


 個性=存在感がある…


 たとえ、ルックスが、イマイチでも、抜きん出た存在感がある…


 そういうことだ…


 私は、そんなことを、思った…


 私は、そんなことを、考えた…


 これから、米倉正造の見舞いに行くにも、かかわらず、正造のことは、考えなかった…


 あるいは、無意識に、正造のことを、考えるのを、避けているのかも、しれなかった…


 正造が、どんな姿で、入院しているかを知るのが、怖く、無意識に、避けているのかも、しれなかった…


 ふと、そう、気付いた…


 自分の気持ちに、気付いた…


 考えて見れば、あの米倉正造ほど、私は、気になった男は、いなかった…


 おおげさでなく、私のこれまでの人生で、一番、大きな存在というか…


 気になる存在だった…


 血の繋がらない、妹の好子さんを、父の平造の元から、離し、代わりに、私を平造に与える…


 女好きの実父の平造が、好子さんに、手を出すかも、しれないと、正造は、恐れたのだ…


 それゆえ、好子さんと、ルックスが、よく似た私を、平造に、紹介した…


 いわば、人身御供ではないが、平造に、好子さんの代わりに、私を与えようとしたのだ…


 それほどの目に遭いながらも、私は、なぜか、正造が、嫌いになれなかった…


 ハッキリ言えば、好きだった…


 それは、やはり、外見が影響しているのだろう…


 正造は、見るからに、お坊ちゃんタイプ…


 色白で、品がある…


 当然、顔もいい…


 だから、惹かれる…


 つい、目が離せなくなる…


 おまけに、物腰も柔らかく、いかにも、金持ちのボンボン…


 これでは、誰もが、嫌いになるわけはない…


 女は、誰もが、好きになる…


 ありていに、言えば、金持ちで、イケメン…


 嫌いになる要素が、なにもない(爆笑)…


 そういうことだ…


 私は、そんなことを、思った…


 私は、そんなことを、考えた…


 そして、そんなことを、考えながら、透(とおる)に教えてもらった、病室を探した…


 病院の廊下を歩きながら、目当ての病室を探した…


 と、


 目の前に、どこかで、見たことのある女性の姿が、目に飛び込んできた…


 いや、


 たしかに、以前、一度だけだが、会ったことがある…


 私とは、タイプの違う美人…


 身長、160㎝程度…


 私のようなカワイイが、入っているのではない、本物の美人…


 カワイイがない、ただのキレイな女…


 目鼻立ちの整った、本物の美人…


 寿綾乃だった…


 あの諏訪野伸明の秘書だった寿綾乃だった…


 私は、一瞬、なぜ、寿さんが、ここにいるのか?


 悩んだ…


 考えた…


 が、


 すぐにわかった…


 寿さんは、五井にお世話になっていると、言っていた…


 今現在、五井に、お世話になっていると、言っていた…


 そして、今いるのは、五井記念病院…


 五井グループの病院だ…


 ならば、ここで、会うのは、わかる…


 わかるのだ…


 私が、寿さんを見て、そう考えていると、寿さんもまた、私の存在に、気付いたらしい…


 廊下で、立ち止まって、私に頭を下げて、挨拶をした…


 それに、気付いた私は、小走りに、寿さんに、歩み寄った…


 「…ご無沙汰しています…」


 私もまた、寿さんに、丁寧に頭を下げた…


 「…いえ、こちらこそ…」


 寿さんが、返す…


 私は、寿さんを目の前に見て、あらためて、美人だと思った…


 そう、思わざるを得なかった…


 私も、実は、この寿さんに似た美人を何度か、見たことがある…


 人間は、どんなイケメンも美人も、世間には、似たような顔の人間は、案外いるものだ…


 見たことのない顔というものは、存在するが、それは、少数派…


 大抵は、似たような顔を、どこかで、見たことが、あるものだ…


 要するに、ある顔を基準にして、それを、伸ばしたり、横に広げたり…


 痩せたり、太ったりすれば、似たような顔は、案外あるものだ…


 そして、それを、言えば、この私も、例外ではない…


 この高見ちづるも、例外ではない…


 現実に、私と米倉好子さんは、姉妹と言っていいほど、似ている…


 私と好子さんの顔は、女優の常磐貴子さんの若い頃に、似ているが、それとて、案外、世間に似たような顔は、存在するものだ…


 そして、この寿さんに比べれば、この私や好子さんの方が、世間に、似たような顔が、多く存在する…


 そういうことだ…


 誰もが、唯一無二の存在というものは、案外、少ないものだ…


 私は、この寿さんを、見て、そう、思った…


 私は、この寿さんを、見て、そう、考えた…


 同時に、これって、嫉妬?


 嫉妬ゆえに、そう、考えた?


 そう、思った…


 自分でも、認めたくないが、この寿さんを、見ると、どうしても、自分が、劣って見えるというか…


 なまじ、これまで、美人と周囲にチヤホヤされて生きてきたのが、恥ずかしくなる…


 それは、寿さんが、私が、及びもしない美人だからだ…


 そして、その美人の寿さんの顔色が、どこか、青白いことに、気付いた…


 青白い=体調が悪いことに、気付いた…


 が、


 それが、かえって、この寿さんの美貌を、さらに、美しくしたというか…


 おおげさにいえば、体調が悪く、死にかけているから、かえって、美しく見えるということだ…


 ホント、失礼すぎる話だが、そう思った…


 だから、


 「…寿さん…お顔の色が…」


 と、つい、言ってしまった…


 つい、聞いて、しまった…


 すると、寿さんが、


 「…ええ…」


 と、短く、答えた…


 そして、それ以上は、言わなかった…


 なにしろ、自分のカラダだ…


 体調のよくないことは、誰よりも、わかっているに、違いない…


 だから、それ以上は、私は、なにも、言わなかった…


 いや、


 聞けなかった…


 すると、寿さんが、


 「…そのご様子では、もしかして、米倉さんのお見舞いですか?…」


 と、聞いた…


 私は、びっくりした…


 が、


 もしかしたら、この寿さんも、正造に会いに来たのかも、しれないと、思った…


 この五井記念病院に、入院している正造に、お見舞いに来たのかも、しれないと、気付いた…


 だから、


 「…ハイ…その通りです…」


 と、答えた…


 すると、私の返事を聞いて、


 「…でしたら、米倉さんのいる病室まで、ご案内しましょう…」


 と、寿さんが、言ってくれた…


 「…病室を知っているのですか?…」


 私の質問に、


 「…私も、つい、さっき、米倉さんのお見舞いに、行ってきたばかりです…」


 と、寿さんが、答えた…


 思った通りだった…


 やはり、この寿さんも、あの諏訪野伸明の代理か、なにかで、正造の見舞いに来たと、思った…


 「…さあ、こちらです…」


 と、寿さんが、言って、歩き出した…


 私もまた、寿さんの後に、ついて、歩き出した…


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