↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
尋ねた手紙〜妖獣と人間を繋ぐ力〜  作者: すごろくひろ
高校編 ④ さよなら中央生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/45

ちび兄とでか弟

「……」

 ちびっこ少年は翔平と目を合わせる。翔平も彼のことを半身でじっと見つめている。

「生地?」

 翔平は直に声をかけられるも、手で制止を合図した。直たちは何もすることができず、ただ立ち尽くしながら見守るしかなかった。

 その時、突然なごみがその場で崩れた。予期せぬことに、後ろにいた里太郎に向かって倒れ込んでしまった。

「いてて……」

「どうしたの?」

 健がなごみの手を取ってお越しあげた。彼女あの表情はどこか怯えているようだった。

「あの子……。翔平の弟。11か月違いの。でも……」

 なごみは意を決したように

「鷲平は……五年前に事故で亡くなってるの……」

「?!」

 驚きの表情で、直たちは一斉に鷲平を見る。彼は空中に円を描いてその中心をタッチした。そして、一瞬光を纏って解き放たれる。そこには、翔平と同じく三毛猫の猫耳と尻尾を携えた和装に身を包む鷲平の姿があった。豪太は目の前の不可解な出来事に頭を抱えて喚き始める。

「これは……! ただの蜃気楼だって。幽霊なんか……いるわわわけが! 科学的には!」

「ちょっと黙ってくれ! コマ!」

「……」

 翔平の一喝により、豪太は図体に似合わず少し涙目になっていた。その横で里太郎がポンと肩に手を置いてさすってやった。

「なんで……」

「会いに来たんだ。探してくれてたから」

 鷲平はニコッとそう言うと、翔平にギュッと抱きついた。

「ちびねこが……」

 弟は仕方なく幼い兄の頭を下げて撫でてやる。ふと兄の懐に携えていた袋から、紫色の石が出てくる。

「六科島の宝玉……」

「これのおかげ」

 鷲平は無邪気な顔を翔平に向ける。そして次第に翔平は涙を浮かべるようになる。

「鷲平……、ごめん……ごめん……!」

 そして縋るようにその場にしゃがみ込んだ。鷲平はよしよしと弟をさすってやる。そしてーー。

「やだ」


 ドカッ!


「……ぐはっ⁈」

 突如として、翔平は腹を抑えながらその場に倒れ込んだ。異変に思わず、直たちは構える。

「いったい何をした!」

 里太郎が声を荒らげる。鷲平は静かに笑いながら、幼い声でこう呟いた。

「……僕、翔平倒しに来たんだ」

 そして直たちにゆっくりと近づいていく。しかし、身体は言うことを聞かない。

「だから、みんな敵だよ? ね、なごみちゃん?」

「鷲平……」

「向かいなさい! 狐火!」

 心寧が札に狐火を纏わせて、鷲平に投げつける。しかし鷲平は片手でひょいと掴むと、自慢気に懐にしまった。

「そんな……!」

「今度はこっちだ!」

 豪太がバズーカのようなものを召喚して、鷲平をめがけて打ち込んでいく。砲弾は彼に当たると大きく煙をあげていく。

「児童虐待……」

「違う! あれは人間じゃない!」

「えいっ!」

 鷲平はいつの間にか豪太の後ろに回り込むと、砲弾を大きく振りかぶって頭から喰らわす。そして心寧に飛び込むと、彼女に狐火を纏った札を叩きつけた。

「ぐへっ!」

「きゃああ!」

 豪太も心寧も相次いで倒れてしまう。

「大丈夫?」

「ごうちゃん!」

 健は心寧に、里太郎は豪太にそれぞれ駆け寄る。そのとき、鷲平は袂で刀をカチッと鳴らす。すると二人は片足を触手のようなものにそれぞれ取られ、逆さに吊るされてしまう。そして勢いよく地面に叩きつけられた。

「ぐはっ!」

「んーー!」

「よわっちいなあ、お兄ちゃんたち」

 直は、鷲平をただ睨みつけることしかできなかった。自分には何も力がない。直には分かっていた。それでも彼に向けて両手を伸ばして、動きを止めようとする。

「効かないよ」

 鷲平が剣を一発振り払うと、床が大きく裂け、直は足元を掬われた。そして衝撃に伴い吹き飛んだ机たちが直に襲いかかった。

「……っ!」

 そのうちの一つが直にぶつかる。そして、倒れ込んだ彼を囲い込むように机が無造作に落ちていく。


 そして残されたのは、なごみだけになった。


「……なごみちゃん」

「……」

 鷲平がなごみに語りかける。なごみは少し怯えながら、一歩ずつ後退りをしていく。

「僕が溺れたとき、助けようとしてくれたよね」

「……」

「でも僕は死んじゃった。翔平のせいで」

 鷲平は翔平の身体を蹴りながら、ぐるぐると刃先を彼に向ける。なごみは、幼馴染の復讐劇に目を向けることができない。

「……違うよ」

「えっ?」

 気づけば、なごみは涙が流していた。

「翔平はずっと鷲平のこと思ってたよ。それに、私があの時落ちていなければ……」

「やめてよ、やめてよ……! 聞きたくないよ!」

 鷲平は耳を塞いで、大声を出して、彼女の言葉を遮る。そして抑えが効かなくなった鷲平は、もう一般の刀を思い切り抜いて、勢いよく翔平に斬りかかろうとする。

「やめて!」

 なごみが勢いとともに鷲平を突き飛ばしていた。そして、翔平を抱え込むと対面に逃れて距離を取る。

「なごみ……」

 翔平は赤面しながら、なごみに声をかけた。

「お姫様抱っこ……。やめて」

「いいから黙ってて!」

「はい……」

 そしてなごみは翔平を下ろして杖を一振りさせると、直たちの姿が彼女たちの前に現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。